マツキヨココカラ&カンパニー ココカラファインと統合 株式交換による統合と、売上1兆円・3,000店舗という目標

更新:

時期 2020年1月
当時の社長 松本清雄
論点 業界再編と規模の獲得
何をなぜ決めたか
概要

2021年10月1日、マツモトキヨシHDがココカラファインを株式交換で完全子会社化し、商号を株式会社マツキヨココカラ&カンパニーへ改めた経営統合。ココカラ株1株にマツキヨHD株1.70株を割り当て、40,854,516株を交付した。取得原価は2,550億円。同じ日に会社分割を重ね、純粋持株会社の下に両グループの中間持株会社と、仕入・PB企画・販促・店舗開発を集めたシナジー創出会社MCCマネジメントを置く体制へ移した。

背景

業種・業態を越えた競合企業の新規出店、商勢圏拡大に向けた新たなエリアへの出店、M&Aによる規模拡大、同質化する異業種との競争、それらが要因となる狭小商圏化。統合の理由の冒頭に置いたのはこの経営環境である。ドラッグストア・調剤薬局業界の大変革期を飛躍の成長機会と捉え、競争優位を保って生き残るための統合だと自ら位置づけた。売上高1兆円・3,000店舗を持つ社会・生活のインフラ企業となり、その先で美と健康の分野のアジアNo.1をめざすことが、統合で掲げた到達点だった。

内容

2020年1月31日に経営統合の基本合意書と資本業務提携契約を締結し、統合方式は共同株式移転による持株会社の設立を基本方針とした。3月31日には第三者割当増資でココカラ株を1株6,460円・総額383億円で引き受け、議決権の20.04%を持つ持分法適用関連会社とした。2021年2月26日の経営統合契約で株式交換に決め、10月1日に残る79.95%を取得した。株式を持ち合う段階から商品政策の統一は先行し、2020年10月に棚割と品揃えを揃え、統合日に仕入先を一本化して共同開発体制へ移した。

含意

統合で見込んだ収益改善効果は、統合後3年目を目処に両社合算の連結ベースで営業利益300億円規模。うち初年度にあたる2021年10月から2022年9月までで約200億円を見込んだ。取得原価2,550億円のうち1,195億円はのれんとなり、19年の均等償却で毎期およそ63億円を利益から引く。連結売上高は統合初年度の2022年3月期7,300億円から2024年3月期の1兆225億円へ伸び、2025年3月期にはシナジー300億円・連結営業利益率7%以上・ROE10%以上をいずれも達成したと公表した。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
筆者の見解

買収された側に残っていた伸びしろ

売上高1兆円という数字は、競争優位を保って生き残る条件として掲げられたものであると同時に、単独の出店ではもう届かないという宣言でもあったのだろう。商圏の狭いドラッグストアで、同質化した異業種が同じ商品を売り始めたとき、店を増やし合う競争を続ける意味は薄れていく。マツモトキヨシHDは相手を丸ごと取り込む道を選び、その代価を現金ではなく自社株で払った。既存株主の持ち分を薄めてでも規模を取るという判断だが、統合後の株主にココカラ側を迎え入れることで、統合の摩擦を和らげる狙いもあったと思われる。買収の巧拙が問われる場は、価格の交渉から統合後の設計へ移っていた。

もっとも、掲げた営業利益300億円を3年後に達成したと自ら公表できた統合は、そう多くないだろう。ただ、その達成をマツモトキヨシHDの手腕とだけ読むのは早いように思われる。統合前と比べた営業利益率の改善幅は、買った側より買われた側に大きい。効いたのは持ち込んだ仕組みそのものというより、ココカラに残っていた伸びしろだったのではないか。だとすれば、次に置いた1.5兆円という目標には別の難しさがついてまわる。同じ手を二度使うには、同じだけ伸びしろの残った相手が要る。規模を先に取る戦い方は、買える相手がいるあいだしか続かないのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
経営統合の条件

