近藤康正氏が社長就任(2024年・サンゲツの決断)

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論点 入社間もない外部人材へ承継するか
サンゲツ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
入社1年4か月の中央化学前社長への交代と、指名報酬委員会主導の後継選定

何をなぜ決めたか:入社1年4か月の中央化学前社長への交代と、指名報酬委員会主導の後継選定

概要

2024年4月1日、代表取締役社長執行役員に近藤康正氏が就任し、2014年4月から10年間社長を務めた安田正介氏が退任した。近藤氏は1986年4月に三菱商事へ入社し、合成樹脂部長兼塩化ビニール部長、化学品グループ事業投資担当を経て、2017年4月に中央化学の常務執行役員、2018年4月に同社の代表取締役社長に就任した人物である。

2022年12月にサンゲツへ入社して執行役員社長室担当となり、管理担当兼サイバーセキュリティ担当、2023年6月に取締役、同年7月に取締役常務執行役員と役位を上げた。入社から社長就任までは1年4か月であった。

背景

交代を審議したのは指名報酬委員会である。監査等委員である社外取締役全員と代表取締役社長執行役員で構成し、委員長は社外取締役が務める。2015年に指名報酬諮問委員会として設置され、のちに指名報酬委員会へ改称した。

2023年度は16回開かれ、次年度の社長執行役員候補および経営執行体制に関する検討、社長執行役員の中長期サクセッションプランの検討、次年度の取締役会構成に関する検討などを審議した。委員会は2年前から後継者の選定に本格的に取り組み、直近の1年は集中的に審議して社長交代を決め、その原案を取締役会が可決した。

内容

前任の安田正介氏は、三菱商事の常務執行役員から2012年6月にサンゲツの取締役へ移り、2014年4月に社長へ就任した、創業家以外からはじめての社長であった。後任の近藤氏も三菱商事の出身で、経営の担い手は二代続けて社外から迎えた人物が務めた。

安田正介氏は社長退任後も2024年6月19日の第72回定時株主総会まで取締役として在任し、同事業年度の指名報酬委員会にも13回出席している。取締役の任期は1年で、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされる。

含意

就任にあたり近藤康正社長が掲げたのは、一段の経営基盤強靭化および収益力強化による「変革と成長」の加速であった。経営において最も大切な礎は「ヒト」であるとし、社員の能力・ポテンシャルを最大限に引き出して経済価値・社会価値を極大化することを事業運営の方針に置いた。

就任後の2025年3月期は売上高2,004億円・営業利益182億円、2026年3月期は売上高2,064億円・営業利益194億円と、売上高は2期連続で過去最高を更新した。長く赤字の続いた海外セグメントの営業損失は785百万円から46百万円へ縮み、国内エクステリアも118百万円の黒字に戻した。

いつ何が起きたか 7件
当時の取締役 7名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

考察:二代続けて外から迎えた社長
考察

考察:二代続けて外から迎えた社長

この承継で目を引くのは、後任の前歴そのものよりも、前任と後任が同じ出自を持つことである。安田正介氏は三菱商事の常務執行役員から取締役として迎えられ、近藤康正氏も三菱商事から中央化学の社長を経てサンゲツへ入った。創業家から非創業家へ移った2014年の交代は「創業家以外からはじめての社長就任」と位置付けられたが、その次に来たのもまた、社内で育った人物ではなかった。10年のあいだに社内から後継が立たなかったと見るか、外から人を迎える回路を経営の常道として定着させたと見るかで、この承継の読み方は変わってくる。

もっとも、選び方の手続きは前回と明らかに違っている。指名報酬委員会が2年をかけて後継者を絞り、その原案を取締役会が通した。委員長を社外取締役が務め、社長は委員の一人にすぎない構図は、前任者が後任を指名する形からどれだけ離れたかを測る物差しになる。就任後の2期はいずれも売上高が過去最高を更新し、長く赤字だった海外セグメントの損失も10分の1以下へ縮んだ。ただ、入社まもない人物を選べたのは、後継者が社内に育っていたからではなく、選ぶ手続きが整っていたからなのだろう。育成と選定のどちらを先に整えるのかは、次の承継で改めて問われることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

