ミツミ電機との経営統合(2015年・ミネベアミツミの決断)

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論点 入力デバイスを経営統合で取り込むか
ミネベアミツミ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
株式交換による完全子会社化と、ミネベアミツミへの商号変更

何をなぜ決めたか:株式交換による完全子会社化と、ミネベアミツミへの商号変更

概要

ミネベアは2016年3月30日の取締役会決議に基づきミツミ電機と経営統合契約および株式交換契約を締結し、2017年1月27日に株式交換でミツミ電機を完全子会社化した。ミツミ電機の普通株式1株にミネベアの普通株式0.59株を割当交付し、交付した株式数は47,912,911株。うち20,000,000株は保有する自己株式を充て、27,912,911株は新株式の発行で対応した。取得原価は55,521百万円で、企業結合日に取得した議決権比率は100.0%。統合と同時に商号をミネベアミツミへ改め、貝沼由久社長が新会社の会長兼社長に就任した。

背景

統合の理由に挙げたのは、成長および事業ポートフォリオの進化、生産体制・拠点の最適化によるコスト競争力とキャッシュフロー創出力の向上、開発力の向上およびソリューションの提供の3点で、エレクトロメカニクスソリューションズ企業として企業価値をさらに高めることを目的とした。

相手の状態は通期換算の試算に表れている。この企業結合が2016年4月1日に完了していたと仮定すると、2017年3月期の連結売上高は137,625百万円増える一方、営業利益は12,872百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は30,299百万円それぞれ押し下げられる。試算にはたな卸資産の評価減12,336百万円と固定資産の減損損失18,677百万円が含まれる。

内容

株式交換の効力発生日は当初2017年3月17日を予定していたが、2016年10月に2017年1月27日へ前倒しされた。取得の対価の内訳は、自己株式の充当22,960百万円、新株式の発行32,044百万円、社債の承継20,517百万円から資金の貸付20,000百万円を控除した55,521百万円である。企業結合日に受け入れた資産は176,184百万円、引き受けた負債は105,350百万円。時価純資産額が取得価額を上回ったため負ののれん発生益14,619百万円が特別利益に立ち、同時に株式希薄化対策として買い戻した転換社債の償還損6,196百万円が特別損失に計上された。完全子会社化でありながら、のれんは増えていない。

含意

統合を織り込んだ2017年3月期の売上高は638,926百万円で創業以来の過去最高を更新し、親会社株主に帰属する当期純利益41,146百万円も過去最高となった。ただしミツミ事業の連結期間は2か月余りにとどまり、セグメント売上高は40,342百万円、セグメント利益は2,315百万円である。

通年で寄与した2018年3月期にはミツミ事業の売上高が253,555百万円、セグメント利益が20,069百万円へ伸び、連結売上高は879,139百万円に達した。連結従業員数は2016年3月期の62,480人から2017年3月期に78,957人となった。2021年3月期を期限に掲げた「売上高1兆円and/or営業利益1,000億円」のうち、売上高が1兆円を超えたのは2022年3月期だった。

いつ何が起きたか 6件
考察:名を分け合った完全子会社化
考察

考察:名を分け合った完全子会社化

この統合の含みは、買収を重ねて拡大してきた会社が、相手の名を自社の商号に入れたことにある。取得した議決権比率は100.0%で、法的にはミツミ電機を完全子会社とする株式交換にすぎない。それでも商号をミネベアミツミへ改めたところには、統合を確実に前へ進めるために形式にこだわらないという実利と、相手の技術者や現場の気持ちを引き寄せる意図の両方が読み取れる。対価が現金ではなく自社株式と社債の承継で構成され、現金の流出をともなわない統合であった点も、この判断を軽くしたのだろう。

もっとも、これが割安な買い物だったことは負ののれん発生益14,619百万円が示している。時価純資産が取得価額を上回るというのは、市場がミツミ電機の資産をそれだけ低く見ていたということでもある。通期換算で営業利益を12,872百万円押し下げる相手を子会社化する判断は、初年度だけを見れば重荷を背負ったようにも映る。それが翌期にセグメント利益20,069百万円へ転じたのは、統合そのものより、統合後に踏み込んだ事業の整理が効いたと思われる。買った先で現場が動くかどうかに成否が左右されるという問いは、その後も同社に残されているといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

