オアシスと合併比率対立(2018年・アルプスアルパインの決断)

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論点 株主の反対を押して統合比率を通すか
アルプスアルパイン:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
株式交換による2社の経営統合の押し切りと、条件をめぐる攻防

何をなぜ決めたか:株式交換による2社の経営統合の押し切りと、条件をめぐる攻防

概要

2017年7月に発表されたアルプス電気とアルパインの経営統合をめぐり、アルパインの少数株主である香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントが株式交換比率1対0.68はアルパインの少数株主に不利だとして反対した経営判断。2018年12月5日のアルパイン臨時株主総会で株式交換契約は原案どおり承認可決され、2019年1月1日にアルプス電気が商号をアルプスアルパインへ改め、アルパインを完全子会社とした。

背景

アルパインはアルプス電気が議決権の41.15%を持つ上場子会社で、車載機器を手がけていた。CASEと呼ばれる自動車の技術変革を前に、栗山年弘社長は電子部品とソフトウエアを一体化する統合を選んだ。一方で親会社が比率を主導する親子上場の構造は、少数株主との利益相反を招きやすい面を抱えていた。

内容

統合はアルパイン1株にアルプス電気0.68株を割り当てる株式交換で組まれた。オアシスは比率が低すぎると反対し、株式交換契約の承認議案が否決されることを条件とする剰余金処分の株主提案を出した。会社側は第三者算定機関に比率を再算定させ、臨時株主総会の承認を停止条件とする1株100円の特別配当に合意して株主の同意を求めた。

含意

臨時株主総会では会社提案の株式交換契約承認と特別配当がともに可決され、株主提案は第1号議案の可決により決議されなかった。一方で株式買取請求を出した株主とは買取価格の合意が成立せず、比率の当否は司法の場へ移った。親子上場の再編で比率の公正さをどう担保するかという問いを残した事案であった。

いつ何が起きたか 7件
考察:比率という一点に凝縮した親子上場の問い
考察

考察:比率という一点に凝縮した親子上場の問い

この一件の核心は、統合すべきか否かではなく、統合の値づけを誰がどう決めるかにあった。電子部品とソフトウエアを統合する事業の論理は、CASE時代の再編としてそれなりの説得力を持っていた。ただ、親会社が41.15%の議決権を握ったまま比率を設計する親子上場の構造では、少数株主にとって0.68という数字が公正だと信じる根拠が薄い。会社側は第三者算定機関の再算定と1株100円の特別配当で応じたが、買取価格の合意に至らない株主が残った事実は、その手当てが完全には信を得られなかったことを示しているとみられる。

司法は最終的に会社側の比率を追認し、争いは決着した。とはいえ、法廷で不当と認められなかったことと、少数株主が公正だと納得したこととは同じではない。親子上場の解消がなお続く日本の資本市場で、支配株主が関わる統合の比率をどんな手続きで正当化するのか——第三者委員会の独立性や社外取締役の役割をめぐる問いは、この事案が残した課題として今も引き継がれていると推察される。物言う株主の異議は退けられたが、それが投げかけた論点までが退けられたわけではない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

アルプスアルパイン:資本剰余金と非支配株主持分の推移

資本剰余金(百万円)
アルプスアルパイン:資本剰余金と非支配株主持分の推移
(百万円) 資本剰余金非支配株主持分自己資本 備考
2014年3月期 −−230,380 資本剰余金と非支配株主持分は有報の逐語で照合できていない
2015年3月期 42,228104,079179,621
2016年3月期 57,248103,088228,676
2017年3月期 56,071106,365254,749
2018年3月期 56,065114,362301,510 アルパインは議決権41.15%の上場子会社で、非支配株主持分に計上されている
2019年3月期 126,56129,652365,708 株式交換で資本剰余金が70,515増加し、アルパインの非支配株主持分が消えた
2020年3月期 126,54430,872324,743
2021年3月期 124,59233,244345,135
2022年3月期 124,54935,701389,607
2023年3月期 124,2061,565398,217 アルプス物流と子会社25社を連結子会社から持分法適用会社へ変更した
2024年3月期 124,1381,648391,176
出所:アルプスアルパイン 有価証券報告書 第81〜91期(連結貸借対照表)
出所:アルプスアルパイン 有価証券報告書 第81〜91期(連結貸借対照表)

