羽鳥兼市氏が率いた羽鳥総業は、買収した同業他社に手形と営業資源を持ち逃げされ、1970年代半ばに倒産する[1]。倒産の3か月後、羽鳥氏は姉妹から数千円ずつのカンパを集めて1台1万円の中古車を仕入れ、中古車販売の東京マイカー販売を興す[2]。信用を失った「羽鳥」の名は社名から外した。
展示場に車を並べて売る従来型の中古車店では、200台を並べて月に60台売れれば良いほうで、売れ残った車の値下がり分は結局のところ客が負担する[3]。この構造への疑問から、羽鳥氏は1980年代半ばに福島県で買取専門店を立ち上げた。以後は全国のオークション会場に自ら足を運んで相場の傾向とデータを調べ続け、市場が育つのを待った[4]。1994年4月、蓄積したノウハウを携えて郡山市で買取専門店を再び開き、同年10月に株式会社ガリバーインターナショナル・コーポレーションを設立する[5][6]。
設立時の拠点は本人と社員1名の富田店だけで、事務所の壁に1999年末までに全国500店舗を達成すると書いた紙を貼り、毎朝二人で唱和したという[7]。加盟第1号は弘前で中古車販売を始めたいと相談してきた元客で、素人でも扱えるよう査定手順を綿密にマニュアル化した[8]。中古車業界の経験者ではなく異業種からの参入者をあえて選んだのは、過去の商習慣に縛られない担い手に新しい仕組みを託すためである[9]。1996年2月に千葉県浦安市へ東京本社を開設してFC本部機能を移し[10]、同年4月に商号を『株式会社ガリバーインターナショナル』[引用元]へ改めた[11]。
客が車を持ち込むと店頭で傷や内装を確かめて査定票を本部へFAX送信し、本部の査定士がオークションでの最新落札価格を反映した車両データベースと突き合わせて価格を返す。参照するデータは1998年で約30万件、価格決定までおよそ3分[12]だった。2001年11月には査定価格算出業務でISO9001を取得している[13]。
1997年9月にドルフィネットシステムを試験導入し[14]、1998年2月から本格運営に入った[15]。通信衛星で結んだ端末に買取車両の画像を載せ、オークションへ出品するまでの数日間の在庫を全国から検索できる仮想の展示場に変える設計だった[16]。1999年3月末には販売台数が1万台を超え、直営66店・加盟345店の店舗網と並ぶ柱に育つ[17]。2005年11月には自動査定システムの特許を取得した[18]。
設立から3期の年商は約20億円、59億円、130億円と倍々に近い伸びを示した[19]。1998年12月11日に日本証券業協会へ株式を登録して公開市場に入り[20][21]、同年末には直営と加盟を合わせ563店舗を擁するに至る[22]。1999年9月には創業時に掲げた500店舗を目標どおり達成した[23]。2000年12月の東京証券取引所市場第二部上場は設立から6年1か月という当時の最短記録で[24]、2003年8月に市場第一部へ指定替えとなる[25]。設立10年以内に売上高10億ドルを達成した企業として、日本で唯一のハイパーグロースカンパニーに数えられた[26]。
創業者・羽鳥兼市氏が代表取締役社長を退任し、長男・羽鳥由宇介氏(戸籍名:羽鳥裕介、1971年生)と次男・羽鳥貴夫氏(1972年生)がそろって代表取締役社長に就いた[27][28]。羽鳥兼市氏は社長退任後も代表取締役会長として代表権を保持し[29]、共同代表期の経営判断を補完する役回りに回った。
上場企業で兄弟2名が同時に社長を務める構成は珍しい。会社はこの体制を、重要な意思決定をトップ1名の独断に委ねず弁証法によって議論を深めて最適解を出す仕組みと説明し、代表者間の牽制機能と経営判断の健全化・迅速化を狙いに掲げている[30]。由宇介氏自身も、どこを目指すか・どう社会に貢献するかといった抽象度の高い議題ほど二人で話し合うことで視野が広がり議論が深まると述べ、偏った意思決定が避けられる点を体制の特徴に挙げた[31]。
会社の収益は長く卸売に依存していた。この構造は仕入環境と相場の変動をそのまま損益に伝える。オークションでの販売平均単価は2000年2月期の95万8000円から2003年2月期には83万5000円まで下がり、小型車の主流化による新車価格の低下と買い替えサイクルの長期化がその理由に挙げられた[32]。
2012年からは小売の新業態が相次いだ。2013年11月には東京マイカー販売株式会社を完全子会社化した[33]。
海外展開は試行の連続だった。2004年11月に全額出資子会社Gulliver USA, Inc.を設立して米州に足掛かりを求めたが[34]、十分な規模には育たなかった。国内出店も抑えた我慢の時期を経て海外へ再び向かい、最初に照準を定めたのはタイだった。2011年8月には株式会社ハコボーを吸収合併し、グループの整理も進めた[35]。
2015年9月、Gulliver Australia Holdingsを通じて豪州Buick Holdings Pty Ltd.の株式67.0%を取得し子会社化した[36]。豪州のマルチブランド新車ディーラーを傘下に収めることで、中古車買取専業から新車ディーラー業態へ業容を広げ、海外で相応の規模を持つ事業基盤を初めて得た。買収は兄弟共同代表のもとで実行され[37]、創業から20年余りを経た第二世代経営の初期成果として組織内外に示された。
