1996年、創業者の広田靖治氏が愛知県尾張旭市で個人事業[1]『オートステージヒロタ』を立ち上げた。1973年7月生まれの広田氏は当時23歳で[2][3]、給湯器の営業職を辞めて自動車販売会社への転職を目指したが、高校中退の経歴を理由に転職に失敗し、生まれ育った尾張旭市での個人創業に踏み切った。1998年12月、有限会社オートステージヒロタを資本金300万円で設立した[4]。当時の中古車販売業界はガリバーインターナショナル(後のIDOM)が買取専門で全国展開を進める一方、販売側は地域ごとに小規模事業者が乱立する状態だった。広田氏は競合の少ない中古のボルボ車に取扱を絞り、専門店化の戦略で参入した。
ボルボの中古車専門店は当時の日本市場で珍しく、全国からボルボ志望の顧客を集めることができた。USS(中古車オークション運営大手)からの仕入れによって安定した車種確保が可能となり、車種を絞り込んだ店舗運営の収益性が確認された。2002年6月には愛知県春日井市にネクステージ1号店を開業して国産スバル車の取扱を開始し[5]、輸入車専門から国産車も含む業態へ拡張した。同年8月、有限会社オートステージヒロタを株式会社オートステージへ組織変更し[6]、2004年12月に株式会社オートステージが株式会社ネクステージを吸収合併して社名を株式会社ネクステージに統一した。[7]
2000年代前半の中古車販売業界は同質競争が加速し、車両販売単体の利益率が圧縮された時期だった。広田氏は2005年11月から『クロスセル』と称する周辺商品の販売強化策を導入し[8]、保険・車検・板金・塗装といったアフター領域の商品ラインを店舗に組み込んだ。中古車1台あたりの粗利を車体販売に車検整備・損害保険の付帯マージンで上積みする設計で、価格競争下でも店舗単位の収益性を確保する仕組みである。
2008年8月、関西初進出となるネクステージ大阪茨木店を開業[9]して関西エリアへの拡張を始めた。同年10月には中古車輸出事業を開始し[10]、海外市場への販路拡大に踏み込んだ。しかし2008年9月のリーマンショックで中古車需要が急減し、並行して進めていた多店舗展開と相俟って財務体質が悪化した。同社の自己資本比率はFY2009時点で14〜16%台に低下し[11]、債務超過の可能性が経営課題に浮上した。中古車販売は車両在庫の金額が販売規模の3割超を占める業態で、需要が急減すると評価損と販売不振が同時発生する商社的な収益構造のなかで、リーマンショック期は中古車販売店の経営破綻が業界全体で多発した時期でもあった。
2009年10月の九州沖縄初進出(ネクステージ福岡店)[12]、2010年7月の関東甲信越初進出(オートステージ千葉店)[13]と並行して、広田氏は店舗数の拡張を継続した。2010年2月、広田氏は代表取締役社長兼CEOに就任し[14]、社名と肩書を整理して上場準備の体制を整えた。同年8月、商品の品質向上を目的にPDIセンター(現小牧BPセンター)を愛知県小牧市に開設し[15]、車両の点検・整備品質を本部レベルで標準化する仕組みを作った。リーマンショック後の業績回復過程で、広田氏は店舗数拡張・PDIセンター整備・クロスセル強化の3本柱を維持し、財務再建と成長戦略の2本を同時に進めた。
2011年8月、無店舗型での自動車出張買取事業を開始し[16]、中古車買取側のチャネルも内製化した。同年9月には本店所在地を名古屋市東区へ移し[17]、2011年12月にカーコーティング事業を目的に株式会社ASAPを設立した。[18]中古車販売・買取・車検・整備・コーティング・保険の各事業を1社グループ内で組み合わせる総合中古車事業者へ向けた組織整備が、リーマンショック後の3年で完成に近づいた。よって2010年代前半の業績拡張は単純な店舗数増加ではなく、中古車1台あたりの粗利を最大化する事業ポートフォリオの組成過程である。FY12(2012年11月期)売上高283億円・経常利益9億円から、上場直前のFY13売上高398億円へ年率40%超の成長率を実現した。