アルプスアルパイン:統合した事業のセグメント業績

車載情報機器事業 売上高(百万円)車載情報機器事業 セグメント利益率(%)
  • 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14%
  • UBS AG LONDON A/C IPB SEGREGATED CLIENT ACCOUNT 7%
  • 日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 7%
  • JP MORGAN CHASE BANK 385151 3%
  • BNYM SA/NV FOR BNYM FOR BNY GCM CLIENT ACCOUNTS M LSCB RD 3%
  • その他 66%
アルプスアルパイン:統合した事業のセグメント業績
(百万円) 車載情報機器事業 売上高車載情報機器事業 セグメント利益電子部品事業 売上高 備考
2014年3月期 282,1159,813338,811
2015年3月期 289,78311,537389,120
2016年3月期 267,5415,434434,072
2017年3月期 242,3065,623437,676
2018年3月期 267,63813,735514,031
2019年3月期 303,59313,921468,605 車載情報機器事業はアルパインを基幹とする報告セグメント
2020年3月期 306,2995,655424,709
2021年3月期 240,616△3,947396,042
2022年3月期 234,314△4,519476,572
出所:アルプスアルパイン 有価証券報告書 第81〜91期(セグメント情報等) / アルプスアルパイン 有価証券報告書 第86期(2019年3月期)【大株主の状況】【株式の総数等】
出所:アルプスアルパイン 有価証券報告書 第81〜91期(セグメント情報等) / アルプスアルパイン 有価証券報告書 第86期(2019年3月期)【大株主の状況】【株式の総数等】

アルプスアルパイン:株主総会の議決権行使結果

アルプスアルパイン:株主総会の議決権行使結果
(%) 剰余金の処分・配当代表取締役社長の選任 備考
2019年6月 第86回定時株主総会 99.7885.03 統合後最初の定時株主総会。栗山年弘の選任議案
2020年6月 第87回定時株主総会 99.5597.78
2021年6月 第88回定時株主総会 99.5794.56
2022年6月 第89回定時株主総会 97.692.2
2023年6月 第90回定時株主総会 99.5597.17
2024年6月 第91回定時株主総会 99.5690.48 泉英男が社長に交代した後の最初の選任議案
2025年6月 第92回定時株主総会 99.8897.39
2026年6月 第93回定時株主総会 99.9298.36
出所:アルプス電気・アルパイン 適時開示「持株会社体制への移行を伴う経営統合(株式交換)に関する臨時株主総会の承認可決についてのお知らせ」(2018年12月5日) / アルプスアルパイン 臨時報告書(第86回〜第93回定時株主総会における議決権行使結果)
出所:アルプス電気・アルパイン 適時開示「持株会社体制への移行を伴う経営統合(株式交換)に関する臨時株主総会の承認可決についてのお知らせ」(2018年12月5日) / アルプスアルパイン 臨時報告書(第86回〜第93回定時株主総会における議決権行使結果)

経営統合(株式交換)の条件

経営統合(株式交換)の条件
科目 概要 備考
株式交換完全子会社 アルパイン株式会社 音響機器及び情報通信機器の製造販売。第85期の議決権所有割合は41.15%
株式交換完全親会社 アルプス電気株式会社 効力発生日に商号をアルプスアルパイン株式会社へ変更した
統合の方式 簡易株式交換 会社法第796条第2項により、当社側は株主総会の承認を要しない手続で行った
株式交換比率 アルパイン1株に当社0.68株 第三者算定機関は当社が野村證券、アルパインがSMBC日興証券
交付した株式数 22,973,364株 うち1,900,000株は保有する自己株式を割当てに充当した
効力発生日 2019年1月1日 同日に事業持株会社体制へ移行し、カンパニー制を導入した
取得原価 49,048百万円 対価は当社普通株式
会計処理 共通支配下の取引等 取得原価と持分の差額はのれんではなく資本剰余金として処理される
増加した資本剰余金 70,515百万円 非支配株主との取引による子会社株式の追加取得
アルパインの特別配当 1株当たり100円 臨時株主総会の承認を停止条件とする。基準日は2018年10月15日
特別配当を前提とした再算定 比率の見直しを行わない 2018年9月27日の当社取締役会が決定。フェアネス・オピニオンは取得していない
再算定の評価レンジ(DCF法) 0.56〜0.79 2018年9月26日付の野村證券による算定。比率0.68はこのレンジ内にある
再算定の評価レンジ(類似会社比較法) 0.57〜1.13
再算定の評価レンジ(市場株価平均法) 0.51〜0.54および0.74〜0.78 基準日は2017年7月25日と2018年9月25日の2通りで算定した
アルパイン臨時株主総会 2018年12月5日 第1号議案の株式交換契約承認と第2号議案の剰余金処分がともに承認可決
議決の結果 可決 賛成の割合は当社の開示に記載がない
株主提案 第3号議案 剰余金の処分の件 第1号議案が否決されることを条件とする提案で、可決により決議されなかった
株式買取請求 一部のアルパイン株主が請求 買取価格の合意が成立せず、公正な価格で買い取ったものとして算定した
アルパイン株式の上場廃止 2018年12月26日 最終売買日は2018年12月25日
出所:アルプスアルパイン 有価証券報告書 第86期(2019年3月期)【企業結合等関係】・第85期(2018年3月期)【経営上の重要な契約等】
出所:アルプスアルパイン 有価証券報告書 第86期(2019年3月期)【企業結合等関係】・第85期(2018年3月期)【経営上の重要な契約等】
参考文献

参考文献

参考

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