ブックオフグループホールディングス 不適切な売上計上と有価証券報告書の訂正 役員の近親者が関わる取引の未開示にともなう第13〜15期の訂正と、代表権の一本化

更新:

時期 2007年6月
当時の社長 橋本真由美
論点 不適切な売上計上と関連当事者取引の開示
何をなぜ決めたか
概要

2007年5月、不適切な売上計上の事実が明らかになった。同年6月29日に第13期・第14期・第15期の有価証券報告書の訂正報告書を3本同時に提出し、第14期の連結売上高を6,286千円、第15期を15,776千円それぞれ減額している。

訂正は数字にとどまらない。役員とその近親者が議決権を持つ会社との取引が、関連当事者の注記から漏れていた。第14期は「該当事項はありません」と記していた欄に、実質的には有限会社国明創研との取引が1件加わっている。

背景

誰でも査定できる標準化買取モデルでフランチャイズを全国に広げ、2004年に東証二部、2005年に東証一部へ上場した。第16期の連結売上高は462億円、経常利益は34億円で、上場後も年一割を超える伸びが続いていた。

一方で創業者の坂本孝氏は発行済株式の10.78%を直接持ち、上位には坂本孝氏が議決権の過半を握る甲府倉庫11.80%、サカモトキャピタル4.52%、坂本宗隆氏3.10%が並ぶ。会社と創業者の資産は近い距離にあった。

内容

訂正は主要な経営指標等の推移、業績等の概要、仕入及び販売の状況、連結貸借対照表・損益計算書・剰余金計算書・キャッシュ・フロー計算書、セグメント情報に及んだ。減額はブックオフ事業の直営店売上に集中し、第15期は仕入実績も同額の15,776千円減っている。キッズ・婦人服、ビデオレンタル、その他の3事業に訂正はない。

関連当事者では、第15期に銀座たけよしへの店舗賃貸10,994千円とエスビーエスプロモーションへの支払8,624千円が加わった。後者は形式的・名目的に同社を経由した取引で、実質の相手は橋本真由美氏の近親者が議決権を100%持つ国明創研である。

含意

2007年4月に組織を戦略・企画・営業・管理・業務の5部門制へ改め、常勤取締役と部門長による経営会議、経理財務業務の内部統制を担う業務部、日本版SOX法に対応する内部統制整備室を新設した。6月には橋本真由美氏が代表取締役社長兼COOから取締役会長へ移り、佐藤弘志氏が代表取締役社長に就任して代表権が一本化された。

第16期の役員一覧に創業者の坂本孝氏の名はない。同期の関連当事者には、坂本孝氏への貸付債権の譲渡99,000千円と、坂本孝氏が議決権を直接100.0%持つブックオフフロンティアへの店舗の転貸が残った。

いつ何が起きたか 8件
筆者の見解
筆者の見解

訂正されたのは数字か、開示か

この一件を会計の不正として読むと、規模が合わない。訂正で動いた連結売上高は第14期が6,286千円、第15期が15,776千円で、いずれも当該期の売上高の0.04%に満たない。損なわれたのは決算の正確さそのものよりも、誰と取引しているのかを株主に示す義務のほうだったと思われる。訂正の中心が関連当事者の注記にあり、第13期にいたっては数値の訂正がひとつもなく、注記の追記だけで終わっていることが、それを裏づけている。

もっとも、金額の小ささが問題の軽さを意味するわけではない。追記された取引の相手は、創業者が議決権の全部または過半を持つ会社と、社長の近親者が全部を持つ会社だった。会社自身が形式的・名目的と書いたとおり、広告の契約が第三者の広告会社を経由する形をとっていた点にこそ、開示を避けようとする意思が表れている。5部門制への移行と経営会議の新設、そして代表権の一本化は、創業者と社長が同時に取引の当事者となりうる構造を、権限の配置のほうから組み替える作業だったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
経緯と対応

