2002年5月、木下勝寿氏が大阪市淀川区[1]で『株式会社北海道・シーオー・ジェイピー』[引用元]を設立[2]した(同年9月に本店を札幌へ移転)。創業者の木下氏はリクルート出身で[3]、新卒入社後にインターネット黎明期の事業企画に従事し、独立して北海道発のECに着目した経歴を持つ。創業時の事業構想は、北海道の規格外農産物・水産物を『わけあり特産品』としてEC販売するというものだった。北海道産メロン・カニ・じゃがいもなど、贈答品基準を満たさない規格外品を割安で消費者に届けるという商品設計で、SEO主体の集客と低コスト運営を両立させる事業構造だった。
2007年7月には『北海道わけあり市場』を本格開設し[4]、規格外特産品の取り扱いを拡大した。開設当初は『わけあり』という商品概念の珍しさと割安感から注目を集め、楽天系の通販アワードを受賞するなどメディア露出も得て売上を確保した。しかし『わけあり』コンセプトを掲げる類似EC事業者が次々に参入し、北海道産物の規格外品という限定されたカテゴリーで競争が激化した。差別化要因が乏しい商品カテゴリーでの集客競争は、SEO・広告費を押し上げて収益を圧迫した。
2007年7月、北の達人は健康美容食品のECに参入し[5]、独自製品『カイテキオリゴ』を発売した。北海道産てんさいを原料とする食用オリゴ糖で[6]、便通改善を訴求する健康食品として企画された。『カイテキオリゴ』は北の達人が商品設計から関与する初の独自開発製品であり、仕入れ販売型ECから独自ブランドメーカーへの転換点となる製品である。SEO主体の集客手法は継承しつつ、商品カテゴリーを健康食品の独自開発製品へ絞り込んだ。
2009年3月、商号を『株式会社北の達人コーポレーション』[引用元]に変更[7]した。社名から『北海道』『シーオー・ジェイピー』というEC事業者を想起させる旧名称を外し、独自製品を持つメーカー型D2C事業者としての位置付けを明確化した社名変更である。同時に物産系3サイト(北海道・シーオー・ジェイピー、北海道わけあり市場、わけありグルメニュース)の運営も継続しつつ、収益の主軸はカイテキオリゴへ移行する構造へ変わった。
2011年2月には、健康食品事業への[8]集中を目的に北海道物産品販売3サイトを0.1億円で売却した。[9]FY2010に『事業譲渡益』として1,106万円を計上し[10]、わけあり物産ECからの完全撤退を完了させた。創業から9年を経て、北海道のローカル特産品ECから北海道産原料を使った独自開発健康食品のメーカー型D2Cへ、事業構造を入れ替える判断である。創業以来の『北海道』というブランド軸は維持しつつ、商品カテゴリーと事業モデルを組み替えた経緯だった。
2012年5月、北の達人は札幌証券取引所アンビシャス市場[11]に株式上場を果たした。創業から10年での上場であり[12]、取り扱い商品はわずか5つ(うちカイテキオリゴが売上の大半)という構成だった。[13]当時のIPO市場では、商品ラインナップが極端に絞られた『単品集中』型のD2C企業はまれであり、注目を集めた上場銘柄となった。札証アンビシャスはスタートアップ・新興企業向けの市場であり、ローカル拠点を持つ新興D2C事業者にとって資本市場との接点を確保する場となった。
上場後の北の達人は、カイテキオリゴ単品依存からの脱却を進めるため、新製品の『専売サイト』を積極的に開設する方針を採用した。専売サイトとは、1製品ごとに独立したランディングページとECサイトを構築し、商品ごとに最適化したマーケティングを展開する手法である。複数製品を1つのECサイトに並べる従来型と異なり、専売サイトは商品コンセプトに沿った訴求が可能で、SEOと広告の両面でコンバージョン率を高めやすい。『びっくりするほど良い商品ができた時にしか発売しない』[引用元]という木下勝寿社長の商品開発哲学のもと[14]、新製品の出荷ペースは年1〜2本程度に絞られ、各製品が独立したヒット商品候補として育成される構造が出来上がった。
2014年2月期の売上高は17.8億円、営業利益3.88億円(営業利益率21.8%)に達した。商品ラインナップを絞り込んで1製品ごとの収益性を高める『単品集中』型のD2C事業モデルが、上場後2年で利益率20%台という収益構造として実体化した時期である。
2015年11月、北の達人は『アイキララ』の専売サイトを開設した[15]。アイキララは目元のクマ・たるみ向けのアイクリームで、同社のスキンケアブランドとしての本格展開のスタート製品である。健康食品(カイテキオリゴ)に続く第2の柱として、化粧品・スキンケアという新カテゴリーへ事業領域を広げた。アイキララは発売直後から年商7億円規模のヒット商品に成長し[16]、カイテキオリゴ単品依存の収益構造からの脱却に貢献した。
2016年には『ヒアロディープパッチ』を発売[17]した。マイクロニードル技術を採用した目元用シートで、化粧品業界では新カテゴリーの製品だった。発売後の数年で2019年までの累計売上は42億円(年間推定10[18]〜20億円)に達した。1つの製品で年商10億円超のヒットを単品サイトで成立させる事業構造が、ヒアロディープパッチの売上推移によって実証された格好である。
2017年2月にはSNS向け広告への積極投資を開始し[19]、Twitter・Facebook・Instagramという当時急成長中のプラットフォームへ広告出稿を集中させた。同時にWeb広告の運用を内製化する方針を採用し、代理店への支払手数料を削減した。Web広告運用の内製化は、商品開発からマーケティングまでを1社内で完結させる垂直統合のD2Cモデルを完成させる判断であり、後の利益率向上の主要因となった。
2017年から2018年にかけて、北の達人は計3回(2017年3月・10月、2018年1月)の株式分割を実施し[20]、流動性向上を図った。2018年2月期は前年比2.6倍の増配、2019年2月期も約64%の増配を予定するなど[21]、株主還元を急加速させた。連続増配によって個人投資家からの注目も高まり、株式分割と相まって出来高が増加した。2020年2月期にはDOE(株主資本配当率)3年平均が『NEXT1000中堅上場企業3位』[引用元]の評価を獲得するなど、株主還元面でも実績を積み上げた。
