アロカの全株式取得(2026年・東陽テクニカの決断)

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東陽テクニカ:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
計測器商社による放射線測定装置メーカーの取得と新事業領域の獲得2026年10月29日、東陽テクニカは取締役会で、放射線測定装置の製造・販売・保守を営むアロカの全株式を取得し、子会社化することを決めた。同じ日に株式譲渡契約を締結した。売り手はアロカの株式の100.0%を保有する投資ファンドのNMC四号投資事業有限責任組合で、取得する100株で議決権所有割合は100.0%となる。

何をなぜ決めたか:計測器商社による放射線測定装置メーカーの取得と新事業領域の獲得

概要

2026年10月29日、東陽テクニカは取締役会で、放射線測定装置の製造・販売・保守を営むアロカの全株式を取得し、子会社化することを決めた。同じ日に株式譲渡契約を締結した。売り手はアロカの株式の100.0%を保有する投資ファンドのNMC四号投資事業有限責任組合で、取得する100株で議決権所有割合は100.0%となる。

取得価額は相手先の意向で開示されておらず、株式譲渡の実行後に改めて開示される。譲渡の実行は2026年11月18日の予定で、アロカは2027年9月期第1四半期中に連結子会社となる見込みである。業績への影響は精査中で、2026年11月11日に公表する2027年9月期の連結業績予想に反映する。決議の時点で株式の譲渡はまだ済んでいない。

背景

東陽テクニカは1953年9月に工作機械の輸入販売会社として設立され、1955年1月に英国EMI FACTORIESと総代理店契約を締結して電子計測器の分野に進出した。2023年3月にレキシー、2023年11月にRototest International AB、2024年1月にトーキンEMCエンジニアリング、2024年3月にエル・テールを子会社化した。取得原価はレキシーが400百万円、Rototestが1,463百万円、トーキンEMCが460百万円、エル・テールが330百万円で、いずれも既存の事業分野を補う案件だった。

2024年11月に発表した中期経営計画“TY2027”は、最終年度の2027年9月期に連結売上高450億円(新規M&Aを含め500億円以上)、連結営業利益45億円、ROE11.0%を掲げた。営業キャッシュ・フローと資産売却・銀行借入で得た資金の50%以上を、M&Aを含む成長投資に充てる方針である。初年度の2025年9月期は大型案件の売上計上が期ずれし、連結売上高は32,559百万円(前期比7.1%減)、うち海外売上高は1,672百万円にとどまった。

内容

アロカは東京都武蔵野市に本店を置き、官公庁・自治体・医療機関・研究機関を主な顧客とする放射線測定装置の専門メーカーである。創業は1950年で、現在の会社は2021年11月18日に設立され、2024年1月1日に親会社だったSPC(特別目的会社)を吸収合併した。東陽テクニカとの間に資本関係・人的関係・取引関係はない。

2025年12月期の売上高は7,936百万円、営業利益は948百万円、当期純利益は587百万円で、2023年12月期から2期続けて増収増益となった。同期末の総資産は6,699百万円、純資産は1,818百万円である。取得の理由には、原子力発電施設の安全管理、医療・核医学での放射線利用、防衛・国土安全保障での放射線検知、法令に基づく点検・校正・更新の需要を挙げた。

含意

取得によりアロカはグループで最も事業規模の大きい子会社となり、TY2027の新規事業の獲得、自社開発製品とリカーリングビジネスの推進、海外事業の拡大に寄与すると位置づけた。アロカの2025年12月期の売上高7,936百万円は、東陽テクニカの2025年9月期の連結売上高32,559百万円の約24%にあたる。今後はアロカ製品の海外展開、放射線を使う次世代のがん治療、核融合発電施設向けの新製品の開発を目指す。

一方、取得価額が開示されていないため、発生するのれんの額と投資の回収はまだ見積もれない。2025年9月期末の東陽テクニカののれんは1,482百万円だった。決算期の違う2社の売上高を単純に合算しても約405億円で、新規M&Aを含めて500億円以上とするTY2027の目標にはなお開きがある。同じ2026年、同業の加賀電子は電子部品商社の新光商事に公開買付けを実施し、8月10日に議決権の72.45%を取得した。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:代理店から製造元へ

この決断は、海外の計測器を輸入して販売してきた商社が、収益の源泉を自ら製造する製品へ移すかという問いへの答えである。東陽テクニカは1955年に英国EMIと総代理店契約を締結して以来、他社の製品を販売する事業で成長してきた。今回は売上高7,936百万円の放射線測定装置メーカーを取得し、製造と保守をグループの内側に置く。取得価額は開示されておらず、2026年11月18日の株式譲渡もまだ実行されていない。判断の当否は、価額とのれんが開示されてから測ることになる。

