パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス 長崎屋を買収しGMS参入 食品・大型店への進出と、MEGAドン・キホーテ業態の母胎づくり

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時期 2007年10月
当時の社長 安田隆夫
論点 事業領域の拡張(GMS・食品・大型店)
何をなぜ決めたか
概要

2007年10月、都市型・非食品に強い総合ディスカウントストアのドン・キホーテが、安田隆夫会長兼CEOと成沢潤治社長のもとで、経営破綻から再建途上の総合スーパー・長崎屋を子会社化した、初の大型M&Aである。キョウデンと長崎屋の主要株主から3回に分けて発行済株式の93.9%を取得し、取得価額は12,484百万円。長崎屋と同社子会社7社が加わり、グループ店舗数は200店を超えた。

背景

ドン・キホーテの強みは非食品の雑貨・家電に偏り、食品と地方、そして大型店に手薄だった。2007年6月期の連結売上高は300,660百万円、グループ店舗数は161店である。相手の長崎屋は2000年に会社更生法を申請し、キョウデンの支援下で再建途上にあったが、2007年2月期に売上高139,983百万円・総資産48,693百万円という事業規模を持ち、衣料と食品を扱う大型店の網はドン・キホーテの弱みをちょうど裏返しに備えていた。

内容

2007年10月26日、キョウデンおよび長崎屋の主要株主と株式譲渡契約を締結し、長崎屋と同社子会社7社を子会社とした。2007年12月10日と2008年5月30日の追加取得を合わせ、75,100株・12,484百万円で発行済株式の93.9%を取得している。

受け入れたのは流動資産12,362百万円と固定資産32,174百万円で、負債と少数株主持分を差し引いた差額から負ののれん2,147百万円が生じた。株式取得の目的に挙げたのは、新しい業態が加わることによる店舗ネットワークの拡大と、長崎屋の業績回復の加速である。

含意

長崎屋の大型店は「ドン・キホーテ」「MEGAドン・キホーテ」へ順次転換された。総合スーパー事業の売上高は連結初年度の2008年6月期が60,092百万円(6か月分)、フル連結の2009年6月期が88,610百万円で、業態転換と不採算7店の閉鎖により1,548百万円の営業損失を計上している。転換が進んだ2010年6月期には54,005百万円まで縮み、2011年6月期にはリテール事業へ統合されて区分そのものが消えた。買った企業を自社業態へ作り替えるこの手法は、2019年のユニー完全子会社化で最大規模に反復される。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

弱みを埋めるM&Aと、ユニーへ続く型

この買収の要点は、自力では埋めにくい弱みを、他社の資産ごと引き受けた点にある。都市型・非食品というドン・キホーテの強みは、裏を返せば食品と地方と大型店の弱さでもあった。長崎屋は経営破綻という傷を抱えていたが、その店舗網と食品の扱いは、ドン・キホーテに欠けたものをそのまま備えていた。時価評価した純資産が取得価額12,484百万円を上回り、負ののれん2,147百万円が立っていることが、傷んだ企業を割安に引き受けたという性格をそのまま表している。

もっとも、安く引き受けたことと再生できたことは別である。総合スーパー事業は連結2年目に1,548百万円の営業損失を計上し、業態転換が進むにつれて区分そのものが縮んで消えた。長崎屋は総合スーパーとして立て直されたのではなく、ディスカウントストアの店舗網として使い切られたとみられる。店舗網として使うのであれば、被取得企業の業態や収益力よりも、立地と床面積が値打ちを決めることになる。2019年のユニー完全子会社化は、この読み替えを数百店規模へ広げた反復だったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 長崎屋 総合小売業。2007年2月期の売上高139,983百万円・総資産48,693百万円、資本金4,000百万円
同時に取得した会社 長崎屋の子会社7社 子会社化により当社グループ店舗数は200店舗に達した
取得の法的形式 株式譲渡契約による株式取得 キョウデンおよび長崎屋の主要な株主との間で株式譲渡契約を締結
子会社化の日 2007年10月26日 第2回目の取得は2007年12月10日、第3回目は2008年5月30日
取得株式数 75,100株 3回の取得の合計
取得価額 12,484百万円 取得に伴う現金及び現金同等物1,222百万円を差し引いた支出は11,261百万円
取得後の持分比率 93.9% 緊密な者又は同意している者の所有割合4.9%は外数。2009年6月期末には100.0%
受け入れた資産 流動資産12,362/固定資産32,174百万円 引き受けた流動負債は14,501百万円、固定負債は14,326百万円、少数株主持分は1,078百万円
負ののれん 2,147百万円 効果の発現する期間を個別に見積もって均等償却。2008年6月期末の連結残高は4,657百万円

出所:ドン・キホーテ 有価証券報告書 第28期(2008年6月期)【経営上の重要な契約等】・連結キャッシュ・フロー計算書注記

総合スーパー事業(長崎屋)の売上高とセグメント利益

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス:総合スーパー事業(長崎屋)の売上高とセグメント利益

(百万円) 売上高セグメント利益セグメント資産 備考
2008年6月期 60,09258749,373 長崎屋を連結。決算月が4月で異なるため、2007年11月から2008年4月までの6か月分
2009年6月期 88,610△1,54837,697 長崎屋をフル連結。業態転換の進行と不採算7店の閉鎖が営業損失の要因
2010年6月期 54,005△25619,625 業態転換した店舗がディスカウントストア事業へ移り、売上高は前期比39.0%減
総合スーパー事業の売上高
売上高(百万円)

出所:ドン・キホーテ 有価証券報告書 第28〜30期(事業の種類別セグメント情報)

負ののれんと連結総資産

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス:負ののれんと連結総資産

(百万円) 負ののれん負ののれん償却額総資産 備考
2003年6月期 −−93,411
2004年6月期 −−126,774
2005年6月期 −−150,048
2006年6月期 1,557490167,534 米国・ハワイ事業の取得で負ののれんが生じた期
2007年6月期 3,634452209,865 ドイトおよびDIYプロモーションの取得で負ののれん2,795百万円が加わった
2008年6月期 4,6571,119276,288 長崎屋の取得で負ののれん2,147百万円が発生。総資産は66,423百万円増えた
2009年6月期 4,163858297,527
2010年6月期 3,306857302,029
2011年6月期 2,449857341,300
2012年6月期 1,592857362,651
2013年6月期 964628386,622
負ののれんの残高
負ののれん(百万円)

出所:ドン・キホーテ 有価証券報告書 第27〜33期(連結貸借対照表・連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)

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参考文献
出典・参考
  • ドン・キホーテ 適時開示「株式会社長崎屋の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
  • ドン・キホーテ 有価証券報告書「第28期(2008年6月期)【経営上の重要な契約等】」
  • ドン・キホーテ 有価証券報告書「第28期(2008年6月期)連結キャッシュ・フロー計算書注記」
  • ドン・キホーテ 有価証券報告書「第28〜30期(2008年6月期〜2010年6月期)事業の種類別セグメント情報」
  • ドン・キホーテ 有価証券報告書「第27〜33期(2007年6月期〜2013年6月期)連結貸借対照表・主要な経営指標等の推移」

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