2013年7月、ネクステージは東京証券取引所マザーズに上場した[19]。創業から15年、株式会社化から11年での上場で、中古車販売事業者の株式市場本格進出となった。マザーズ上場時の連結売上高はFY12実績で283億円、店舗数は東海・関西・関東・九州・北海道東北エリアに分散していた。同年9月には北海道東北地方への再出店としてネクステージ仙南柴田店を宮城県柴田郡に開業し[20]、本州・北海道全域への店舗網拡張を加速した。FY13(2013年11月期)連結売上高398億円・経常利益11億円で、上場後初年度から増収を確保した。マザーズ上場で調達した資金は、1店舗500坪超への売場面積拡張と全国展開の加速に振り向けられた。
2014年9月、ネクステージは東京証券取引所市場第一部[21]に市場変更した。マザーズ上場から1年2カ月での一部市場昇格[22]は中古車販売事業者として前例がなく、機関投資家への提案力と店舗オペレーションの規模拡張が市場評価につながった。広田氏は2014年9月の日刊自動車新聞インタビューで『2020 Vision』として『200店舗・売上高2000億円・営業利益100億円』[引用元]を中期目標として掲げ、価格・品質・サービスで業界標準を作る中古車のメーカーになる方針を発表した。中古車販売チェーンを『メーカー』と位置付ける発想は、業界既存のディーラー網とは異なる新業態の創出を企図したものだった。FY14(2014年11月期)連結売上高504億円・経常利益5.9億円へ拡大し、一部上場直後から店舗数と売上高の年率二桁成長を継続した。
一部上場後の同社は、車検・整備・保険・コーティングまでを1店舗で完結する『総合店』業態への転換に乗り出した。同店舗は店舗面積・在庫車両数・併設サービス機能のすべてで従来の中古車販売店を上回り、顧客1人あたりの生涯取引額を高める設計で建設された。2015年8月にはアウトドアを仮想体験できる体験型店舗SUV LAND(現SUV LAND名古屋)を名古屋市緑区に開業し[23]、SUV専門店という新カテゴリーの1000坪規模フォーマットを定着させた。
2015年から広田氏は1店舗1000坪超への売場面積拡大方針を発表し、年間設備投資額を前年度比2倍に引き上げた。2010年代を通じてEC化が小売業全般で進む中、中古車販売は実物を見るニーズが根強く、1店舗あたり在庫車両数を増やす拡張店の集客力が販売効率を直接押し上げる業態特性があった。広田氏はこの判断のもとで、複合店から単独店への業態転換と1店舗あたり売場面積の拡大を並行して進めた。2015年度には年間18億円の設備投資を実施し[24]、FY18(2018年11月期)には設備投資額を年間56億円へ引き上げた[25]。同年は店舗用地と建物の取得を加速し、銀行からの借入調達184億円を実施した[26]。FY17(2017年11月期)末の自己資本比率42.5%はFY18末に28.2%へ低下し、借入主導の店舗フォーマット拡張が財務指標に表れた。
設備投資加速に伴いFY17(2017年11月期)連結売上高は1189億円・経常利益33億円、FY18(2018年11月期)は1631億円・経常利益41億円へ拡大した。年率37%増の売上成長率で、上場時点の283億円から5年で約6倍の規模に達した。同期間の店舗数も約3倍に拡大し、東北・関東・東海・関西・九州・北海道のほぼ全域に店舗網を持つ全国チェーンへ変貌した。FY18の連結従業員数は1944名、パート従業員は230名で、店舗オペレーションを支える人員も同期間で3〜4倍に増えた。
2016年5月には既存店併設型の買取店舗を計4店舗同時開業し[27]、買取・販売・整備を1拠点で完結する仕組みを店舗網全体に広げた。2016年1月にはボルボ・カー香里園を大阪府寝屋川市に開業して輸入車の正規ディーラー業務にも参入し[28]、2017年9月にはジャガー・ランドローバー天白を名古屋市天白区に開業した。[29]中古車販売チェーンが輸入車正規ディーラー業務へ進出する事例は業界でも珍しく、メーカー側との交渉力と販売実績の積み重ねが許認可取得の前提となった。2018年6月にはウエインズインポート株式会社の全株式を取得して子会社化し、株式会社Aiとしてアウディ正規販売店4店舗の運営を始めた[30]。中古車販売を起点に新車正規ディーラー業務へ展開する複合事業者へ業態の幅を広げた。