サンゲツ:連結業績と従業員数の推移

売上高(百万円)連結従業員数(人)
サンゲツ:連結業績と従業員数の推移
(百万円) 売上高営業利益連結従業員数 備考
2019年3月期 160,4225,8952,334
2020年3月期 161,2659,2682,241
2021年3月期 145,3166,7012,359
2022年3月期 149,4817,9592,453
2023年3月期 176,02220,2802,547
2024年3月期 189,85919,1032,645 交代を決議した期。期末直後の4月1日に近藤康正氏が社長へ就任した
2025年3月期 200,37818,1743,001 就任1期目。売上高は過去最高を更新
2026年3月期 206,44119,4083,299 就任2期目。売上高・親会社株主に帰属する当期純利益とも過去最高
出所:サンゲツ 有価証券報告書 第67〜73期(連結損益計算書・従業員の状況) / サンゲツ 2026年3月期 決算補足説明資料
出所:サンゲツ 有価証券報告書 第67〜73期(連結損益計算書・従業員の状況) / サンゲツ 2026年3月期 決算補足説明資料

サンゲツ:セグメント利益の推移

サンゲツ:セグメント利益の推移
(百万円) 国内インテリア国内エクステリア海外 備考
2019年3月期 6,174594△960
2020年3月期 9,324642△932
2021年3月期 7,082417△985
2022年3月期 9,097541△1,821
2023年3月期 21,102450△1,273 翌期にスペースクリエーションを国内インテリアへ統合。数値は統合後の区分
2024年3月期 19,489△77△311 国内エクステリアが損失に転じ、海外は8期連続の損失
2025年3月期 18,94017△785
2026年3月期 19,333118△46 北米の伸長と東南アジア・中国香港の経営体制刷新で海外の損失が縮小
出所:サンゲツ 有価証券報告書 第67〜73期【セグメント情報等】 / サンゲツ 2026年3月期 決算補足説明資料
出所:サンゲツ 有価証券報告書 第67〜73期【セグメント情報等】 / サンゲツ 2026年3月期 決算補足説明資料

交代の経緯と対応

交代の経緯と対応
科目 概要 備考
審議の主体 指名報酬委員会 監査等委員である社外取締役全員と代表取締役社長執行役員で構成。委員長は社外取締役
審議の期間と回数 2023年度に16回開催 2年前から本格的に取り組み、直近の1年は集中的に審議して社長交代を決めた
主な審議内容 次年度の社長執行役員候補および経営執行体制に関する検討 ほかに社長執行役員の中長期サクセッションプラン、次年度の取締役会構成を審議
決定の手続 指名報酬委員会の原案を取締役会が可決 取締役会の決議日は会社の公表資料で確認できていない
交代日 2024年4月1日
後任の役職 代表取締役社長執行役員 就任直前は取締役常務執行役員コーポレート部門ゼネラルマネージャー
後任の前歴 近藤康正氏(1963年12月22日生) 1986年4月三菱商事入社、2017年4月中央化学常務執行役員、2018年4月同社代表取締役社長
後任の社内歴 2022年12月入社、就任まで1年4か月 執行役員社長室担当から管理担当を経て、2023年6月に取締役、同年7月に常務執行役員
前任の在任と前歴 安田正介氏(社長在任10年) 三菱商事常務執行役員から2012年6月にサンゲツ取締役、2014年4月に代表取締役社長
前任の処遇 2024年6月19日の第72回定時株主総会で取締役退任 社長退任後も同総会まで取締役として在任し、指名報酬委員会に13回出席
任期 1年 選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで
交代の理由 会社の公表資料に記載なし 審議の主体・期間・交代日は開示されているが、交代の理由の記載はない
出所:サンゲツ 有価証券報告書 第72期(2024年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの概要】・第71期(2023年3月期)【役員の状況】
出所:サンゲツ 有価証券報告書 第72期(2024年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの概要】・第71期(2023年3月期)【役員の状況】
当時の取締役 7名

当時の取締役(2023年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • サンゲツ 有価証券報告書【沿革】
  • サンゲツ 有価証券報告書(連結)
  • サンゲツ 有価証券報告書「第72期(2024年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの概要】」
  • サンゲツ 有価証券報告書「第71期(2023年3月期)【役員の状況】」
  • サンゲツ 統合報告書「SANGETSU REPORT 2024」
  • サンゲツ 決算説明会資料「2026年3月期 決算補足説明資料」

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