筆者の見解
規制対抗という経営の型の継続性
この判断の中心にあるのは、郵便という国の独占事業に対し、価格でもサービスでも劣らないという実証を積み重ね続けた経営の型そのものであった。1981年に官業を脅かすまでになった優位は、単発の値引き競争ではなく、路線免許の取得や全員経営という現場主導の体制づくりの延長線上にあり、規制対抗そのものが同社の経営文化として根づいていたことをうかがわせる。小倉昌男氏という一人の経営者の発言に留まらず、有冨慶二氏が社長として同じ論理を引き継いだ点に、この型の継続性がみてとれる。
もっとも、約20年にわたる対峙の帰結は、単純な勝利には見えない。公正取引委員会への申告も信書便法案への抵抗も、郵便法第5条という独占の根拠そのものを崩すには至らず、信書の解釈は最終的に行政の裁量に委ねられたままであった。それでも、世論を喚起し続けたこと自体が、のちの郵政民営化論議への布石になったと推察される。官業と競い合うという経営の型は、規制環境が変わってもなお、この会社のかたちを規定し続けているといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月