この判断が示すのは、工場の自動化で培った制御技術を、駅務・交通・金融という社会の側のインフラへ橋渡しした発想である。券売機のためにコインの真偽を見分けるパターン認識と電子計算機を組み合わせ、サイバネーションという当時最新の技術を自前で獲得したことが、無人駅・交通管制・現金自動機へと連なった。制御を製造ラインの内側に閉じ込めず、社会の仕組みそのものを自動化する対象に選んだ点に、この事業の性格がうかがえる。
一方で、市場を最初に切り開いても、後発の大手にシェアを譲る展開は繰り返された。世界で初めて実用化したオンライン式現金自動機は、金融機関のシステムを一括して請け負える富士通や日立製作所が地歩を占め、オムロンは主導権を保てなかった。それでも、駅務・決済・交通を統合する社会システムは、FAに続く収益源として今日まで残っている。技術の先行が事業の優位へそのまま結びつくとは限らないという問いは、この分野でも早くから立石電機に突きつけられていたと思われる。