業績面でもこの時期は急成長期だった。FY17(2018年2月期)の売上高は52.9億円、営業利益14.0億円(営業利益率26.5%)、FY18(2019年2月期)の売上高は83.1億円、営業利益18.6億円(営業利益率22.4%)、FY19(2020年2月期)の売上高は100.9億円、営業利益29.2億円(営業利益率28.9%)と、3年で売上が約2倍・営業利益が約2倍に拡大した。営業利益率は20%台後半を維持し、単品集中型D2Cが利益率の高さと売上成長の両方を実現できる事業モデルだという実例となった。
2018年4月には社員給与のベースアップを実施し、上場時の平均年収357万円からFY18時点で546[22]万円へ引き上げた。創業期の低人件費体質から、利益率を維持しつつ報酬水準を市場並みに引き上げる構造への移行である。2019年7月には刺す化粧品『ミケンディープパッチ』を発売し[23]、ヒアロディープパッチに続くマイクロニードル技術の応用製品として年商数十億円規模に成長した。
2018年2月、北の達人は競合の『はぐくみプラス』社を提訴した[24]。同社が提供する『はぐくみオリゴ』と北の達人の『カイテキオリゴ』の比較広告で、虚偽事実が記載されたとして不正競争防止法違反を主張する内容である。当初の損害賠償請求額は1億円、2020年には11[25]億円に修正された。
2022年の判決で知的財産高等裁判所は、不正競争防止法5条2項に基づき、はぐくみプラス社に対して6,830万円の賠償命令を下した[26]。判決に対して上告手続きはされず、判決が確定した。FY22にはこの勝訴を受けて『受取損害賠償金』を特別利益として8,226万円計上した[27]。D2C事業者間の知財紛争を司法で決着させた事例であり、商品比較広告の不当表示に対する判例として業界内に影響を残した。一方で、競合参入と模倣商品の出現は、単品集中型D2Cの事業構造で避けにくい現象でもあり、知財管理と司法的対応の重要性を示す経緯となった。
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| 2002〜2014年北海道わけあり物産ECからオリゴ糖専売サイトへの軸足転換 | 木下勝寿 | 北海道・シーオー・ジェイピーを設立 | ★ | |
| 木下勝寿 | 本社を移転 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 本社を移転 | ★ | ||
| 木下勝寿 | わけあり物産ECからの撤退と、独自開発「カイテキオリゴ」を軸とするメーカー型D2Cへの転換 2007年7月に自社開発の食用オリゴ糖『カイテキオリゴ』を発売し、北海道の規格外品を扱う『わけあり』特産品ECから、独自製品を持つメーカー型D2Cへ事業構造を転換した経緯である。2009年に商号を変更し、2011年には北海道物産品販売3サイトを売却して物産ECから撤退、2012年に札幌証券取引所アンビシャス市場へ上場した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 木下勝寿 | 商号を北の達人コーポレーションに変更 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 本社を移転 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 北海道特産品販売サイトを売却 | ★★ | ||
| 木下勝寿 | 札幌証券取引所アンビシャス市場に上場 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 札幌証券取引所本則市場に指定替え | ★ | ||
| 木下勝寿 | 東京証券取引所市場第二部に上場 | ★ | ||
| 2015〜2020年「アイキララ」「ヒアロディープパッチ」のヒットによる急成長期 | 木下勝寿 | 東京証券取引所市場第一部に指定 | ★ | |
| 木下勝寿 | 台湾支社を開設 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 韓国連絡事務所を開設 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 本社を移転 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 東京支社を開設 | ★ | ||
| 2021〜2025年業績低迷からの「チームX」改革とV字回復、その後の選択と集中 | 木下勝寿 | 監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行 | ★ | |
| 木下勝寿 | ASHIGARUを子会社化 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 所属業種を食料品から化学に変更 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 東京支社を移転し東京本社に商号変更、札幌本社との2本社制に移行 | ★ | ||
| 木下勝寿 | エフエム・ノースウエーブがFM NORTH WAVEに商号変更 | ★ | ||
| 木下勝寿 | 広告運用の効率偏重の見直しとクリエイティブ多様化、「チームX」による組織再建 2016年からの4年間でWeb広告を軸に売上を約5倍へ伸ばした北の達人コーポレーションは、2021年2月期に上場後初の減収減益へ転じた。広告運用の効率追求が同じような広告を増やし、新規顧客の開拓を細らせたためである。2023年、木下勝寿社長は広告クリエイティブの多様化と組織の作り直しを軸とする全社的な立て直しに着手し、その過程を同年11月に『チームX』として公表した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 木下勝寿 | FM NORTH WAVEの全株式を譲渡し連結の範囲から除外 | ★ |
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事実根拠:出所(北の達人コーポレーション)