3COINSのリブランドと大型店化による「脱・純300円」の再成長

頭打ちの300円雑貨を、アパレルの型で作り替える——何を変えれば雑貨は伸びるのか

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時期 2019年2月
意思決定者 井上英隆氏・井上隆太(社長) 会長
論点 雑貨事業の再成長と業態転換
概要
2018年ごろに店舗数200前後・売上約250億円で頭打ちだった300円雑貨店「3COINS」を、パルグループHDがアパレルで磨いた売り場運営の型で作り替えた経営判断。店舗の大型化と食品も扱う「3COINS+plus」への転換、300円超商品の導入、毎週の新商品投入で、単体売上を数年で2倍超へ伸ばした。
背景
3COINSは1994年に始まった300円均一の雑貨店だが、2018年以降は店舗数が伸び悩んだ。ピンクや水色のカラフルな雑貨やキャラクターとのコラボが中心で、女性受けを狙う品ぞろえのまま、拡大の踊り場に入っていた。
内容
標準店舗を約165平方メートルから約330〜500平方メートルへ大型化し、食品を扱う「3COINS+plus」を出店の主軸に据えた。従来はほぼ300円だった商品に、デバイス関連など数千円の品を加え、アパレル由来の「4週間MD」で毎週新商品を投入して売り場の鮮度を保った。
含意
3COINS単体の売上は2023年2月期に489億円、2024年2月期には630億円規模へ拡大し、雑貨部門はパルグループHD全体の売上の約4割を占める屋台骨となった。「衣」で創業した会社が「住」の雑貨で伸びる、事業構成の転換を象徴する。
筆者の見解

アパレルの型を、雑貨に移す

この判断の核心は、雑貨事業の不振を、商品そのものの問題ではなく売り場の運営の問題として捉え直した点にある。多くの雑貨店は、安さや品ぞろえの珍しさで客を引こうとする。パルグループHDは逆に、アパレルで鍛えた売り場運営——短いサイクルで商品を入れ替え、鮮度で来店頻度を上げる型——を、そのまま雑貨へ移植した。大型店化で器を広げ、300円超の商品で客単価を取り、4週間MDで毎週の新しさを保つ。三つの手はいずれも、衣料で日常的にやってきたことの応用だった。

3COINSの再成長は、既存の資産をどう組み替えるかで事業が伸びうることを示している。パルは新しい業態をゼロから発明したのではなく、アパレルで持っていた運営技術という資産を、頭打ちの雑貨事業に載せ替えた。同じ会社の別の事業で磨いた強みを、伸び悩む事業へ移せるか否か。多くの多角化企業が、事業ごとに縦割りで運営を閉じてしまうなか、パルグループHDは事業をまたいで型を移す形で、雑貨を「衣」に並ぶ柱へ育てた。何を変えれば伸びるのか——その答えを、商品ではなく運営に見た判断だったと言える。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

1994年に生まれた300円雑貨の踊り場

3COINSは、アパレルのパルが1994年に大阪・茶屋町へ出した300円均一の雑貨店である。衣料で創業した会社が「住」の生活雑貨へ広げた多角化の一手だった。だが2018年以降、その3COINSは伸び悩んだ。店舗数は200前後で頭打ちとなり、売上も約250億円にとどまった。品ぞろえは、ピンクや水色のカラフルな雑貨や、キャラクターとのコラボグッズを前面に出す、女性受けを狙った商品が中心のままで、拡大の踊り場に入っていた[1]

この踊り場を抜ける鍵を、パルグループHDは自社の本業に見た。アパレルで日々鍛えてきたのは、売れ筋を素早く入れ替えて売り場の鮮度を保つ運営である。定番を並べて回転の鈍った雑貨店に、この衣料の型を持ち込めば、来店の頻度も客単価も変えられる。300円という価格の枠と、女性向けの色物に寄った品ぞろえを、いったん問い直す。パルグループHDは、雑貨を衣料の隣に置く事業ではなく、衣料の運営技術で伸ばす事業として捉え直した[2]

決断

大型店化と「脱・純300円」

井上英隆会長のもとで、3COINSはまず店の大きさから変えた。2018年ごろまで約165平方メートルが標準だった店舗を、約330〜500平方メートルへ大型化し、食品も扱う大型店「3COINS+plus」を出店の主軸へ据えた。売り場が広がれば置ける品目が増え、生活雑貨から食品まで一つの店で買い回れる。小さな300円雑貨店の集合から、日常の買い物先として立ち寄れる規模の店へ。器を大きくすることが、品ぞろえと来店動機を広げる前提になった[3]

価格の枠も外した。店名の由来である300円均一にこだわらず、スマートフォン関連などのデバイス商品をはじめ、数千円の品を並べるようにした。300円の雑貨だけでは客単価に天井があり、粗利も薄い。実用性が高く単価も取れる商品を加えることで、一人あたりの買い上げ額と利益率を押し上げた。安さの記号だった「300円」を看板に残しつつ、中身は300円に縛られない品ぞろえへと、3COINSは静かに脱皮した[4]

4週間MDで売り場に鮮度を持ち込む

器と価格に加えて、パルグループHDは売り場の回し方を変えた。アパレルで使う「4週間MD」を3COINSに導入し、商品の入れ替えを速めて、ほぼ毎週新商品を投入する運営へ切り替えた。定番を長く置くのではなく、1カ月で売り切る前提で企画し、来るたびに新しい品が並ぶ状態を保つ。行くたびに何か見つかるという鮮度が、来店の頻度そのものを引き上げる。衣料で培った短サイクルの商品回転を、雑貨の売り場に移植した[5]

結果

グループの屋台骨へ

作り替えは数字に表れた。3COINS単体の売上高は2023年2月期に489億円と前年から29%伸び、2024年2月期には630億円規模へ拡大した。店舗数は2024年8月時点で全国323店に増え、その約7割を大型店「3COINS+plus」が占めた。200前後で頭打ちだった店舗網と250億円で止まっていた売上は、数年でともに倍前後へ切り上がった。300円雑貨の集合体が、日常の買い物先として通える規模のチェーンへ姿を変えた[6]

3COINSの伸びは、パルグループHD全体の姿を変えた。雑貨部門はグループ売上の約4割を占めるまでになり、ジーンズショップで創業した会社の主力が「衣」から「住」の生活雑貨へ移った。グループ連結の売上高も2019年2月期の1,305億円から伸び続け、2025年2月期には2,078億円へ達した。アパレル不振が語られる時代に、パルグループHDは自社のアパレル運営の技術を雑貨へ移すことで、成長の柱を作り替えた[7]

出典・参考