アマゾンジャパンとの取引開始(2017年・AZ-COM丸和ホールディングスの決断)

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論点 EC物流参入とラストマイル運用体制への経営資源集中
売上高(億円)経常利益率(%)
ECラストワンマイル当日お届けサービスの立ち上げと、最大手顧客の入れ替わり

ECラストワンマイル当日お届けサービスの立ち上げと、最大手顧客の入れ替わり

概要

2017年6月、丸和運輸機関は首都圏で「ECラストワンマイル当日お届けサービス」を開始し、アマゾンジャパン合同会社との取引が始まった。同社向けの販売高は2018年3月期に4,188百万円、総売上高に占める割合は5.6%で、翌2019年3月期には11,113百万円・13.0%へ伸びている。

2006年のイトーヨーカ堂ネットスーパー配送受託以来積み上げてきた店舗発の即日配送の運用を、個人宅配へ振り向けた判断である。

背景

このサービスの受託は、2016年4月に始まった中期経営計画には含まれていなかった。計画の2年目にあたる2018年3月期は、売上高こそ計画72,000百万円に対し74,359百万円と3.3%上回ったものの、経常利益は計画5,000百万円に対し4,752百万円で5.0%、ROEは16.9%に対し15.8%の未達に終わった。

受託により売上高は増えたが、適正料金の収受に向けた料金改定の遅れに加え、新規業務における配送拠点・車両・人員の確保にかかる一時費用と、EC事業の拡大および事業安定化に向けた先行投資が利益を押し下げた。

内容

成長するEC市場で独自のラストワンマイル配送網を築くため、個人事業主「MQA(Momotaro・Quick Ace)」の開業を支援する仕組みを構築し、これを2019年からの中期経営計画の柱の一つに据えた。2018年5月には東京都荒川区に株式会社NS丸和ロジスティクスを設立し、2018年3月には国際トランスサービスと関東運送から商品個配事業を譲り受けている。

投資を目的とした資金需要には、新規物流センターの設備投資や用地取得と並んで、このサービスにおける新規拠点開設投資を挙げた。ただし取引の期間や料率は開示されておらず、第45期・第46期とも【経営上の重要な契約等】は該当事項なしとなっている。

含意

アマゾンジャパン向けの割合は2019年3月期の13.0%から2020年3月期に19.0%へ上がり、この期に14.7%のマツモトキヨシホールディングスを抜いて最大の相手先となった。2021年3月期23.4%、2023年3月期25.7%、2025年3月期には29.9%と、総売上高の3割に迫っている。

大口取引先の変動のリスクの書きぶりも変わった。2018年3月期までは最大手顧客としてマツモトキヨシホールディングスを名指しし、その割合を記していたが、2019年3月期以降は社名も割合も挙げず、販売先の多様化に努めるという一文が加わった書き方になっている。

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筆者の見解 集中がもたらした成長と脆さ
筆者の見解

集中がもたらした成長と脆さ

この判断の核心は、荷主を一つ増やしたことではなく、収益の土台を小売3PLから個人宅配へ載せ替えたことにあったとみられる。受託は進行中の中期経営計画に入っていなかったもので、2018年3月期は売上高が計画を上回った一方、経常利益は計画5,000百万円に対し4,752百万円にとどまった。拠点と車両と人を先に積み、料金改定を後から追いかける形になった期である。計画の枠外にある案件を、計画の利益を割ってでも取りにいったことになる。

もっとも、載せ替えた土台は一社の荷に支えられている。アマゾンジャパン向けの割合は2018年3月期の5.6%から2025年3月期には29.9%へ上がった。予期せぬ事象による取引契約の変更や契約解消が業績と財務状況に影響を及ぼす、という大口取引先の変動のリスクは、比率が上がるほど重くなる。2018年3月期まで最大手顧客の社名と割合を挙げて書いていたリスク記述が翌期から名を伏せた書き方に変わったのは、依存の相手が入れ替わったことの裏返しだと推察される。2022年のファイズホールディングス取得は、その依存構造ごと自社に取り込む一手であった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

