海外の機関投資家向けのディスクロージャーを想定

海外の機関投資家向けのディスクロージャーを想定
1980年代を通じてIRを行う企業はソニーなどごく一部だったが、1989年になると伊藤忠商事などの大企業も相次いでIRを開始。加えて、インサイダー取引の規制強化、三菱銀行のNY上場、バブルによる株価高騰を受けて、鶴野史朗氏は1989年に「IR元年」を宣言した
IRジャパンはIRの先駆者であったが、バブル崩壊による株価の低迷や、IRに意義を見出さない企業があり、IRの普及が多難な状況に陥った。IRジャパンの業績も悪化し「経営は危機的状況」(2016/6企業診断)だったという。(推察だが、競争面ではアニュアルレポートの作成は単純作業であるため参入障壁を構築できず、収益も伸び悩んだと思われる)
IRジャパンは、従来のIR支援に加えて、株主の判明調査に本格参入した。米国で普及していた判明調査のビジネスを参考に、日本国内で信託銀行が管理する株主について、実質的な所有者を明らかにするサービスを展開。(調査は足や電話で稼ぐスタイルと推察される)
株主判明調査を生かす形で、株主による議決権行使の支援ビジネスを開始。最初の顧客はソニーであり、外国人株主の判明調査を依頼されたという。以後、IRジャパンは「上場企業のIR支援」から「上場企業の議決支援」へとビジネスを大きく転換した
日本企業の株式を保有する海外機関投資家増加を受けて、ニューヨークに拠点を新設。海外投資家の動向調査を本格化
2000年代を通じて海外機関投資家が日本企業の株式を保有し、TOBを仕掛けることが定着した。これに対して、IRジャパンHDは上場企業における買収防衛を支援する姿勢を見せ、敵対的買収の監視サービスを開始する。(私見だが、資本市場の自由の原則から逆行する打ち手に見え、心象は悪い)
2005年に第一製薬と三共は経営統合の方針を発表するが、一部の株主(村上ファンド)が統合に反対。これを受けて、IRジャパンは第一三共側とプロキシーファイトに関するアドバイザリー契約を締結して村上ファンドと対立。結果として第一三共の経営統合を成立させた。以後、IRジャパンはアドバイザリー業務を徐々に拡大
寺下史郎氏は旧アイ・アールジャパンの株式をMBOによって取得することを目的とし、アイ・アールジャパンHDを設立(なお、寺下氏と、創業者の鶴野氏との関係の温度感は不明であり、温和なMBOだったのか、それとも確執を伴うMBOであったのかは窺い知れない)
FY2010の有価証券報告書において、アイアールジャパンは「上場企業の買収防衛策に対する支援の強化」という方針を公表した。(以下、私見だが、この選択は資本市場の自由化を重視する機関投資家を敵に回す行為と言える。すなわち、IRジャパンと機関投資家における関係性の瓦解を意味する)
新国際ビルに拠点を設置。敵対的買収を避けたい日本企業に対するアドバイザーリーを本格化。これらの案件は「大型案件(5000万円〜)」と位置付けられ、丸の内に設置した投資銀行部門が担当。以後、IRジャパンHDは大型案件の受注によって業容を拡大するが、これらの案件に継続性はなく、業績予想の精度が低下するデメリットを被った
当時のIRジャパンの副社長A氏は、アジア開発キャピタルと接触(東京機械製作所の買収アドバイスを行った可能性について「ダイヤモンオンライン(2022/6/6及び2022/6/18)」が報道)
アジア開発キャピタルによる東京機械製作所の買収について、東京機械製作所と買収防衛のアドバイザリー業務を締結(ここに利益相反が成立した疑いがあったと推察される。2022年11月にIRジャパンHDは本件に関する調査委員会を発足)
金融商品取引法における違反の疑い
証券代行業務を強化。アクティビスト・敵対的TOBを受けた上場企業に対して、アドバイザーを務める立場を明確化(この結果、アクティビストとの対立が、より一層深刻化したと推察)
5000万円以上の大型案件の成約失敗により、大幅な業績予想の下方修正を発表。FY2021の通期業績予想の売上高120億円に対して、FY2021の修正後予想売上高84億円(FY2021の実績売上高は84.02億円)。業績予想の大幅な悪化を受けて、役員報酬の減額を決定
2022年11月に週間ダイヤモンドは東京機械製作所に対する問題をスクープ。IRジャパンは東京機械に買収防衛策をアドバイスする一方、東京機械の株式取得を狙うアジア開発キャピタルのアドバイスも兼任していた疑いがあることを公表した。これを受けてIRジャパンは第三者委員会を設置(インサイダー取引に続く第三者員会の設置であり、信頼を喪失。同社の株価は暴落へ)
IRジャパンは不祥事により顧客からの信頼を喪失。5000万円以上の大型案件について、FY2021上期の売上高16.9億円から、FY2022同売上高4.1億円に激減した。一方、株主判明調査などの通常案件の収益は安定しており、業績を下支え
後任の代表取締役社長に北村雄一郎氏が就任。寺下史郎氏は代表権のない取締役に就任。CEOの役職は消滅。また、古田温子氏が常務取締役企画本部長兼エクイティ・コンサルティング統括本部長を辞任。組織における大規模な異動が発生
インサイダー取引の疑い