ロート製薬 社外チャレンジワーク導入 複業を届出制で認めることによる、会社に閉じない自律的な人材への転換
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2016年2月、ロート製薬は新しい企業理念"NEVER SAY NEVER"を掲げると同時に、社外チャレンジワーク(複業)と社内ダブルジョブ(兼務)の二つを開始した。社外チャレンジワークは社会人3年目以上の社員を対象に、土日祝・終業後の範囲で会社の枠を超えて働くことを認める制度で、手挙げ制を基本とし、許可制ではなく届出制とした。上場企業で複業の容認がまだ稀だった時期に、雇用慣行の枠を広げた経営判断である。
- 背景
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国内の大衆薬市場が成熟し、スキンケアを軸に総合ヘルスケアへ広がるなかで、ロート製薬は規模の拡大より新事業を生み出す人材の力に成長の活路を求めていた。社員は会社の持ち物ではなく社会を支える戦力であるという考えを人事の前提に置き、囲い込みではなく可能性を開く側へ制度を寄せた。上場しながら創業家が主導権を保つ独立性が、踏み込んだ人事制度を選ぶ下地となっていた。
- 内容
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社内ダブルジョブは、自ら手を挙げて就業時間の一部を部門の枠を越え他部署でも働く制度で、社外チャレンジワークと二本立てで運用した。実施者数は開始の翌年度にあたる2016年度で社外チャレンジワーク25名・社内ダブルジョブ36名。2020年度には社内ダブルジョブが98名へ伸びて社外チャレンジワーク62名を上回り、社外へ出る動きよりも社内で複数の持ち場を持つ動きのほうが先に定着した。
- 含意
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外部資本に縛られない同族経営であればこそ選べた人事の逆張りであり、上場企業の複業解禁の先行例として波及した。2024年度の社内ダブルジョブは207名まで増え、社外チャレンジワークも2016年からの延べ実施者が182名に達している。一方で、社外で得た経験が本業へどれだけ還流するかの検証は、その後の課題として残った。
いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
外部資本を持たない会社の、人事の逆張り
社外チャレンジワークの核心は、複業を認めたこと自体よりも、それを許可制ではなく届出制に置いた点にあると思われる。許可制なら会社が可否を握り、社員の時間はなお会社の管理下に残る。届出制はその判断を社員へ渡す手続で、社員は会社の持ち物ではないという前提を、制度の一行として書き下したものだった。成熟した国内市場で規模の拡大が描きにくくなるなか、成長の源を設備や買収ではなく人の質に求めた選択でもある。上場していながら創業家が主導権を保ち、市場の短期の評価に縛られにくい独立性が、この逆張りを可能にした面がうかがえる。
もっとも、実際に広がったのは社外より社内のほうだった。社内ダブルジョブは2016年度の36名から2024年度の207名へ伸び、社外チャレンジワークは2020年度に62名で頭打ちとなり、2016年からの延べでも182名にとどまる。会社の外へ出る扉より、部門の壁を越える扉のほうが多くの社員に使われたことになる。導入から二年後の2018年には吉野俊昭社長が急逝し、創業家の山田邦雄氏が会長兼社長へ復帰した。副業を解禁した会社として名前が知られたわりに、外で得た経験が本業へ還る回路の太さは、なお測られている途中なのだろう。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
制度の条件
制度の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 開始 | 2016年2月 | 社外チャレンジワーク(複業)と社内ダブルジョブ(兼務)を同時に開始 |
| 社外チャレンジワークの対象 | 社会人3年目以上の社員 | |
| 社外チャレンジワークの時間 | 土日祝・終業後の範囲 | |
| 申請の手続 | 届出制 | 手挙げ制を基本とし、複業を許可制ではなく届出制とした |
| 社外チャレンジワークの中身 | 会社の枠を超えて働く複業を認める | 社内だけでは得がたい経験を積み、本業にもよい効果をもたらすことを狙う |
| 社内ダブルジョブの中身 | 就業時間の一部を他部署で働く兼務 | 自ら手を挙げ、部門の枠を越えて他部署でも働く |
| 社外チャレンジワークの延べ実施者 | 182人 | 2016年から2024年度までの累計。2024年度の新規は17人 |
| 社内ダブルジョブの実施者 | 207人 | 2024年度。開始の翌年度にあたる2016年度は36人 |
出所:ロート製薬 ROHTO Well-being Report 2021・2024・2025(人的資本の最大化/キャリアオーナーシップ)
制度の実施者数の推移
ロート製薬:制度の実施者数の推移
| (人) | 社外チャレンジワーク | 社内ダブルジョブ | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 25 | 36 | 2016年度。実施者数の開示はこの年度から始まる |
| 2018年3月期 | 63 | 49 | |
| 2019年3月期 | 81 | 70 | |
| 2020年3月期 | 81 | 54 | |
| 2021年3月期 | 62 | 98 | 2020年度。社内ダブルジョブが社外チャレンジワークを初めて上回る |
出所:ロート製薬 HEALTH VALUES REPORT 2019(データ集・「ロートらしい企業文化」関連指標) / ロート製薬 ROHTO Well-being Report 2021(データ集・企業文化関連指標)
提出会社の従業員の推移
ロート製薬:提出会社の従業員の推移
| 従業員数(名) | 平均勤続年数(年) | 平均年齢(歳) | 備考 | |
|---|---|---|---|---|
| 2011年3月期 | 1,482 | 9 | 36.1 | |
| 2012年3月期 | 1,477 | 9.5 | 37.1 | |
| 2013年3月期 | 1,485 | 10.1 | 37.9 | |
| 2014年3月期 | 1,498 | 10.6 | 38.4 | |
| 2015年3月期 | 1,516 | 11 | 39 | |
| 2016年3月期 | 1,524 | 11.4 | 39.5 | |
| 2017年3月期 | 1,562 | 11.5 | 39.6 | |
| 2018年3月期 | 1,400 | 12.6 | 40.3 | 有期契約社員を臨時雇用者数へ移す算定方法の変更があり、前期と接続しない |
| 2019年3月期 | 1,474 | 12.7 | 40.6 | |
| 2020年3月期 | 1,529 | 13 | 41 | |
| 2021年3月期 | 1,595 | 13.2 | 41.3 |
出所:ロート製薬 有価証券報告書 第75〜85期【従業員の状況】(提出会社の状況)
同じ問いに直面した会社
参考文献
- ロート製薬 ニュースリリース「兼業解禁!会社の枠を超えた新しい働き方、ロート製薬の「社外チャレンジワーク」スタートします」
- ロート製薬 有価証券報告書「第81期(2017年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
- ロート製薬 有価証券報告書「第75〜85期(2011年3月期〜2021年3月期)【従業員の状況】」
- ロート製薬 統合報告書「HEALTH VALUES REPORT 2019(データ集)」
- ロート製薬 統合報告書「ROHTO Well-being Report 2021」
- ロート製薬 統合報告書「ROHTO Well-being Report 2024」
- ロート製薬 統合報告書「ROHTO Well-being Report 2025」