経営統合の条件

科目 概要 備考
被取得企業 株式会社ココカラファイン ドラッグストア事業・調剤事業・介護事業を営む企業グループ
被取得企業の商号変更 株式会社ココカラファイングループ 2021年10月1日付
経営統合で掲げた規模 国内で売上高1兆円・3,000店舗 社会・生活のインフラ企業となる。第13期の基本合意時から同じ文言
見込んだ統合シナジー 統合後3年目を目処に営業利益300億円規模 両社合算の連結ベース。うち初年度の2021年10月〜2022年9月で約200億円
統合会社のグループ経営目標 売上高1.5兆円・営業利益率7.0% 2025年度(2026年3月期)。美と健康の分野でアジアNo.1のドラッグストアとなる
基本合意時の統合方式 共同株式移転による持株会社の設立を基本方針 2020年1月31日の基本合意書。最終契約までに方式を決めるとした
統合に先立つ資本提携 第三者割当増資で6,006,908株・議決権20.04% 2020年3月31日に1株6,460円・総額38,369百万円で取得。持分法適用関連会社
企業結合の法的形式 株式交換 マツモトキヨシHDが完全親会社、ココカラファインが完全子会社
企業結合日 2021年10月1日 株式交換契約の締結は2021年2月26日、株主総会の承認は2021年6月29日
同日に実施した会社分割 新設分割・吸収分割 2021年4月28日の取締役会で決議し、6月29日の株主総会で承認
ココカラファイン株式の上場廃止日 2021年9月29日 東京証券取引所市場第一部。最終売買日は2021年9月28日
株式交換比率 1:1.70 第三者算定機関は大和証券と三菱UFJモルガン・スタンレー証券
交換比率の算定レンジ 大和証券1.54〜2.01、三菱UFJ側1.21〜2.02 市場株価法・類似会社比較法・DCF法の全レンジ。両社ともフェアネス・オピニオンを取得
法務アドバイザー アンダーソン・毛利・友常法律事務所と野村綜合法律事務所 前者がマツモトキヨシHD、後者がココカラファイン
交付した株式数 40,854,516株 マツモトキヨシHDの普通株式。統合前の説明会資料での予定数は40,795,416株
取得原価 255,031百万円 内訳は保有株式の時価48,716百万円と交付株式の時価206,315百万円
取得した議決権比率 100.0% 企業結合直前に所有していた議決権比率は20.05%、企業結合日に追加取得した議決権比率は79.95%
取得企業 株式会社マツモトキヨシホールディングス 決定の根拠は、同社が株式を対価としてココカラファインの全株式を取得したことによる
結合後企業の名称 株式会社マツキヨココカラ&カンパニー 旧商号は株式会社マツモトキヨシホールディングス
統合会社の代表者 会長 松本南海雄、社長 松本清雄、副社長 塚本厚志 副社長の塚本厚志はココカラファインの社長
統合会社の役員構成 取締役15名(うち社外6名)、監査役4名(うち社外3名) 取締役はマツキヨHD10名・ココカラ5名、監査役はマツキヨHD3名・ココカラ1名
統合後のグループ体制 統合会社・中間持株会社2社・事業会社・シナジー創出会社 シナジー創出会社はMCCマネジメント。仕入・PB企画・販促・店舗開発を集約
主要な取得関連費用 208百万円 アドバイザリー費用等
段階取得に係る差益 10,618百万円 被取得企業の取得原価と、取得するに至った取引ごとの取得原価の合計額との差額
のれん 119,500百万円 発生原因は今後の事業展開により期待される超過収益力。19年間の均等償却
暫定的な会計処理の確定 なし 第16期の【企業結合等関係】は「該当事項はありません」
のれん以外の無形固定資産に配分した金額 18,009百万円 種類は商標権。償却期間は19年
受け入れた資産 206,650百万円 内訳は流動資産119,144百万円、固定資産87,506百万円
引き受けた負債 71,119百万円 内訳は流動負債55,752百万円、固定負債15,367百万円
連結財務諸表に含めた被取得企業の業績の期間 2021年10月1日から2022年3月31日まで
通期換算した売上高への影響額 181,790百万円 企業結合が期首に完了したと仮定した概算額。監査証明を受けていない
通期換算した営業利益への影響額 1,675百万円 経常利益は2,621百万円、税金等調整前当期純利益は△754百万円
通期換算した当期純利益への影響額 △3,122百万円 親会社株主に帰属する額。1株当たり当期純利益は△25.56円

出所:マツキヨココカラ&カンパニー 有価証券報告書 第15期(2022年3月期)【企業結合等関係】。統合前の3行は第13期・第14期【経営上の重要な契約等】。シナジー目標・経営目標・体制・役員構成・算定レンジ・アドバイザーの6行はマツモトキヨシホールディングスとココカラファインの2021年3月期決算説明会資料

のれんと無形固定資産の推移

マツキヨココカラ&カンパニー:のれんと無形固定資産の推移

(百万円) のれん無形固定資産合計総資産 備考
2017年3月期 7,81711,977285,733
2018年3月期 6,67710,998314,178 第11期有報では総資産315,161。税効果会計基準一部改正の適用で983減
2019年3月期 5,7569,903318,324
2020年3月期 4,8709,403351,809
2021年3月期 4,0298,891368,936 総資産は第14期有価証券報告書では368,924百万円、第15期の前期列では368,936百万円
2022年3月期 119,046143,365652,524 ココカラを完全子会社化。のれんは取得時119,500の半期償却後。総資産は第15期の656,735から遡及修正
2023年3月期 113,125137,954688,132
2024年3月期 105,737133,207724,747
2025年3月期 99,259128,036712,780
のれんと無形固定資産
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:マツキヨココカラ&カンパニー 有価証券報告書 第11期〜第18期(連結貸借対照表)

ココカラファイン事業の業績(報告セグメント)

マツキヨココカラ&カンパニー:ココカラファイン事業の業績(報告セグメント)

(百万円) 売上高セグメント利益減損損失 備考
2022年3月期 182,6215,3121,086 連結は2021年10月から。売上高・利益・減損とも6か月分で通期と比べられない
2023年3月期 375,99519,347630 通期で連結した最初の期。報告セグメント名はココカラファイングループ事業
2024年3月期 386,81821,795508
2025年3月期 390,97923,8051,744
ココカラファイングループ事業の売上高と利益率
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:マツキヨココカラ&カンパニー 有価証券報告書 第15期〜第18期(セグメント情報/報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報)

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考

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