この判断の核心は、まったく新しい技術を起こしたのではなく、医学用に磨いた分析計の速さを別の対象へ転じた点にある。呼気ガスの分析で得た0.1秒の応答が、運転条件で変わる排ガスの測定にそのまま生きた。自社でセンサーを持ち、周辺は外に委ねるという堀場の分業が、対象を医学から自動車へ移す身軽さを支えただろう。持てる技術をどの市場へ向けるかという問いに、この事業化は一つの答えを示している。
事業化の時点では、排ガス規制の強まりも需要の広がりも見通せてはいなかった。市場調査を兼ねた展示から始め、中古エンジンを持ち込んで批判を仰ぎながら装置を鍛えた過程には、需要を確かめてから量産へ向かう慎重さがうかがえる。やがて規制が追い風となり、装置は生産ラインの検査設備へと育った。技術の転用と規制の到来が重なったこの製品は、堀場が後年まで自動車計測を主力に据える出発点となった。