2023年からの買収が、この決断の前段にあたる。2016年に代理店契約を締結して販売してきたRototestのシャシダイナモメーターは、2023年11月に同社を1,463百万円で子会社化したことで自社製品になった。2024年にはトーキンEMCエンジニアリングとエル・テールを取得し、EMCと燃料電池評価という既存の分野を補強した。4件の取得原価は合計で約2,653百万円にとどまる。アロカは資本・人的・取引関係のいずれも無い会社であり、買収の性格は既存分野の補強から新しい事業領域の取得へ変わった。

同じ2026年、同業の加賀電子は電子部品商社の新光商事に公開買付けを実施し、8月10日に議決権の72.45%を取得した。商社が商社を取得し、販売の規模を広げる方式である。東陽テクニカは同じ年に、販売ではなく製造の機能を持つ会社を投資ファンドから相対で取得した。違いの理由は、TY2027が掲げる自社開発製品とリカーリングビジネスの推進にあると思われる。販売の規模を足す買収では、他社の製品を扱う事業の構造は変わらない。点検・校正・更新の需要を持つ放射線測定装置は、保守の収益を継続して生む事業である。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

数字で見る

東陽テクニカ:連結売上高と営業利益の推移

東陽テクニカ:連結売上高と営業利益の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)

2025年9月期の連結売上高は326億円で、TY2027の目標450億円を下回る

東陽テクニカ:連結売上高と営業利益の推移
(百万円)売上高営業利益備考
2022年9月期26,4902,333
2023年9月期28,1731,4723月にレキシーを子会社化
2024年9月期35,0433,366Rototest・トーキンEMC・エル・テールを子会社化
2025年9月期32,5591,915TY2027の初年度。大型案件の売上計上が期ずれ
出所:東陽テクニカ 有価証券報告書 第71期〜第73期(連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)
出所:東陽テクニカ 有価証券報告書 第71期〜第73期(連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)
東陽テクニカ:のれんと無形固定資産の推移

東陽テクニカ:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

決議前の2025年9月期末ののれんは15億円で、総資産の4%弱

東陽テクニカ:のれんと無形固定資産の推移
(百万円)のれん無形固定資産合計総資産備考
2022年9月期9394841,593
2023年9月期2681,23739,955
2024年9月期1,5622,54839,134Rototestの取得でのれん1,220を計上
2025年9月期1,4832,38739,937取得を決める前の期末
出所:東陽テクニカ 有価証券報告書 第71期〜第73期(連結貸借対照表)
出所:東陽テクニカ 有価証券報告書 第71期〜第73期(連結貸借対照表)
当時の取締役8名

取締役8名(2025年12月株主総会決議)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務高野俊也取締役:代表取締役社長執行役員業務執行:担当:
小野寺充取締役:取締役常務執行役員業務執行:担当:
今泉良通取締役:取締役上席執行役員業務執行:担当:
松井俊明商社取締役:取締役上席執行役員業務執行:担当:
木内健雄取締役:取締役上席執行役員業務執行:担当:
独立役員須加深雪取締役:取締役業務執行:担当:
西勝也取締役:取締役業務執行:担当:
依田智樹商社取締役:取締役業務執行:担当:
この一覧は2025年12月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • 東陽テクニカ 有価証券報告書 第73期(2025年9月期)【沿革】
  • 東陽テクニカ 有価証券報告書 第73期(2025年9月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【沿革】
  • 東陽テクニカ 有価証券報告書 第73期(2025年9月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 東陽テクニカ 有価証券報告書 第73期(2025年9月期)【連結貸借対照表】
  • 加賀電子 臨時報告書(2026年8月4日提出)【提出理由】【報告内容】
  • 東陽テクニカ 有価証券報告書 第73期(2025年9月期)【沿革】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • 東陽テクニカ 有価証券報告書 第71期〜第73期(連結損益計算書・主要な経営指標等の推移)
  • 東陽テクニカ 有価証券報告書 第71期〜第73期(連結貸借対照表)
  • 東陽テクニカ 適時開示「アロカ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
  • 東陽テクニカ 臨時報告書「臨時報告書(子会社取得の決定)」
  • 東陽テクニカ 有価証券報告書「第73期(2025年9月期)【沿革】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【連結貸借対照表】」
  • 東陽テクニカ 有価証券報告書「第72期(2024年9月期)【注記事項】(企業結合等関係)」
  • 東陽テクニカ 有価証券報告書「第71期(2023年9月期)【経営上の重要な契約等】【注記事項】(企業結合等関係)」

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