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取引の条件

取引の条件

科目 概要 備考
取引先 アマゾンジャパン合同会社 2021年3月期以降の相手先別販売実績での表記はアマゾンジャパン(同)
サービスの名称 ECラストワンマイル当日お届けサービス
開始時期 2017年6月
開始時の対象地域 首都圏
初年度の販売高 4,188百万円 2018年3月期。総売上高に占める割合5.6%。開示は翌期の前期欄が初出
翌期の販売高 11,113百万円 2019年3月期。割合13.0%。この期から相手先別販売実績に社名が並ぶ
配送の担い手 個人事業主「MQA(Momotaro・Quick Ace)」 開業を支援する仕組みとして2019年からの中期経営計画2022に位置づけ
専門運営会社 株式会社NS丸和ロジスティクス 2018年5月に東京都荒川区へ設立した連結子会社
投資 新規拠点開設投資 資金需要として物流センターの設備投資・用地取得と並べて挙げるのみ。金額は開示されていない
契約の期間・料率 開示なし 第45期・第46期とも【経営上の重要な契約等】は該当事項なし

出所:丸和運輸機関 有価証券報告書 第45期(2018年3月期)・第46期(2019年3月期)【沿革】【生産、受注及び販売の状況】【事業等のリスク】【経営上の重要な契約等】

アマゾンジャパン向け販売高と連結売上高の推移

AZ-COM丸和ホールディングス:アマゾンジャパン向け販売高と連結売上高の推移

(百万円) アマゾンジャパン向け販売高マツモトキヨシHD向け販売高連結売上高 備考
2013年3月期 −7,07548,291 アマゾンジャパンは相手先別販売実績に記載なし。マツモトキヨシHDは14.7%
2014年3月期 −9,43651,455 マツモトキヨシHDは18.3%
2015年3月期 −10,93354,033 マツモトキヨシHDは20.2%
2016年3月期 −12,19660,364 マツモトキヨシHDは20.2%
2017年3月期 −12,64267,179 マツモトキヨシHDは18.8%
2018年3月期 4,18813,33374,359 6月に取引開始。アマゾン5.6%、マツモトキヨシHD17.9%
2019年3月期 11,11313,85585,590 アマゾン13.0%、マツモトキヨシHD16.2%
2020年3月期 18,67114,50498,348 アマゾン19.0%がマツモトキヨシHD14.7%を上回り最大の相手先となる
2021年3月期 26,24614,185112,113 アマゾン23.4%、マツモトキヨシHD12.7%
2022年3月期 31,47014,851133,000 相手先は2021年10月にマツキヨココカラ&カンパニーへ商号変更。11.2%
2023年3月期 45,75216,032177,829 アマゾン25.7%。ヤマト運輸26,341百万円・14.8%が新たに並ぶ
アマゾンジャパン向け販売高(百万円)その他の売上高(百万円)アマゾンジャパン向け販売高率(%)

出所:丸和運輸機関・AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第41〜50期【生産、受注及び販売の状況】(主な相手先別の販売実績)

連結従業員数と臨時雇用者数の推移

AZ-COM丸和ホールディングス:連結従業員数と臨時雇用者数の推移

(名) 連結従業員数臨時雇用者数 備考
2013年3月期 2,2503,332
2014年3月期 2,3003,575
2015年3月期 2,3393,522
2016年3月期 2,4233,957
2017年3月期 2,4624,163
2018年3月期 2,7404,028 配送拠点・車両・人員の確保にかかる一時費用が利益を押し下げた期
2019年3月期 2,8434,121
2020年3月期 3,0314,452
2021年3月期 3,6304,832
2022年3月期 4,5896,458 3月にファイズホールディングスを連結子会社化
2023年3月期 4,8156,565
連結従業員数(名)臨時雇用者(名)

出所:丸和運輸機関・AZ-COM丸和ホールディングス 有価証券報告書 第44期・第49期・第50期【主要な経営指標等の推移】(連結)

参考文献
出典・参考
  • AZ-COM丸和ホールディングス 統合報告書 2022
  • 丸和運輸機関 有価証券報告書「第46期(2019年3月期)【生産、受注及び販売の状況】(主な相手先別の販売実績)」
  • 丸和運輸機関 有価証券報告書「第45期(2018年3月期)【経営者視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容】」
  • 丸和運輸機関 有価証券報告書「第45期(2018年3月期)【事業等のリスク】(大口取引先の変動のリスク)」
  • 丸和運輸機関 有価証券報告書「第47期(2020年3月期)【沿革】【経営成績等の状況の概要】」

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