海外輸入が主流の業界での逆張り——全量国産・高原価率の自主企画SPA
集める店から、つくる店へ。なぜ原価率を上げてMade in Japanで世界を狙ったのか
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- 概要
- TOKYO BASEが、海外の優れた商品を輸入するのが主流のファッション業界で、その逆を行く全量国産・高原価率の自主企画ブランドを事業の柱に据えた経営判断。日本ブランドを集めるセレクトショップSTUDIOUSから、自ら企画するUNITED TOKYOへ踏み込み、2015年に東証マザーズへ上場した。
- 背景
- 谷正人氏は「日本発を世界へ」を掲げて2009年に創業し、日本の優れたブランドを集めたセレクトショップから出発した。従来の業界は海外の良い商品を日本に輸入する方向だったが、谷氏はその逆、日本でつくって世界へ出す方向を試みた。
- 内容
- 2015年、20代に向けた全量国産(ALL MADE IN JAPAN)のモードブランドUNITED TOKYOを開始した。原価率を50%まで引き上げて品質に振り、製造した県までタグに示す。安く仕入れて粗利を取る通常のアパレルとは逆に、原価をかけて価値で勝負するモデルを、日系セレクト市場に投じた。
- 含意
- UNITED TOKYOは早期に売上構成比32%(2018年2月期に41億円)へ育ち、単体売上高は2015年2月期の45億円から2018年2月期の128億円へ伸びた。都心集中・中価格帯・ファン層重視の「グローバルニッチ戦略」の土台となり、のちの中国・ニューヨーク出店へつながった。
逆張りを事業モデルにする
この判断の核心は、業界の常識の逆を、思いつきではなく事業モデルとして組み上げた点にある。海外の良品を輸入し、原価を抑えて粗利を取るのが主流のアパレルで、TOKYO BASEは日本でつくり、原価率を50%まで上げ、製造県までタグに示した。集める店からつくる店へ、輸入から輸出へ、低原価から高原価へ。谷正人氏が重ねた逆張りは、いずれも「日本発を世界へ」というミッションから一貫して導かれており、単なる差別化のための奇策ではなかった。
逆張りの品質戦略は、強みと弱みを同時に抱える。原価率50%は、他社が真似しにくい品質と、それを支持するファン層を生む一方で、利益率の薄さという構造を宿命づける。都心集中・中価格帯・ファン層重視のグローバルニッチは、規模を追わないぶん一店一店の重みが増し、海外では出店と採算の両立が問われる。品質に振り切った創業の選択が、そのまま後年の経営の制約にもなる——TOKYO BASEの歩みは、逆張りを事業の芯に据えた会社が引き受ける、果実と重荷の両面を映している。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
海外を輸入する業界への逆張り
谷正人氏は「日本発を世界へ」をミッションに掲げ、2009年にTOKYO BASE(当時のSTUDIOUS)を創業した。最初に立ち上げたのは、日本の優れたブランドを集めたセレクトショップである。当時のファッション業界は、海外の優れた商品を日本へ輸入して売るのが主流だった。谷氏はその流れに違和感を持ち、逆の方向を試みた。良いものを海外から持ち込むのではなく、日本でつくった良いものを世界へ出す。創業の出発点に、業界の当たり前をひっくり返す発想があった[1]。
逆張りは、集める店から、つくる店への踏み込みでもあった。日本の優れたブランドを一つの売り場に集めるセレクトショップは、あくまで他社の商品を編集して売る事業である。谷氏はそこから一歩進み、自ら企画し、日本の工場と素材でつくる自主企画のブランドへ向かった。編集する側から、ものづくりの側へ立ち位置を移す。この移動が、TOKYO BASEを単なるセレクトショップと分ける分岐になった[2]。
決断
UNITED TOKYOと全量国産・高原価率
2015年、TOKYO BASEは自主企画の柱となるブランドUNITED TOKYOを立ち上げた。20代に向けた、全量国産のモードブランドである。特徴は原価率の高さにあった。UNITED TOKYOは原価率を50%まで引き上げ、続くPUBLIC TOKYOも原価率50%を目指してつくる。安く仕入れて粗利を大きく取るのが通常のアパレルの利益設計だが、TOKYO BASEは逆に原価をかけ、素材と縫製の質へ振り向けた。製造した県までタグに記し、日本製であることを価値として前面に出した[3]。
高原価率で挑む相手は、ユナイテッドアローズやビームスといった日系セレクトショップの市場だった。輸入品や海外生産で価格を抑える競合に対し、TOKYO BASEは国産・高原価という重い条件を背負って同じ土俵に立った。品質で選ぶ顧客に、日本製の価値を正面から問う戦い方である。この自主企画ブランドを事業の柱に据えたうえで、TOKYO BASEは2015年9月に東証マザーズへ上場し、逆張りのモデルを資本市場でも試すことになった[4]。
中価格帯グローバルニッチ
谷氏が描いた勝ち方は、量でも最高級でもなかった。出店は東京・大阪・名古屋など都心部に絞り、価格は中価格帯に注力する。不特定多数へ幅広く売るのではなく、しかるべきファン層の獲得を重んじる。この「中価格帯マーケットを攻めるグローバルニッチ戦略」は、大量出店で薄く広く取る量販とも、一部の富裕層を狙うラグジュアリーとも異なる立ち位置だった。中価格帯のMade in Japanで世界に通用するファンをつくる。逆張りの品ぞろえに、逆張りの市場の攻め方を重ねた[5]。
結果
柱に育った自主企画と、海外への足がかり
自主企画への賭けは、数字で応えた。UNITED TOKYOは早期に売上構成比32%へ育ち、2018年2月期に41億円を売り上げた。TOKYO BASEの単体売上高は、上場した2015年2月期の45億円から、2018年2月期には128億円へと3年でおよそ3倍に伸びた。日本ブランドを集めるセレクトショップから始めた会社が、自らつくる全量国産ブランドを主力に据え、規模を押し上げた。逆張りのモデルは、机上の理念ではなく、伸びる事業として成り立つことを示した[6]。
全量国産・高原価率のブランドを持ったことは、TOKYO BASEに世界へ出る足がかりを与えた。日本製という価値は、海外でこそ通用する。2019年に中国本土(上海)、2024年に米国(ニューヨーク)へ直営で出店し、「日本発を世界へ」のミッションを実際の店舗網へ広げていった。もっとも、原価率50%というモデルは利益率の薄さと表裏でもあり、海外事業では出店と採算の両立という次の課題を抱えることになる。逆張りの品質戦略は、成長の推進力であると同時に、経営の重い制約でもあった[7]。