FY20(2020年11月期)連結売上高は2411億円、営業利益68億円・経常利益65億円で営業利益率は2.8%。FY21(2021年11月期)は売上高2912億円・営業利益136億円・経常利益134億円となり、営業利益率は4.7%へ上昇した。広田氏は2010年代を通じて中古車1台あたりの粗利最大化を経営の主軸に据え、車検・整備・保険・コーティング・アフターサービスの内製化で1顧客あたりの生涯取引額を引き上げる仕組みを整えた。
中古車販売業界の主流モデルは大手チェーンによる買取(IDOM・ビッグモーター)、中古車オークション運営(USS、業界シェア40%強)、店舗販売(ネクステージ、ケーユーHD等)の3層構造で、ネクステージは2015年からの7年で店舗販売層のシェアを年率3〜5ポイント拡大した。USSのオークション機能を中古車仕入れの基盤に据え、自社の店舗網で販売・整備・保険まで一気通貫で提供する事業構造は、IDOMやビッグモーターとは異なるポジションを占めた。ビッグモーターはネット広告と低価格買取で全国展開する一方、ネクステージは店舗単位の品質・サービス・在庫の幅で顧客生涯取引を志向する設計で、業態モデルの差別化が営業利益率の差として表れた。
FY22(2022年11月期)連結売上高は4181億円・営業利益194億円・経常利益190億円で、過去最高水準を更新した。新車不足が中古車需要を押し上げる業界環境で、1000坪規模店舗の在庫と販売体制が直接業績に寄与した。同年9月には中国地方初の総合店となるネクステージ岡山店を岡山県岡山市に開業し[31]、全国網のさらなる充実を進めた。FY22末の店舗数は買取店・販売店・新車ディーラー店舗を含めて200店超で[32]、2014年の『2020 Vision』200店舗目標を約2年遅れで達成した。同年中期経営計画(FY2022〜FY2024)が発表され、FY2024に売上高5000億円、FY2030に売上高1兆円(国内中古車市場シェア5%)という長期目標が示された。[33]毎期20店舗の出店で到達する設計で、業界トップシェアを視野に入れた成長計画である。
2022年2月、ビッグモーター出身の浜脇浩次副社長が代表取締役社長兼COOへ昇格し、広田氏は代表権のある会長兼CEOに就いた[34]。浜脇氏は1993年に株式会社ビッグモーターへ入社し、株式会社ハナテン専務取締役を経て2016年2月にネクステージ取締役副社長へ就任[35]した経歴を持つ。中古車販売業界での営業実績を買われての社長就任で、広田氏は経営判断と長期戦略に専念し、浜脇氏が日常の営業運営を担当する二人三脚体制が組まれた。同年1月の日刊自動車新聞インタビューで広田氏は『中長期的な成長に向けて新たな経営体制に移行する』[引用元]と述べ[36]、社長交代の経営的意義を説明した。
浜脇浩次社長就任後の2022年は新車不足による中古車特需が続き、FY22売上高4181億円・営業利益194億円という過去最高業績を記録した。同年11月期決算で達成された業績は、広田氏の創業以来の1000坪規模店舗フォーマット転換と全国網拡張の成果が市況追い風と重なって表れたものだった。同社は2023年9月1日付で問題を公表し[37]、業界全体の信頼回復が経営課題に浮上した。広田氏が築いた1000坪規模店舗モデルと生涯顧客戦略は、業界全体の不正問題と無関係ではいられない局面に置かれた。
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|---|---|---|---|---|
| 1996〜2014年中古ボルボ専門店からの多店舗展開と上場 | 広田靖治 | オートステージヒロタを設立 | ★★ | |
| 広田靖治 | オートステージ1号店をオープン | ★ | ||
| 広田靖治 | ネクステージを設立しスバル車販売に参入 | ★★ | ||