ミネベアミツミ:ミツミ事業と連結売上高の推移

連結売上高(百万円)ミツミ事業 売上高率(%)
ミネベアミツミ:ミツミ事業と連結売上高の推移
(百万円) 連結売上高ミツミ事業 売上高ミツミ事業 セグメント利益 備考
2011年3月期 269,139−− 統合前。ミツミ電機は独立した上場会社
2012年3月期 251,358−−
2013年3月期 282,409−−
2014年3月期 371,543−−
2015年3月期 500,676−−
2016年3月期 609,814−− 2015年12月にミツミ電機との経営統合で基本合意
2017年3月期 638,92640,3422,315 2017年1月27日に企業結合。ミツミ事業の連結期間は2か月余り
2018年3月期 879,139253,55520,069 ミツミ事業が通年寄与。連結売上高は日本基準。IFRSでは881,413
2019年3月期 884,723302,08622,161 第73期よりIFRSを適用。以降の連結売上高はIFRSベース
2020年3月期 978,445294,01518,656
2021年3月期 988,424378,92220,458 中期目標の期限。売上高1兆円には届かなかった
出所:ミネベア/ミネベアミツミ 有価証券報告書 第65〜75期(連結損益計算書・セグメント情報)
出所:ミネベア/ミネベアミツミ 有価証券報告書 第65〜75期(連結損益計算書・セグメント情報)

ミネベアミツミ:総資産とのれんの推移

総資産(百万円)のれん率(%)
ミネベアミツミ:総資産とのれんの推移
(百万円) 総資産のれん 備考
2011年3月期 291,0925,555
2012年3月期 306,7724,222
2013年3月期 362,8053,502
2014年3月期 381,2782,998
2015年3月期 490,0436,539
2016年3月期 459,4275,721
2017年3月期 643,3124,714 株式交換で総資産は183,885増えたが、のれんは増えていない
2018年3月期 707,8448,509 総資産は日本基準。IFRSでは703,558
2019年3月期 742,1278,284 第73期よりIFRSを適用。以降の総資産はIFRSベース
2020年3月期 864,48118,626
2021年3月期 976,77141,439
出所:ミネベア/ミネベアミツミ 有価証券報告書 第65〜75期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)
出所:ミネベア/ミネベアミツミ 有価証券報告書 第65〜75期(連結貸借対照表・連結財政状態計算書)

経営統合の条件

経営統合の条件
科目 概要 備考
被取得企業 ミツミ電機 事業の内容は電気、通信機器の部品の製造販売。結合後企業の名称はミツミ電機のまま
企業結合の法的形式 株式交換 ミネベアを株式交換完全親会社、ミツミ電機を株式交換完全子会社とする
株式交換契約の締結 2016年3月30日 同日の取締役会決議に基づき締結。効力発生日は当初2017年3月17日を予定していた
企業結合日 2017年1月27日 2016年10月に当初予定の2017年3月17日から前倒しした
株式交換比率 ミネベア1:ミツミ電機0.59 ミツミ電機の普通株式1株にミネベアの普通株式0.59株を割当交付
交付した株式数 47,912,911株 自己株式の充当20,000,000株と新株式の発行27,912,911株で対応
取得した議決権比率 100.0% 取得直前に所有していた議決権比率は-%
取得原価 55,521百万円 自己株式の充当22,960、新株式の発行32,044、社債の承継20,517、資金の貸付△20,000
取得関連費用 609百万円 アドバイザリー費用等
受け入れた資産・負債 資産176,184百万円・負債105,350百万円 流動資産142,381/固定資産33,803/流動負債101,250/固定負債4,099
負ののれん発生益 14,619百万円 企業結合時の時価純資産額が取得価額を上回ったため。特別利益に計上した
取得企業を決定するに至った主な根拠 株式を対価に全株式を取得したため 株式交換比率は野村證券と大和証券の算定を参考に当事者間の協議で決定した
通期換算した影響額 売上高137,625百万円 期首に完了と仮定。営業利益△12,872、親会社株主に帰属する当期純利益△30,299
出所:ミネベア 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【経営上の重要な契約等】/ミネベアミツミ 有価証券報告書 第71期(2017年3月期)【企業結合等関係】
出所:ミネベア 有価証券報告書 第70期(2016年3月期)【経営上の重要な契約等】/ミネベアミツミ 有価証券報告書 第71期(2017年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • ミネベア 適時開示「ミネベア株式会社とミツミ電機株式会社との経営統合に関する基本合意書の締結に関するお知らせ」
  • ミネベア 適時開示「ミネベア株式会社とミツミ電機株式会社との経営統合契約及び株式交換契約の締結に関するお知らせ」
  • ミネベア 適時開示「ミネベア株式会社とミツミ電機株式会社との経営統合に関する株式交換の効力発生日変更のお知らせ」
  • ミネベア 有価証券報告書「第70期(2016年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • ミネベアミツミ 有価証券報告書「第71期(2017年3月期)【企業結合等関係】」
  • ミネベアミツミ 有価証券報告書「第72期(2018年3月期)【セグメント情報】」
  • ミネベアミツミ 有価証券報告書「第73期(2019年3月期)【主要な経営指標等の推移】」

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