出店拡大主義をやめ、既存店大型化と調剤深耕へ成長モデルを組み替える

2025年進行中

出店の数で規模を追うか、既存店の中身を深めるか——十数年続けた成長のやり方をどう入れ替えるか

時期 2025年7月
意思決定者 廣瀬泰三(社長)
論点 成長モデルと出店戦略
概要
2025年7月、クリエイトSDホールディングスは新中期経営計画「Next STAGE 2030」を公表し、毎年数十店の新規出店で規模を伸ばす十数年来のやり方を改めた。既存エリアのドミナントを深く掘り、既存店を大型化し、調剤と食品を深める方向へ主軸を移し、自力出店に加えてM&Aを新たな成長エンジンに据えた。2030年5月期に売上高6800億円・ROE12%以上を掲げる。
背景
廣瀬体制下で神奈川を起点に首都圏・東海へ出店を重ね、連結売上高は2012年5月期の約1697億円から2025年5月期の約4571億円へ拡大した。だが食品強化で1店あたりの売場が広がるにつれ大型の好立地物件を確保しにくくなり、前中期経営計画が掲げた25年5月期末850店に対し、実績は831店にとどまった。
内容
廣瀬泰三社長は「1店舗当たりの面積を拡大し、大型店舗へのシフトをしてきた結果、出店店舗数は計画に未達だった」と説明し、出店数で規模を追う設計を入れ替えた。Next STAGE 2030は既存店の大型化・食品と調剤の深耕を軸に、「オーガニックな出店だけではスピード感が出ない」としてM&Aを併用する成長へ切り替えた。
含意
マツキヨココカラやウエルシア・ツルハが統合で規模を競うなか、クリエイトは大手同士の合従連衡と距離を置き、既存店を大きくして1店あたりの採算を高め、調剤の比率とかかりつけ機能を深める道を選んだ。2030年5月期6800億円の達成可否は、本稿の時点では見通せない。
筆者の見解

面を広げる成長から、中身を深める成長へ

この判断の際立つところは、規模を新規出店の数で伸ばす十数年来の手法を、成長がなお続く局面のさなかに、当の経営者が自ら止めた点にある。出店が計画に届かなくても売上高と粗利益高は伸びていた。その事実を、既存店の力がまだ余っている証と読むこともできたはずだが、廣瀬はむしろ、店を大型化するほど新規の好立地を確保しにくくなるという手法の限界の兆しと受け止めた。数を追うのをやめ、既存店の中身を深める方へ舵を切ったのは、業績が良いうちに成長の型を替えるという、順張りに見えて逆張りの選択である。

マツモトキヨシとココカラファイン、ウエルシアとツルハが統合で規模を競うなか、クリエイトは合従連衡と距離を置いた。既存店を大きくして1店あたりの採算を高め、高齢化で需要が伸びる調剤のシェアとかかりつけ機能を深め、足りない速さはM&Aで補う。規模の競争に統合で応じるのか、単独で密度と採算を深めるのか——本稿の時点で、どちらが正しかったかの答えは出ていない。出店して面を広げる成長から、面の中身を深める成長へ無理なく切り替えられるかどうかが、2030年へ向けた次の局面を分けることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

出店の数で規模を伸ばした十数年

2012年に外部から迎えた廣瀬泰三が社長に就いて以降、クリエイトSDは神奈川の高い店舗密度を保ったまま、首都圏から東海へと新規出店を重ねて規模を広げてきた。連結売上高は2012年5月期の約1697億円から2025年5月期の約4571億円へ、十数年でおよそ2.7倍になった。来店頻度の高い食品で客を集め、調剤と医薬品で利益を取る「医・食」の店づくりが既存店を底上げしたが、成長を牽引した主なエンジンは、毎年数十店を新設して面を広げる出店そのものにあった[1]

出店の設計は、特定のエリアへまとめて店を構えて密度を上げるドミナントの積み重ねである。2023年5月期を起点とする前の中期経営計画は、この延長線上で2025年5月期末に850店という店舗数の目標を掲げ、出店の数で規模を追った。神奈川で築いた密度を武器に、隣接する都県へ同じやり方を広げていく——それが十数年来変わらない成長の型だった[2]

頭打ちになった新規出店

ところが、食品を強化するほど1店あたりの売場が広がり、店は大型化していく。大型の好立地物件はそう簡単には出てこず、出店の数は計画に届かなくなった。2025年5月期末の店舗数は、前計画の850店に対して831店にとどまる。廣瀬社長は「品ぞろえの拡充と調剤の併設を推進していく中で、1店舗当たりの面積を拡大し、いわゆる大型店舗へのシフトをしてきた結果、出店店舗数は計画に未達だった」と説明した。もっとも、売上高と粗利益高は計画を達成しており、既存店客数の伸びと調剤・食品が牽引役になっていた[3]

決断

「Next STAGE 2030」── 成長モデルの入れ替え

2025年7月17日、クリエイトSDは新中期経営計画「Next STAGE 2030」を公表した。2026年5月期から2030年5月期までの5か年で、成長戦略・財務戦略・サステナビリティ経営を三つの柱に据える。成長戦略の中身は、店舗数を積み増して規模を追う従来の型からの転換である。既存エリアのドミナントをさらに深く掘り、既存店を大型店へ改装するスクラップ&ビルドを進め、生鮮を含む食品の品揃えと調剤のシェア・かかりつけ機能を深める。面を広げる成長から、面の中身を深める成長へと軸を移した[4]

もう一つの転換は、自力の出店だけに成長を託さないことである。廣瀬社長は「M&Aも活用して規模を拡大する。従来のオーガニックな出店だけではスピード感が出ない」と述べ、地場のスーパーや薬局を取り込む買収を新たな成長エンジンに据えた。計画公表に先立つ4月にはM&A推進チームを新設している。出店が計画に届かなかった経験が、成長の手段そのものを組み替える判断につながった[5]

掲げた到達点

転換の先に置いた到達点は高い。2030年5月期に連結売上高6800億円、経常利益率5.0%以上、自己資本利益率(ROE)12%以上を目指す。売上高は2025年5月期の約4571億円からおよそ1.5倍の水準にあたる。2026年5月期には栃木・長野・山梨といった既存地域に隣接する周辺県へ商圏を広げ、投資額は直近3年の年210億〜220億円弱から、計画期間中は年250億〜300億円強へ引き上げる。出店を抑える一方で、既存店の大型化とM&A、物流基盤の整備に資金を振り向ける設計である[6]

結果

動き出した転換と、見通せない到達点

本稿の時点(2026年7月)で、計画は途上にある。転換を最も早く形にしたのはM&Aだった。クリエイトSDは2025年8月に調剤薬局のサンエフを、同年10月に食品スーパーの八百半ホールディングスを相次いで子会社化した。廣瀬社長は業界の大手同士の経営統合とは距離を置くとしたうえで、「自社が主導する地場スーパーや薬局などのM&Aを成長の柱に据える」「企業文化を守りながら成長」と語り、買収先を自社の規律に統合していく方針を鮮明にした。もっとも、2030年5月期の売上高6800億円やROE12%という到達点に届くかどうかは、本稿の時点では見通せない[7]

出典・参考