RMBファンドの取締役選任提案(2020年・三陽商会の決断)

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論点 株主提案の取締役候補を受け入れるか
三陽商会:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
取締役会による反対の決議と、双方が推した候補者を軸とする再生体制の維持

何をなぜ決めたか:取締役会による反対の決議と、双方が推した候補者を軸とする再生体制の維持

概要

2020年4月23日、取締役会は大株主からの株主提案に反対することを決議した。提案は第77期定時株主総会での取締役7名の選任で、会社提案の9名とは別の名簿である。5月26日の総会では会社提案の5議案がすべて可決され、株主提案は候補者全員が否決された。

ただし大江伸治氏だけは双方の名簿に載っていた。同氏は会社提案の候補として98.18%の賛成で選ばれ、総会後に社長へ就任している。

背景

提案株主はアールエムビー・ジャパン・オポチュニティーズ・ファンド,エル・ピーで、2020年2月29日時点で765千株、議決権保有割合6.32%を持つ大株主の第1位であった。株主提案書面の日付は3月28日である。

会社の側は3月1日に大江伸治氏を副社長執行役員として招き、4月14日には総会後に大江氏が社長、中山雅之社長が副社長となることを決め、同じ日に再生プランを公表していた。4期連続の営業損失により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在すると自ら認識していた時期にあたる。

内容

取締役会が挙げた反対の理由は3つある。会社提案の体制こそ再生に最適であること、株主提案の候補者に就任意思と経営プランがないこと、提案株主と一般株主の間に利益相反の可能性があることである。松田清人氏と矢野雅英氏は現任の社外取締役でありながら、提案株主から事前の説明を受けておらず就任の意思はないと明言した。

3つ目の理由は、提案株主のパートナーである細水政和氏の推挙目的が、戦略的パートナーへの会社売却の検討と、提案株主自身を戦略的パートナーとする検討にあると書簡で説明されていたことによる。

含意

賛成率は三層に割れた。双方が推した大江伸治氏が98.18%、会社提案の社外取締役候補が80〜90%台、現任社長の中山雅之氏が68.79%、株主提案だけの候補が11〜31%である。会社の名簿は通ったが、現職社長への支持だけが際立って低い。

提案株主はその後も買い増し、2021年2月期末には8.64%を保有した。売却を求める声が退けられたあと、株式を持ち続けることで改革を見届ける側へ回っている。

いつ何が起きたか 6件
考察:退けた提案が残した規律
考察

考察:退けた提案が残した規律

この攻防の争点は、改革をするかどうかではなく、舵を誰が握るかにあった。それを最もよく示すのは、大江伸治氏が双方の名簿に載っていた事実だろう。会社も提案株主も、外部から招いた経営者に再生を託すという一点では一致していた。割れたのは残りの席の埋め方であり、会社は独立社外取締役6名を自ら迎え入れる形で、提案株主は自らに近い人物を送り込む形で、それぞれ答えを出したことになる。

もっとも、否決を提案株主の劣位とだけ読むのは一面にとどまる。中山雅之元社長の賛成率68.79%は、同じ名簿に並んだ他の候補より10ポイント以上低い。株主は会社の名簿を丸ごと信任したのではなく、責任の所在を選り分けたのだといえる。その後の大江体制で粗利率を軸とする改革が進み、7期ぶりの営業黒字に届いたことを思えば、退けられたのは提案そのものであって、提案が突きつけた規律ではなかったのではないか。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