経緯と対応

科目 概要 備考
事実の判明 2007年5月 不適切な売上計上の事実が明らかになった。第16期の【対処すべき課題】に記載
訂正報告書の提出 2007年6月29日 第13期・第14期・第15期の有価証券報告書の訂正報告書を同日に3本提出した
第13期の訂正範囲 関連当事者との取引 連結財務諸表の注記のみ。業績の数値に訂正はない
第14期・第15期の訂正範囲 財務諸表とセグメント情報 主要な経営指標等の推移、業績等の概要、仕入及び販売の状況、連結財務諸表にも及ぶ
第14期の売上高の訂正 △6,286千円 37,958,430千円から37,952,144千円へ。経常利益△3,841千円、当期純利益△2,280千円
第15期の売上高の訂正 △15,776千円 42,212,365千円から42,196,589千円へ。経常利益△6,768千円、当期純利益△4,017千円
訂正の生じた区分 ブックオフ事業の直営店売上 第15期は仕入実績も同額減。キッズ・婦人服、ビデオレンタル、その他に訂正はない
第14期の関連当事者の追記 該当事項なしから1社へ ㈱エスビーエスプロモーションへの使用契約料・出演料の支払8,424千円
第15期の関連当事者の追記 2社を追加 ㈱銀座たけよしへの店舗賃貸10,994千円と、エスビーエスプロモーション8,624千円
実質的な取引の相手 ㈲国明創研 橋本真由美氏の近親者が議決権を100%所有。広告会社を形式的・名目的に経由した
第16期の役員との取引 貸付債権の譲渡99,000千円 坂本孝氏への譲渡。譲渡額は貸付債権金額によっており、支払条件は一括現金払い
坂本孝氏が所有する会社との取引 店舗の賃貸 ブックオフフロンティア㈱へ転貸し賃貸料3,047千円。議決権を直接100.0%所有
リベートの金額 会社の公表資料に記載なし 有価証券報告書と訂正報告書のいずれにも金額の記載がない
代表取締役の交代 2007年6月 橋本真由美氏が代表取締役社長兼COOから取締役会長へ。佐藤弘志氏が社長に就任
組織の改編 2007年4月 戦略・企画・営業・管理・業務の5部門制へ移行し、経営会議・経営企画部を新設
内部統制の体制整備 内部統制整備室の新設 金融商品取引法(日本版SOX法)への対応を進めるため、業務部とあわせて設置
再発防止策 4つの施策 内部管理体制の見直し、コンプライアンス教育、内部通報システム、内部統制制度

出所:ブックオフコーポレーション 有価証券報告書 第16期(2007年3月期)【対処すべき課題】【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況】【関連当事者との取引】・第13〜15期 有価証券報告書の訂正報告書(2007年6月29日提出)

訂正の前後の連結業績

ブックオフグループホールディングス:訂正の前後の連結業績

(百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考
2002年3月期 24,63279873
2003年3月期 26,2421,502517
2004年3月期 34,4121,959882 第13期。訂正は関連当事者の注記のみで、業績の数値は動いていない
2005年3月期 37,9522,5111,423 第14期。訂正後の値。売上高は6,286千円、当期純利益は2,280千円減った
2006年3月期 42,1972,9661,539 第15期。訂正後の値。売上高は15,776千円、当期純利益は4,017千円減った
2007年3月期 46,2243,4671,901 第16期。訂正後の第14・15期と並べた指標の推移をこの期の有報に載せている
2008年3月期 50,4862,5711,045 発覚と訂正の期。経常利益は前期から896百万円減り、純利益はほぼ半減した
連結売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常利益率(%)

出所:ブックオフコーポレーション 有価証券報告書 第16期・第17期(主要な経営指標等の推移) / ブックオフコーポレーション 有価証券報告書の訂正報告書 第15期(主要な経営指標等の推移)

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参考文献
出典・参考
  • ブックオフコーポレーション 有価証券報告書の訂正報告書「第13期(2004年3月期)」
  • ブックオフコーポレーション 有価証券報告書の訂正報告書「第14期(2005年3月期)」
  • ブックオフコーポレーション 有価証券報告書の訂正報告書「第15期(2006年3月期)」
  • ブックオフコーポレーション 有価証券報告書「第16期(2007年3月期)【対処すべき課題】」
  • ブックオフコーポレーション 有価証券報告書「第16期(2007年3月期)【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況】」
  • ブックオフコーポレーション 有価証券報告書「第16期(2007年3月期)【関連当事者との取引】」
  • ブックオフコーポレーション 有価証券報告書「第17期(2008年3月期)【対処すべき課題】」

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