豪州マルチブランド新車ディーラーへの参入と、7年での全面撤退

国内買取で築いた強みは海外の新車販売に移せるのか——広げて畳んだ豪州事業

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時期 2022年4月
意思決定者 羽鳥由宇介 社長
論点 海外多角化と資源配分
概要
中古車買取で国内網を築いたIDOM(旧ガリバーインターナショナル)が、2015年に豪州のマルチブランド新車ディーラーBuick Holdingsを取得し、2018年に追加買収で拡大したのち、2022年4月に全株式を譲渡して豪州新車ディーラー事業から全面撤退した経営判断。
背景
国内買取の次の柱を海外と新車ディーラーに求めた同社は、2015年9月に豪州Buick Holdingsの株式67.0%を約115億円で取得。西オーストラリアで25の新車ディーラー・14ブランドを引き継ぎ、2018年にはメルボルンのAndrews & Wallis 5社を追加取得して豪州東部へ広げた。
内容
だが海外の新車ディーラーは国内買取ほどの収益性を示さず、2022年4月、羽鳥由宇介社長のIDOMは連結子会社2社の全株式を譲渡して豪州新車ディーラー事業からの撤退を決めた。資本効率と成長性を優先し、経営資源を国内の小売事業へ集中させる事業再編の一環だった。
含意
買収と同じ速さで撤退にも動き、投じた資本を国内の大型小売へ振り向け直した。撤退を挟む2023年2月期に純利益142億円と最高益を更新。広げて稼ぐ型を確かめ、稼げない柱は畳むという資源配分の規律を、海外多角化でも貫き通した。
筆者の見解

7年の往復が残したもの

この判断の核心は、いったん広げた海外・新車ディーラーという柱を、7年で全面的にたたんだところにある。国内の中古車買取で標準化と全国網の強みを築いたIDOMは、その強みを豪州の新車ディーラーへそのまま移せるとみて、2015年から2018年にかけて買収を重ねた。だが、異なる市場・異なる業態で同じ収益力を再現するのは難しく、羽鳥由宇介社長は成長性と資本効率を基準に、伸び悩む海外新車事業を手放す判断へ傾いた。買うときの速さと同じ速さで、退くときも動いた。

撤退は失敗の証しであると同時に、資源配分の規律でもある。豪州の新車ディーラーに投じた資本を国内の大型小売へ振り向け直したことで、IDOMは撤退を挟んで最高益を更新した。広げてみて稼ぐ型を確かめ、稼げない柱は畳む——中古車買取という一事業で最短記録の上場まで駆け上がった会社は、海外多角化でも同じ現実主義を通した。どこまで広げ、どこで畳むか。豪州の7年は、その線引きを実地で確かめた打ち手であった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

海外・新車ディーラーへ次の柱を求めて

国内の中古車買取で全国網を築いた同社は、次の柱を海外と新車ディーラーに求めた。2004年に設けた米州の子会社Gulliver USAは十分に育たず、新車ディーラー業態の本格参入は2015年まで待った。2015年9月、Gulliver Australia Holdingsを通じて豪州のBuick Holdings Pty Ltd.の株式67.0%を取得し子会社化する。取得額は12億600万豪ドル、日本円で約115億2900万円と報じられた。西オーストラリアで10エリアに25の新車ディーラーを構え、トヨタ・日産・ホンダからクライスラー・プジョー・VWまで14ブランドを扱う会社だった[1][2]

2018年10月には豪州東部へも広げた。新設した子会社IDOM Automotive Essendonを通じ、メルボルンの新車ディーラーグループAndrews & Wallis Motor Groupの5社を追加取得する。買収額は50億円規模と報じられた。西オーストラリアのBuick経営で得たノウハウと事業基盤を東部でも生かし、海外新車事業を伸ばす狙いだった。国内買取「ガリバー」と豪州新車ディーラーの二軸で、モビリティ企業としての海外基盤を築こうとした[3][4]

決断

豪州新車ディーラー事業からの全面撤退

しかし2022年4月、羽鳥由宇介社長のIDOMは豪州新車ディーラー事業からの撤退を決めた。連結子会社IDOM Automotive Group Pty Ltd.とGulliver Australia Pty Ltd.の全株式を譲渡すると開示し、7年で築いた豪州の新車ディーラー網から全面的に退く判断を下した。経営資源を国内の小売事業へ集中させるための決定だった[5]

撤退は、資本効率と成長性を優先した事業再編の一環だった。IDOMは「連結子会社の株式譲渡及び特別利益の計上に関するお知らせ」を開示し、譲渡に伴う特別利益を計上する見込みを示した。海外の新車ディーラーより、標準化した査定と在庫管理で稼ぐ国内小売の方に、同社は次の成長を見た。国内では整備工場を併設する大型店の出店へ資源を振り向ける方針を強めた[6]

結果

二軸から国内集中へ

海外の新車ディーラーは、国内買取ほどの収益性を示さなかった。Andrews & Wallis取得を挟む2019年2月期、連結営業利益は前期の68億円から34億円へ、純利益は4億円へ落ち込んだ。海外新車事業への重い投資と、その果実の伸び悩みが重なった期だった。撤退後、豪州セグメントは縮小し、2024年2月期の開示では独立したセグメントから外れて「その他」へ統合された[7][8]

国内へ資源を戻したIDOMは、撤退を挟んで最高益を更新した。2023年2月期の親会社株主に帰属する当期純利益は142億円と、それまでの最高水準に達する。2021年9月には国内のBMW新車ディーラー、モトーレングローバルなど子会社2社もモトーレンレピオへ譲渡しており、豪州撤退と合わせ、新車ディーラー業態そのものから退いた。中古車の買取・販売と国内小売へ立ち返る流れが、この時期に明確化した[9][10]

出典・参考