三陽商会:第77期定時株主総会の議決の結果

三陽商会:第77期定時株主総会の議決の結果
(個) 賛成反対棄権 備考
第1号議案 剰余金の処分 92,7326,8401 可決(賛成92.56%)。1株につき23円の期末配当
第2号議案 定款一部変更 98,6389347 可決(賛成98.45%)。取締役会の議長を取締役会であらかじめ定められるよう変更
第3号議案 中山雅之 68,92630,6467 可決(賛成68.79%)。会社提案の取締役候補者のなかで最も低い
第3号議案 大江伸治 98,3671,2057 可決(賛成98.18%)。株主提案の第6号議案にも候補として挙がっていた
第3号議案 加藤郁郎 98,1141,4587 可決(賛成97.93%)
第3号議案 岡澤雄 90,4799,0937 可決(賛成90.31%)。以下6名はいずれも新任の独立社外取締役候補
第3号議案 椎名幹芳 80,28219,2907 可決(賛成80.13%)
第3号議案 髙橋久男 80,38419,1887 可決(賛成80.23%)
第3号議案 二橋千裕 80,30919,2637 可決(賛成80.16%)
第3号議案 安田育生 90,4689,1047 可決(賛成90.30%)
第3号議案 矢野麻子 90,4629,1107 可決(賛成90.29%)
第4号議案 飯村北 98,8477257 可決(賛成98.66%)。監査役1名選任
第5号議案 森倫洋 98,8227507 可決(賛成98.63%)。補欠監査役1名選任
第6号議案 小森哲郎 28,87970,6727 否決(反対70.55%)。株主提案の候補者のなかでは2番目に高い賛成を得た
第6号議案 松田清人 10,97188,5807 否決(反対88.43%)。現任の社外取締役だが就任の意思はないと明言していた
第6号議案 矢野雅英 10,97188,5807 否決(反対88.43%)。松田清人氏と同じ賛否の数
第6号議案 細水政和 31,24368,3087 否決(反対68.19%)。提案株主のパートナーで、株主提案側では最も高い賛成
第6号議案 松尾明弘 21,02278,5297 否決(反対78.40%)
第6号議案 河野浩人 21,02678,5257 否決(反対78.39%)
出所:三陽商会 臨時報告書(2020年6月2日提出)の訂正報告書(2020年10月1日提出)
出所:三陽商会 臨時報告書(2020年6月2日提出)の訂正報告書(2020年10月1日提出)

三陽商会:提案株主の所有比率の推移

三陽商会:提案株主の所有比率の推移
所有比率(%)所有株式数(株) 備考
第77期(2020年2月期末) 6.32765,000 第1位。この保有比率をもって取締役7名の選任を提案した
第78期(2021年2月期末) 8.641,046,000 第2位。提案が否決されたあとに28万株余りを買い増した
第79期(2022年2月期末) 5.78701,000 第6位
第80期(2023年2月期末) 4.35506,000 第5位
出所:三陽商会 有価証券報告書 第76〜81期【大株主の状況】
出所:三陽商会 有価証券報告書 第76〜81期【大株主の状況】

株主提案と議決の条件

株主提案と議決の条件
科目 概要 備考
提案株主 アールエムビー・ジャパン・オポチュニティーズ・ファンド,エル・ピー 大株主の状況では常任代理人を香港上海銀行東京支店として記載されている
提案時の所有比率 6.32%(765千株) 2020年2月29日時点の議決権保有割合。同日時点の大株主第1位
株主提案書面の日付 2020年3月28日 議題は取締役7名選任の件。議案の要領と提案理由は原文のまま招集通知に掲載された
対象の総会 2020年5月26日開催の第77期定時株主総会 決算期変更で14ヶ月となった2020年2月期に関する総会
株主提案の候補者 小森哲郎、大江伸治、松田清人、矢野雅英、細水政和、松尾明弘、河野浩人の7名 第6号議案。松尾明弘氏は提案株主の代理人弁護士、細水政和氏は提案株主のパートナー
会社提案の候補者 中山雅之、大江伸治ほか計9名 第3号議案。社内3名と独立社外取締役6名で、社外は全員が新任
双方に重なる候補者 大江伸治 賛否は会社提案の第3号議案の候補者として集計され、株主提案側では集計されていない
提案の理由 経営者としての経験と知見 候補者ごとの略歴と推挙理由を記すのみで、事業再建の経営プランは示されていない
取締役会の反対決議日 2020年4月23日 全体として問題があるとして反対を決議し、同日に公表した
反対の理由(1) 会社提案の体制が再生に最適であること 大江伸治氏を社長、中山雅之氏を副社長とし、独立社外取締役6名を迎える構成
反対の理由(2) 候補者に就任意思と経営プランがないこと 松田清人氏と矢野雅英氏は事前説明を受けておらず就任の意思はないと明言した
反対の理由(3) 提案株主と一般株主の利益相反の可能性 細水政和氏の推挙目的に会社売却の検討と提案株主自身の買収の検討が挙がっていた
可決の要件 議決権の3分の1以上の出席と出席議決権の過半数の賛成 定款一部変更の第2号議案のみ出席議決権の3分の2以上が要件
議決の結果 会社提案は全議案可決、株主提案は候補者全員が否決 株主提案の候補者の賛成議決権は10,971個から31,243個にとどまった
出所:三陽商会「株主提案に関する書面の受領及び当該株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」(2020年4月23日)、第77期定時株主総会招集ご通知、臨時報告書(2020年6月2日提出)およびその訂正報告書
出所:三陽商会「株主提案に関する書面の受領及び当該株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」(2020年4月23日)、第77期定時株主総会招集ご通知、臨時報告書(2020年6月2日提出)およびその訂正報告書
参考文献

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