大京をTOBで買収(2018年・オリックスの決断)

更新:
論点 上場子会社を完全子会社化するか
オリックス:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
マンション大手・大京のTOBによる完全子会社化

何をなぜ決めたか:マンション大手・大京のTOBによる完全子会社化

概要

2018年10月26日、議決権の66%を保有していた上場子会社でマンション大手の大京について、その普通株式を公開買付けにより取得することを決議した経営判断。買付けは同年12月10日に成立し、大京は2019年1月に東京証券取引所の上場を廃止して完全子会社となった。すでに支配下にある子会社の少数株主からの買い取りであるため、この取引は資本取引として処理され、営業権(のれん)は発生していない。

背景

オリックスは2005年3月に大京と資本提携し、普通株式133,720,000株を引き受けるとともに第1種・第2種・第4種の優先株式を取得した。2009年3月には第7種優先株式25,000,000株を引き受け、第8種優先株式23,598,144株を取得している。2014年2月27日に保有する優先株式の取得請求権を行使して普通株式398,204,999株を取得し、議決権の保有割合は31.7%から64.1%となって、大京は持分法適用関連会社から連結子会社になった。

内容

買付けの結果、2018年3月期末に66%であった議決権の所有割合は2019年3月期末に100%となった。非支配持分との取引として資本剰余金が100億円、非支配持分が603億円減り、非支配持分からの子会社持分の取得による支出は861億円(大京以外の取引を含む)であった。あわせて大京の未分配利益の回収方法を課税取引による回収から非課税取引による回収へ変更したため、計上していた繰延税金負債を全額取り崩し、当期の法人税等が273億円減っている。

含意

有価証券報告書はこの完全子会社化を、不動産事業の相互補完を行い総合不動産グループとして一体での中長期的な成長を目指すことを目的としたものと説明している。同じ期に大京のセグメント区分を事業投資事業部門から不動産事業部門へ移し、前期のセグメント数値も組み替えた。買い取りの巧拙が損益として現れない取引である一方、不動産事業の輪郭はこの移管で大きく変わった。

いつ何が起きたか 7件
考察:純投資と取り込みのあいだで
考察

考察:純投資と取り込みのあいだで

同じ会社の株式を取得する取引でも、支配を得る買収と、すでに握っている子会社の少数株主から残りを買い取る取引とでは、帳簿に残るものがまるで違う。2014年2月に優先株式の取得請求権を行使して大京を連結子会社にしたときは、それまで持分法で扱っていた持分を公正価値1,246億円で測り直し、584億円の利益を計上したうえで、営業権と無形資産434億円を暫定計上した。これに対して2018年の公開買付けは、支配が続いたままの追加取得であるため資本取引として処理され、営業権は生じない。支払った金額と非支配持分の帳簿価額との差は資本剰余金を100億円減らす形で吸収され、損益計算書には現れなかった。代わりに当期の利益を押し上げたのは、未分配利益の回収方法を非課税取引へ改めたことによる繰延税金負債273億円の取崩しであった。

帳簿の表面が静かであったぶん、変化はセグメントの区割りに出た。同じ期に大京は事業投資事業部門から不動産事業部門へ移され、不動産事業部門のセグメント収益は前期の1,729億円から5,290億円へ跳ね上がる。組替後の前期の値でみても4,897億円であり、この部門の中身は大京の移管でほぼ入れ替わったことになる。有価証券報告書はこの一連の狙いを、不動産事業の相互補完と総合不動産グループとしての一体での成長にあると記す。上場子会社として置いたままでは共有できなかった人と案件を、ひとつの部門のなかへ集約し直した選択であったと推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

