エア・ウォーターの源流である北海酸素株式会社は[1]、1929年9月に北海道札幌市白石区菊水で資本金15万円[2]をもって設立された。[3]酸素の製造・販売を目的とする地場の産業ガス専業会社で、北海道の鉄工・造船・建築現場を主要顧客とする一拠点企業として戦中・戦後を乗り切った。1952年12月には溶解アセチレンの製造・販売を開始し[4]、1955年12月にはLPガスの販売へ進出する[5]。北海道という遠隔市場で酸素・アセチレン・LPガスのいわゆる三本柱を揃え、配送と充填所の網を地域に張る業態を整えたのが戦後復興期から高度成長前夜にかけての姿となる。1966年8月には商号を『株式会社ほくさん』へ改め[6]、酸素工業から総合産業ガス会社へ業態の幅を広げ始めた。
1979年9月には東京証券取引所市場第一部に株式を上場し[7]、地場会社から上場企業へ位置取りを変えた。設立から50年を経て社会的信用と資金調達手段を得た時期にあたり、ほくさんはこの後、医療用ガス・特殊ガス・冷凍機器・農産物冷蔵といった川下の機能商品へ事業領域を広げた。北海道発の地場メーカーが半導体・エレクトロニクス需要に乗って全国市場へ広がる素地は、この50余年で積み上がった。
1993年4月、ほくさんは大阪を地盤とする大同酸素株式会社と合併し[8]、社名を『大同ほくさん株式会社』と改めた。北海道のほくさんと西日本の大同酸素という地域別の二大酸素メーカーが一体化することで、東日本と西日本の両極に充填工場・販売拠点・物流網を持つ全国規模の産業ガス会社が誕生した形である。大同酸素は1933年3月、昭和初年以来の産業発展で酸素ガスの需要が製造能力を上回るなか、大阪地方の酸素充足を目的に資本金30万円で設立[9]された会社である。大阪市西成区津守に本社と工場を置き、ドイツのメッサー社から酸素ガス製造装置一基を導入して毎時60立方米[10]という小規模な操業から始まった。1953年には津守に溶解アセチレンガス工場を新設し[11]、翌1954年には堺工場へ西独リンデ社の装置で液体酸素・液体窒素・アルゴンガスの製造に乗り出すなど、製品系列を広げてきた事業者だった。合併後の大同ほくさんは札幌・大阪両拠点の二大核体制となり、地理的に離れた北海道と関西の市場を取り込んで産業ガス専業の壁を破る規模を備えた。
合併によって調達できた財務基盤と販売網を活かし、大同ほくさんは医療用ガス、ファインケミカル、農産・食品事業、エンジニアリングといった非ガス領域への進出を加速する。1990年代後半は半導体・液晶用特殊ガスの需要拡大期にあたり、超高純度の窒素・水素・アルゴン・特殊ガスを安定供給する役割が求められた時代でもある。同時に、1995年の阪神・淡路大震災や1997年のアジア通貨危機を経て、産業ガス業界でも国内事業の見直しと事業再編が進んだ。大同ほくさんは合併直後の数年で経営統合の効果を引き出しつつ、次なる規模拡大に向けた相手探しを進める。創業から70年を経て、ほくさんと大同酸素という二つの戦前創業の地場会社が一体化したことが、後の全国規模再編の準備段階となった。
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|---|---|---|---|---|
| 1929〜2000年北海酸素から大同ほくさんへ・産業ガス専業の40年 | 北海酸素を設立 | ★ | ||
| 大同酸素を設立 | ★ | |||
| 堺工場を新設 | ★ | |||
| 溶解アセチレンの製造・販売を開始 | ★ | |||
| LPガスの販売を開始 | ★ | |||
| 東京証券取引所市場第一部に株式を上場 | ★ | |||
| 共同酸素を設立(本店の所在地和歌山市) | ★ | |||
| 酸素・窒素の製造販売を開始 | ★ | |||
| 商号を「ほくさん」に変更 | ★ | |||
| 酸素オンサイトプラントを建設 | ★ | |||
| 東京証券取引所市場第一部に株式を上場 | ★ | |||
| 冷凍食品の製造・販売を開始 | ★ | |||
| エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズと資本提携 | ★★ | |||
| エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズと技術援助契約を締結 | ★ | |||
| 青木弘 | 近畿冷熱との共同出資によりクリオ・エアーを設立 | ★ | ||
| 水島茂 | 大同酸素と合併 | ★★ | ||
| 水島茂 | 大同ほくさんに商号変更 | ★ | ||
| 水島茂 | 大同ほくさんと業務提携 | ★ | ||
| 青木弘 | タテホ化学工業の第三者割当増資を引受け | ★ | ||
| 豊田昌洋 | 共同酸素と合併 | ★★ | ||
| 豊田昌洋 | エア・ウォーターに商号変更 | ★ | ||
| 2000〜2020年エア・ウォーター誕生と多角化の20年 | 美坂佳助 | 住金ケミカルに資本参加 | ★ | |
| 美坂佳助 | エア・ウォーター防災を株式交換により完全子会社化 | ★ | ||
| 美坂佳助 | 日本海水に資本参加 | ★★ | ||
| 今井康夫 | ゴールドパックを株式取得により完全子会社化 | ★★ | ||
| 今井康夫 | 川崎化成工業を子会社化 | ★ | ||
| 今井康夫 | 川本産業を株式取得により子会社化 | ★ | ||
| 白井清司 | コールケミカル事業を新日鐵住金と新日鉄住金化学へ譲渡 | ★★ | ||
| 豊田喜久夫 | HITEC Holding B.V. を株式取得により完全子会社化 | ★ | ||
| 豊田喜久夫 | 各地域事業会社を8社から3社に統合 | ★ | ||
| 松林良祐 | 全社的な不適切会計と子会社の資金横領、有価証券報告書の提出延長 2025年から2026年にかけて、産業ガス大手のエア・ウォーターで、グループの多数の会社に及ぶ不適切な会計処理が相次いで判明した経営危機。損失の先送りや在庫の過大計上が発覚して特別調査委員会が設置され、2026年3月期は一転して最終赤字へと下方修正された。2026年6月には子会社2社での費用付替えと資金横領が新たに見つかり、有価証券報告書の提出期限が延長された。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 松林良祐 | 2026年3月期を最終赤字へ下方修正 | ★★ | ||
| 松林良祐 | 有価証券報告書の提出を延長 | ★★ | ||
| 松林良祐 | 旧村上ファンド系による株式取得と増配・自己株取得の要求への対応 2026年5月、会計不正で特別注意銘柄に指定された産業ガス大手エア・ウォーターの株式を、旧村上ファンド系の投資会社シティインデックスイレブンスと村上世彰氏の長女・野村絢氏らが5.86%取得し、まもなく6.88%へ買い増した進行中の案件。保有目的には増配・自己株取得などの資本政策の変更に加え、MBOを含む株式の非公開化を提案する可能性が明記された。6月には香港のオアシス・マネジメントも6.05%を取得し、株価は上場来高値を更新した。 詳細を読む | ★★★ |
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事実根拠:出所(エア・ウォーター)