C&Fロジを競合TOBで買収(2024年・SGホールディングスの決断)

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論点 コールドチェーン強化と競合TOBへの対抗
売上高(億円)営業利益率(%)
AZ-COM丸和との競合買付けを制しての、傘下入りの実現

AZ-COM丸和との競合買付けを制しての、傘下入りの実現

概要

SGホールディングスは2024年5月31日、食品低温物流大手のC&Fロジホールディングスに対し、1株5,740円・買付代金の上限1,237億円のTOB(株式公開買付け)を実施すると決議した。AZ-COM丸和ホールディングスが先行して仕掛けていた1株3,000円のTOBに、松本秀一社長が対抗提案で応じた経営判断であった。

背景

AZ-COM丸和ホールディングスは2024年3月21日、C&Fへ完全子会社化の意向表明書を提出し、1株3,000円の公開買付けを開始すると公表した。C&Fは4月1日に特別委員会を設置して対抗提案を募り、4月9日までに9社から初期的提案書を受け取っている。トラック運転手の残業規制強化"2024年問題"への対応が喫緊の経営課題となるなか、食品低温物流の担い手をめぐる争奪が表面化した。

内容

先行したAZ-COM丸和のTOBは応募が72万8,900株にとどまり下限に届かず不成立に終わった。SGHDのTOBには株券等所有割合84.83%にあたる1,828万7,006株が応募し、2024年7月22日付でC&Fは連結子会社となった。同年10月11日を効力発生日とする株式併合で議決権比率は100%となり、翌2025年4月には低温物流子会社の名糖運輸を存続会社としてC&Fを吸収合併した。

含意

買付価格5,740円は、AZ-COM丸和の提案が公表される直前にあたる2024年3月21日の終値2,041円に181%のプレミアムを乗せた水準で、のれんは597億円に達した。SGHDは食品の上流・中流を担うC&Fと佐川急便のラストワンマイル配送を組み合わせ、国内屈指のコールドチェーン構築を狙った。取得原価の配分額が多額であることから2025年3月期末は減損の兆候ありと判断されたが、翌期は取得時の計画に比して業績が堅調として兆候なしに転じている。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解 高値の攻防が残したもの
筆者の見解

高値の攻防が残したもの

この一連の攻防を振り返ると、SGHDが最終的に投じた取得原価1,243億円は、先行したAZ-COM丸和が示した1株3,000円のおよそ1.9倍にあたる価格を積み上げた結果であり、丸和の提案が表に出る直前の株価から見れば2.8倍の水準にあった。

もっとも、買収から半年余りで名糖運輸への吸収合併に踏み切った展開は、SGHDが単に株式を保有するにとどまらず、既存の低温物流基盤へ速やかに組み込む意図を持っていたことを示している。国内屈指のコールドチェーンという構想が実際の収益にどこまで結びつくかは、統合後のロジスティクス事業の採算にかかっており、高値で獲得した資産をどう生かすかという問いは、なお続いていると思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

