ココカラファインを株式交換で統合し、売上1兆円のドラッグストアをつくる

2021年実施

出店で伸ばす成長が頭打ちになるなか、松本清雄社長はなぜスギとの争奪を制してまで規模の獲得を選んだか

時期 2020年1月
意思決定者 松本清雄(社長)・松本南海雄(会長)
論点 業界再編と規模の獲得
概要
2021年10月、マツモトキヨシHDがココカラファインを株式交換で完全子会社化し、商号を株式会社マツキヨココカラ&カンパニーへ改めた経営統合。ドラッグストア業界で売上1兆円規模の国内首位級の会社が生まれた。
背景
都心駅前と化粧品で築いた売り方が他社へ広がり、出店適地も細って、単独の出店で伸ばす余地は狭まっていた。業界をまたぐ再編で規模を得ることが次の課題に浮かび、ココカラファインをめぐってスギホールディングスと交渉を競った。
内容
ココカラの特別委員会が2019年8月にマツキヨを相手に選んで独占交渉権を与え、2020年1月に基本合意した。2021年2月の最終契約でココカラ1株にマツキヨHD1.70株の比率を決め、10月に株式交換で完全子会社化した。
含意
統合後3期で売上高は1兆円を超え、営業利益も4期続けて増えた。ただし松本清雄社長はPMIの進み具合を「60〜70点」と自ら採点し、物流とシステムの統合はなお時間を残した。
筆者の見解

規模を得ることと、一つに動かすこと

この判断の中身は、成熟した国内市場で単独の出店に頼るのをやめ、相手を取り込んで一気に規模を得た点にある。都心駅前と化粧品で築いた売り方が他社へ広がり、出店で差をつけにくくなったとき、マツモトキヨシは同じ薬粧の強みを持つココカラを迎え入れる道を選んだ。スギとの争奪を制した決め手は、店舗運営や自主企画商品で重なりの利く相手という見立てだった。規模の大きさそのものより、専門性を共有できる相手を選んだところに、この統合の性格がうかがえる。

ただし、1兆円という数字は到達点ではなく入り口にすぎない。物流やシステムを一つに揃える作業はなお続き、松本清雄自身が進み具合を「60〜70点」と見る。買って規模を得ることと、買った会社を一つに動かすことは、別の課題である。合併で得た規模を、掲げた「専門性の高いドラッグストアで日本一」という像へどう結びつけるか。統合の実務がその差をどこまで埋められるかに、マツキヨココカラ&カンパニーの次の答えがかかっている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

背景

都心駅前モデルの成熟と、規模という課題

都心の駅前に化粧品を厚く並べ、テレビ広告で「マツキヨ」を全国に知らせる売り方で伸びたマツモトキヨシは、2000年代に入ると同じ型が他社へ広がり、駅前一等地の供給も細っていった。2004年からは地方の中堅チェーンを買い集めて全国網を埋め、2007年10月には業界で初めて純粋持株会社へ移った。それでも国内のドラッグストアは店舗が行き渡り、2020年3月期の連結売上高5,906億円から先を単独の出店だけで伸ばす余地は狭かった。業界をまたぐ再編で規模を得ることが、次の課題として浮かび上がった[1]

ココカラファインという相手と、統合の狙い

ドラッグストア業界では複数の再編話が同時に進み、なかでもココカラファインが注目を集めた。セイジョーやセガミメディクスなど関東・関西・中部の中堅チェーンが一つになった会社で、2019年6月末に関東・関西で約1,357店を持つ業界7位だった。首都圏に約1,672店を構え化粧品と医薬品に強いマツモトキヨシにとって、品揃えの近いココカラは、組めば店舗運営や自主企画商品で重なりの利く相手だった。会長の松本南海雄は、統合の狙いを「医薬品、化粧品を主力とする専門性の高いドラッグストアで日本一をめざす」ことだと語った[2][3]

決断

スギとの争奪と、ココカラの特別委員会

2019年4月、マツモトキヨシHDとココカラファインは資本業務提携の検討・協議に入ると発表した。同じころスギホールディングスもココカラに統合を打診し、ココカラを挟んで二社が交渉を競った。ココカラは社外の目を入れた特別委員会に相手選びを委ね、委員会は8月7日、マツキヨを交渉相手に選ぶよう取締役会へ答申した。取締役会はこれを受けて8月14日、マツキヨへ独占交渉権を与えた。マツキヨと組めば店舗作業の効率や自主企画商品の開発で相乗効果が生まれる、というのがココカラの見立てだった[4][5]

基本合意から株式交換への組み替え

2020年1月31日、両社は経営統合の基本合意書と資本業務提携契約を締結した。この時点では新しい持株会社を設けて両社をその傘下に置く株式移転を描いていたが、統合の形はのちにマツモトキヨシHDを完全親会社、ココカラを完全子会社とする株式交換へ組み替えられた。2021年2月26日に結んだ最終契約で交換比率が決まり、ココカラの普通株式1株にマツモトキヨシHDの普通株式1.70株を割り当てる内容で合意した。この比率には、投資会社のひびき・パース・アドバイザーズが3月に反対を表明した[6][7][8]

2021年10月1日、ココカラは前月29日に上場を廃止し、株式交換の効力発生と同時にマツモトキヨシHDがココカラを完全子会社とした。マツモトキヨシHDは商号を株式会社マツキヨココカラ&カンパニーへ改め、ココカラは株式会社ココカラファイングループとなった。松戸の一薬局から出発した会社は、店舗運営や商品企画を機能ごとにぶら下げる持株会社の形で、出自の異なる二つの系統を一つに束ねた[9]

結果

1兆円企業の出現と、PMIの現在地

統合の初年度にあたる2022年3月期、連結売上高は7,299億円と前の期から34%増え、国内首位級のドラッグストアが姿を現した。売上高は2024年3月期に1兆225億円へ届いて初めて1兆円を超え、2025年3月期は1兆616億円になった。営業利益も2022年3月期の410億円から622億円、757億円、820億円へと4期続けて増え、統合の効果が数字に出た[10]

もっとも、統合の作業は仕上がっていない。松本清雄は2024年秋の時点で、統合3年の進み具合を「60点か70点ぐらい」と自ら採点し、「まだ完全統合途上」と述べた。商品政策の検証に1年、物流とシステムの統合に3年をかけるとの見通しも示した。売上の規模が先に1兆円へ届いた一方で、二つの会社の実務を一つに揃える作業は、なお時間を残していた[11]

出典・参考