数字で見る

図と表

オリックス:不動産事業部門のセグメント損益と資産

セグメント収益(百万円)セグメント利益(百万円)
オリックス:不動産事業部門のセグメント損益と資産
(百万円) セグメント収益セグメント利益セグメント資産 備考
2014年3月期 198,45017,956962,404
2015年3月期 182,3213,484835,386 大京は2014年2月から連結。当時の区分は事業投資事業部門
2016年3月期 191,54042,902739,592
2017年3月期 212,05072,841657,701
2018年3月期 172,94862,372620,238
2019年3月期 529,06489,247720,221 大京を不動産事業部門へ移管。組替後の前期のセグメント収益は489,752
2020年3月期 466,63976,857749,694
2021年3月期 359,79824,684872,095 セグメント区分を10区分に改め、名称が「不動産」となった
2022年3月期 390,68833,558910,101
2023年3月期 418,73651,523935,027
2024年3月期 471,69265,835994,115
出所:オリックス 有価証券報告書 第51〜62期(セグメント情報・不動産事業部門)
出所:オリックス 有価証券報告書 第51〜62期(セグメント情報・不動産事業部門)

オリックス:資本剰余金と非支配持分の推移

資本剰余金(百万円)非支配持分(百万円)
オリックス:資本剰余金と非支配持分の推移
(百万円) 資本剰余金非支配持分 備考
2014年3月期 255,449177,019
2015年3月期 255,595165,873
2016年3月期 257,629162,388
2017年3月期 268,138139,927
2018年3月期 267,291116,450
2019年3月期 257,62556,127 非支配持分との取引で資本剰余金が10,033、非支配持分が60,347減少
2020年3月期 257,63872,227
2021年3月期 259,36174,688
2022年3月期 260,479109,982
2023年3月期 233,16970,715
2024年3月期 233,45780,499 2024年3月期よりIFRSを適用
出所:オリックス 有価証券報告書 第51〜62期(連結貸借対照表・連結資本勘定計算書)
出所:オリックス 有価証券報告書 第51〜62期(連結貸借対照表・連結資本勘定計算書)

買収の条件

買収の条件
科目 概要 備考
対象会社 株式会社大京(東京都渋谷区) マンションの開発・販売・管理・流通。資本金41,171百万円
公開買付けの決議 2018年10月26日 大京の普通株式を公開買付けにより取得することを意思決定した
公開買付けの成立 2018年12月10日
完全子会社化 2019年1月 大京は東京証券取引所の上場を廃止した
議決権の所有割合 66% → 100% 2018年3月期末と2019年3月期末の【関係会社の状況】による
会計処理 資本取引として処理 支配が継続する追加取得のため営業権(のれん)は発生しない
資本剰余金の減少 10,033百万円 当期の「非支配持分との取引」。大京以外の子会社持分の取得を含む
非支配持分の減少 60,347百万円 当社株主資本と合わせた資本の減少額は70,483百万円
子会社持分の取得による支出 86,165百万円 連結キャッシュ・フロー計算書。前期の支出は11,299百万円
繰延税金負債の取崩し 法人税等が27,376百万円減少 未分配利益の回収方法を課税取引から非課税取引へ変更したため
セグメント区分の変更 事業投資事業部門→不動産事業部門 2019年3月期より移管し、前期のセグメント数値を組替再表示した
出所:オリックス 有価証券報告書 第56期(2018年3月期)・第57期(2019年3月期)【関係会社の状況】連結財務諸表注記「追加情報」「資本」「セグメント情報」
出所:オリックス 有価証券報告書 第56期(2018年3月期)・第57期(2019年3月期)【関係会社の状況】連結財務諸表注記「追加情報」「資本」「セグメント情報」
参考文献

参考文献

参考
  • オリックス 有価証券報告書 第51期(2014年3月期)・第56期(2018年3月期)・第57期(2019年3月期)
  • オリックス 統合報告書 ORIX INTEGRATED REPORT 2019
  • オリックス 有価証券報告書「第57期(2019年3月期)連結財務諸表注記「追加情報」」
  • オリックス 有価証券報告書「第57期(2019年3月期)【関係会社の状況】」
  • オリックス 有価証券報告書「第56期(2018年3月期)【関係会社の状況】」
  • オリックス 有価証券報告書「第57期(2019年3月期)連結資本勘定計算書・連結キャッシュ・フロー計算書」
  • オリックス 有価証券報告書「第57期(2019年3月期)【セグメント情報】」
  • オリックス 有価証券報告書「第51期(2014年3月期)連結財務諸表注記「買収」」
  • オリックス 統合報告書「ORIX INTEGRATED REPORT 2019」

次に読む決断

免責事項およびポリシー