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買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 ㈱C&Fロジホールディングス 貨物運送事業・倉庫事業等を営む傘下子会社及びグループ会社の経営管理
取得の法的形式 現金を対価とする株式の取得 取得企業を決定した根拠も、現金を対価として株式を取得したこと
AZ-COM丸和の買付価格 1株3,000円 2024年3月21日に意向表明書を提出し、開始予定を公表した
AZ-COM丸和の買付期間 2024年5月2日〜6月19日 33営業日。買付予定数21,646,698株、下限10,811,204株
AZ-COM丸和への応募株数 728,900株 下限に満たず、買付けは行われなかった。決済開始日は6月26日の予定だった
対抗提案者の数 初期的に9社、最終提案は4社 2024年4月9日に9社が初期的提案書を提出し、うち4社が精査に招かれた
SGHDの買付価格 1株5,740円 2024年4月30日に提示し、5月の追加精査を経ても変更しなかった
買付価格のプレミアム 181% AZ-COM丸和の提案公表直前、2024年3月21日の終値2,041円に対する
SGHDの買付期間 2024年6月3日〜7月12日 30営業日。公告日は6月3日、決済の開始日は7月22日
買付予定数 21,557,194株 下限は14,372,200株。上限は設定していない
買付代金 123,738百万円 買付予定数の全部に応じた場合。手数料等を含む所要資金は123,945百万円
応募株券等の数 18,287,006株 株券等所有割合は84.83%。下限を上回り、全部の買付けを行った
企業結合日 2024年7月22日 みなし取得日は9月30日。連結は10月1日から2025年3月31日までの6か月分
取得した議決権比率 100.00% 公開買付けで84.83%、2024年10月11日の株式併合で15.17%を追加取得
取得原価 124,386百万円 対価の種類は現金及び預金。株式併合と一体の取引として処理した
取得のための支出 112,011百万円 取得価額から連結開始時の現金及び現金同等物12,374百万円を控除した額
取得関連費用 1,119百万円 アドバイザリー費用等。対象者側も公開買付関連費用994百万円を計上した
のれん 59,734百万円 20年以内を償却年数とする定額法。暫定値から17,417百万円減って確定した
のれん以外の無形固定資産 10,011百万円 顧客関連資産。加重平均償却期間は20年
受け入れた資産合計 128,515百万円 流動資産26,293百万円、固定資産102,222百万円
受け入れた負債合計 62,930百万円 流動負債19,681百万円、固定負債43,248百万円
通期換算した売上高の増加 59,986百万円 期首に結合したと仮定した場合の概算額。監査証明を受けていない
通期換算した純損益の増減 △636百万円 同じ概算で経常利益は951百万円。監査証明を受けていない
買収資金の借入 85,000百万円 2024年7月16日付のブリッジローンを2025年3月にタームローンへ借り換えた
結合の理由 国内屈指のコールドチェーンの提供 強み・ナレッジ・アセットを結び付け、低温物流領域の拡大を進める

出所:SGホールディングス 有価証券報告書 第19期(2025年3月期)【企業結合等関係】【重要な契約等】 / 同 公開買付届出書(2024年6月3日) / 株式会社C&Fロジホールディングス 意見表明報告書(2024年6月3日) / AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第51期(2024年3月期)【重要な後発事象】

ロジスティクス事業セグメントの推移

SGホールディングス:ロジスティクス事業セグメントの推移

(百万円) 売上高セグメント利益セグメント資産 備考
2020年3月期 135,8232,063187,094
2021年3月期 207,80812,745119,488
2022年3月期 477,03148,459212,174 エクスポランカ社の連結で売上が急増。国際輸送の市況が押し上げた
2023年3月期 314,87719,239186,015
2024年3月期 219,761△4,854187,797 国際輸送の市況が反落し、セグメント利益が赤字となった
2025年3月期 381,3396,856376,596 C&F社を10月から6か月分連結。セグメント資産は3,766億円へ
2026年3月期 202,7986,278259,235 国際輸送等をグローバル物流事業へ分割。前期と範囲が異なる
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:SGホールディングス 有価証券報告書 第14期〜第20期(セグメント情報、外部顧客への売上高)

のれんと無形固定資産の推移

SGホールディングス:のれんと無形固定資産の推移

(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2020年3月期 4,01325,458772,744
2021年3月期 4,01524,887790,259
2022年3月期 2,34324,481921,793
2023年3月期 7,19737,865904,955
2024年3月期 8,36740,932897,049
2025年3月期 64,691104,8611,040,615 のれん残高64,691のうち58,241がC&F社分。減損の兆候ありと判断された
2026年3月期 145,562217,1921,229,017 旧C&F社分は55,254。増加分はMorrison社の取得によるもの
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:SGホールディングス 有価証券報告書 第14期〜第20期(連結貸借対照表、重要な会計上の見積り)

参考文献
出典・参考
  • SGホールディングス 公開買付届出書「株式会社C&Fロジホールディングス株券等に対する公開買付け」
  • 株式会社C&Fロジホールディングス 意見表明報告書「SGホールディングスによる公開買付けに関する意見表明」
  • SGホールディングス 公開買付報告書「株式会社C&Fロジホールディングス株券等に対する公開買付けの結果」
  • AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書「第51期(2024年3月期)【重要な後発事象】【株式の保有状況】」
  • SGホールディングス 有価証券報告書「第19期(2025年3月期)【企業結合等関係】【重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • SGホールディングス 有価証券報告書「第20期(2026年3月期)【企業結合等関係】【重要な会計上の見積り】」
  • SGホールディングス 中期経営計画「中期経営計画 SGH Story 2027」
  • SGホールディングス 決算説明会資料「2025年3月期 決算説明会」

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