| 広田靖治 | オートステージヒロタをオートステージへ組織・商号変更 | ★ | ||
| 広田靖治 | 軽・コンパクトカー販売専門のセレクト100春日井店をオープン | ★ | ||
| 広田靖治 | 鈑金・塗装専門のBPセンターを開設 | ★ | ||
| 広田靖治 | オートステージがネクステージを吸収合併し商号をネクステージへ変更 | ★ | ||
| 広田靖治 | ネクステージのクロスセル導入と生涯顧客モデルへの転換 2005年11月、ネクステージの広田靖治社長が、車検・保険・板金などアフター領域を中古車1台の販売に束ねる『クロスセル』を導入し、車両販売から顧客の生涯取引で稼ぐ収益構造へ切り替えた事業判断。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 広田靖治 | 関西地方初の出店となるネクステージ大阪茨木店を開店 | ★ | ||
| 広田靖治 | 中古車輸出事業に参入 | ★★ | ||
| 広田靖治 | 九州沖縄地方初の出店となるネクステージ福岡店を開店 | ★ | ||
| 広田靖治 | 関東甲信越地方初の出店となるオートステージ千葉店を開店 | ★ | ||
| 広田靖治 | 無店舗型の自動車出張買取事業に参入 | ★★ | ||
| 広田靖治 | 東証マザーズ上場と、異例の速さの東証一部昇格 中古車販売のネクステージが、2013年7月に東証マザーズへ上場し、2014年9月にはマザーズから約1年2カ月で東証一部へ市場変更した資本政策の判断。広田靖治社長は、調達した資金と得た信用を、売場の拡張と全国展開の加速に振り向けた。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 2015〜2022年1000坪規模店舗フォーマットへの転換と全国網完成、東証一部後の業績6倍化 | 広田靖治 | 大型ワンストップ店フォーマットへの転換と、借入による規模拡大 2015年からネクステージの広田靖治社長が進めた、売場を大型化する店舗フォーマットへの転換。中型店で敷地1500坪、旗艦店で3000〜4000坪規模の大型ワンストップ店を、借入を膨らませて用地・建屋へ投じ、全国へ広げた。 詳細を読む | ★★★ | |
| 広田靖治 | アウトドア体験型店舗SUV LANDをオープン | ★★ | ||
| 広田靖治 | 初の輸入車正規ディーラーとしてボルボ・カー香里園をオープン | ★★ | ||
| 広田靖治 | 既存店併設型の買取店舗を4店舗同時オープンし買取専業チャネルを本格展開 | ★ | ||
| 広田靖治 | 中古車輸出事業から撤退 | ★ | ||
| 広田靖治 | ウエインズインポートを子会社化 | ★ | ||
| 広田靖治 | 大型輸入車専門店UNIVERSE名古屋をオープン | ★ | ||
| 2023〜2025年創業者復帰と保険不正問題への対応 ── インセンティブ全廃の経営刷新 | 浜脇浩次 | 中国自動車メーカーBYDの正規販売店としてBYD AUTO池袋をオープン | ★ | |
| 広田靖治 | ネクステージの営業インセンティブ全廃と創業者社長の復帰 2023年9月、保険の不適切契約を受けて浜脇浩次社長が辞任し、創業者の広田靖治会長が社長を兼任、営業インセンティブを全廃して報酬を固定給中心へ組み替えた不祥事対応。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 広田靖治 | 広田靖治氏が社長を兼任 | ★ | ||
| 広田靖治 | 営業インセンティブを全廃 | ★★ | ||
| 広田靖治 | エー・エル・シーを株式取得により子会社化 | ★ | ||
| 広田靖治 | ONEモトーレンを設立し子会社化 | ★ | ||
| 広田靖治 | ネクステージ徳島店をオープンし全都道府県への出店を実現 | ★ |
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事実根拠:出所(ネクステージ)