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|---|---|---|---|---|
| 1994〜2007年福島県郡山市のガリバー創業と中古車流通DXの確立 | 羽鳥兼市 | ガリバーインターナショナル・コーポレーションを設立 | ★ | |
| 羽鳥兼市 | 商号をガリバーインターナショナルに変更 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | ドルフィネットシステムを試験的に導入開始 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | ドルフィネットシステムの本格運営を開始 | ★★ | ||
| 羽鳥兼市 | 日本証券業協会に株式を登録 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | 全国で500店舗を達成 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | ジー・トレーディングを共同出資で設立 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | 東京証券取引所市場第二部に上場 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | 査定価格算出業務でISO9001取得 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | 中古車「買取専業」モデルの確立と最短記録での株式上場 1994年、羽鳥兼市氏が福島県郡山市に設立したガリバーインターナショナルが、新車店・中古車店の付帯業務にすぎなかった『下取り』を独立した買取専業へ切り出し、本部が査定価格を決めるフランチャイズで全国に広げた経営判断。会社設立から8年10カ月で東京証券取引所市場第一部へ上場した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 羽鳥兼市 | 全額出資子会社Gulliver USA, Inc.を設立 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | 子会社・ジー・トレーディングがジャスダック証券取引所に上場 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | 自動査定システムに関する特許を取得 | ★ | ||
| 羽鳥兼市 | ポーター賞受賞 | ★ | ||
| 2008〜2015年創業者退任後の兄弟共同代表期と海外展開の試行 | 羽鳥兼市 | 創業者・羽鳥兼市が代表取締役社長を退任し代表取締役会長へ | ★ | |
| 羽鳥由宇介 | ジー・トレーディングを株式交換により完全子会社化 | ★ | ||
| 羽鳥由宇介 | ハコボーを吸収合併 | ★ | ||
| 羽鳥由宇介 | モトーレングローバルを100%出資で設立 | ★ | ||
| 羽鳥由宇介 | 東京マイカー販売を完全子会社化 | ★ | ||
| 羽鳥由宇介 | 個人間売買サービス「クルマジロ」を開始 | ★ | ||
| 羽鳥由宇介 | Buick Holdings Pty Ltd.の株式67.0%を取得し子会社化 | ★★ | ||
| 2016〜2025年モビリティ事業への業容拡大と中期経営計画(2023-2027)の起動 | 羽鳥由宇介 | 「ガリバー」から「IDOM」への社名変更とモビリティ事業への業容拡大 2016年7月、羽鳥由宇介社長が中古車買取『ガリバー』で知られる株式会社ガリバーインターナショナルの企業名を『株式会社IDOM』へ改めた経営判断。中古車買取・販売の『ガリバー事業』は社内の一事業として残し、企業名だけを切り離した。 詳細を読む | ★★★ | |
| 羽鳥由宇介 | 月額定額クルマ乗り換え放題サービス「NOREL」開始 | ★★ | ||
| 羽鳥由宇介 | 宜多梦(江蘇)商貿有限公司を100%出資子会社として設立 | ★ | ||
| 羽鳥由宇介 | 中国1号店をオープン | ★ | ||
| 羽鳥由宇介 | 個人間カーシェアリングサービス「GO2GO」を開始 | ★ | ||
| 羽鳥由宇介 | IDOM CaaS Technologyを設立 | ★ | ||
| 羽鳥由宇介 | 豪州マルチブランド新車ディーラーへの参入と、7年での全面撤退 中古車買取で国内網を築いたIDOM(旧ガリバーインターナショナル)が、2015年に豪州のマルチブランド新車ディーラーBuick Holdingsを取得し、2018年に追加買収で拡大したのち、2022年4月に全株式を譲渡して豪州新車ディーラー事業から全面撤退した経営判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 羽鳥由宇介 | 中期経営計画(2023-2027)を公表 | ★ |
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事実根拠:出所(IDOM)