WORKMAN Plusによる作業服から一般客・アウトドアへの客層転換
商品ではなく売り方と客を変える——飽和した作業服市場の外にどう出たか
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- 概要
- 作業服専門で成長が頭打ちになりつつあったワークマンが、職人向けに磨いた高機能・低価格の商品を、ショッピングモールで一般客・アウトドア客に届く見せ方に変えて売る新業態「WORKMAN Plus」を立ち上げた経営判断。土屋哲雄氏のデータ分析が、高機能と低価格が交わる空白市場を見つけ出した。
- 背景
- 作業服市場は景気の影響で法人の購買が減り、人手不足で作業服を着る人自体も減っていた。専業のワークマンは成長の頭打ちに直面し、土屋哲雄氏のもとで数年前から客層の拡大を模索していた。
- 内容
- 既存アパレルの立ち位置をデータで分析し、高機能かつ低価格が交わる「ブルーオーシャンで年間1,000億円を見込める市場」を狙えると判断。2018年9月、ららぽーと立川立飛に「WORKMAN Plus」1号店を出した。商品は職人向けの高機能品を軸に、見せ方と売り場を一般客向けに変えた。
- 含意
- WORKMAN Plusは半年で全国16店舗へ広がり、テレビでの紹介も相次いだ。既存店を上回る売上を稼ぎ、単体売上高は2018年3月期の417億円から2020年3月期の685億円へ伸びた。作業服の外にいた一般客・アウトドア客・女性客へ、市場そのものを広げた。
商品ではなく、売り方と客を変える
この判断の核心は、新しい商品を開発したのではなく、すでに持っていた強みを別の客に届け直した点にある。ワークマンが職人向けに磨いた高機能・低価格は、一般客やアウトドア客にも通用する水準にありながら、作業服店という売り場と、垢抜けない見せ方のなかに埋もれていた。土屋哲雄氏のデータ分析は、その強みがそのまま刺さる空白市場を特定した。商品を変えず、置く場所と見せ方だけを変える。低コストで大きな市場を開くこの発想は、ワークマンが元から持っていた資産の価値を、データで発見し直した結果だった。
WORKMAN Plusが示すのは、成長の頭打ちが必ずしも商品力の限界を意味しないということである。飽和したのは作業服という市場であって、ワークマンの商品そのものではなかった。同じ商品を、別の市場・別の客・別の見せ方に載せ替えれば、成長は続く。この発見は#ワークマン女子へと連なり、ワークマンを作業服の会社から一般向けの機能ウェアの会社へと変えていく。何が飽和したのかを正しく見分けること——強みと市場を切り分けて捉える視点が、この客層転換の出発点にあった。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
飽和した作業服市場
ワークマンは1980年の1号店以来、職人向けの作業服専門店として全国に店舗網を広げてきた。だが本業の市場は細りつつあった。景気の影響で法人の購買が減り、人手不足で作業服を着る人自体も減っていく。作業服の専業である以上、市場が縮めば会社の成長も頭打ちになる。三井物産から加わった土屋哲雄氏のもとで、ワークマンは数年前から、作業服の外へ客層を広げる道を探っていた。作業服の会社が、作業服以外の客をどう取り込むかが課題になっていた[1]。
打開の鍵は、意外にも自社の商品そのものに眠っていた。ワークマンが職人向けに磨いてきた作業服は、防水や防寒などの機能が高く、しかも価格が安い。この高機能・低価格の組み合わせは、一般の消費者やアウトドア愛好家にも十分通用する水準にあった。ただし見た目に難があった。当時の商品を「かっこいいか、ダサいか」で分類すると、8割が「ダサい」に入ってしまう。機能は一流でも、一般客に手を伸ばしてもらう見せ方が欠けていた。強みは持っていたが、届け方を持っていなかった[2]。
決断
空白市場を狙うWORKMAN Plus
ワークマンは、勘ではなくデータで次の市場を選んだ。既存のアパレルブランドの立ち位置を分析し、高機能と低価格が交わる領域に大きな空白があることを見つけた。土屋哲雄氏は、この空白を「ブルーオーシャンで年間1,000億円を見込める市場」と見立て、そこを狙って参入すると決めた。競合がひしめく価格やデザインの土俵ではなく、誰も本気で取りにいっていない、高機能で安いという交差点。ワークマンが元から持っていた強みが、そのままはまる市場だった[3]。
2018年9月、東京・立川のららぽーと立川立飛に「WORKMAN Plus」の1号店を開いた。並べる商品は、職人向けに磨いた高機能・低価格の品が軸である。変えたのは商品ではなく、売る場所と見せ方だった。作業服店ではなくショッピングモールに出し、アウトドアやタウンユースの文脈で陳列する。同じ商品でも、置く場所と見せ方を変えれば、届く客が変わる。開店後の反響は大きく、WORKMAN Plusは半年で全国16店舗へ広がり、テレビの情報番組や経済番組でも繰り返し取り上げられた[4]。
結果
客層拡大と業績の跳ね
見せ方を変えただけで、市場が開いた。WORKMAN Plusは、作業服の外にいた一般客やアウトドア客、そして女性客を店へ呼び込み、既存店を上回る売上を稼いだ。業績も跳ねた。単体売上高は2018年3月期の417億円から、2019年3月期に498億円、2020年3月期には685億円へ伸び、営業利益も同じ期間に106億円から192億円へ拡大した。作業服専門で頭打ちに見えた会社が、同じ商品を別の客に届けることで、成長の踊り場を抜け出した[5]。
WORKMAN Plusの成功は、次の一手も呼び込んだ。一般客のなかでも女性の反応が大きいと分かると、ワークマンは2020年に女性客に照準を合わせた「#ワークマン女子」を立ち上げ、客層をさらに広げた。作業服の外へ一歩出たことが、そこからの連続した展開の入り口になった。もっとも、8割が「ダサい」とされた見た目の課題は残り、一般客に選ばれ続けるには、機能だけでなくデザインを磨く必要も同時に生まれた。強みを届ける入り口を作ったことが、新しい課題も連れてきた[6]。
- MarkeZine(2019年6月25日)「ブルーオーシャンでしか勝負しない 『ワークマンプラス』のブランド戦略とデータ経営」
- ワークマン 有価証券報告書(単体業績)
- ワークマン 有価証券報告書【沿革】