2016 年12月

WelQ問題が発生。第三者委員会を設置

歴史的意義
「永久ベンチャー」の免罪符化が招いた公共領域での統制欠如

WelQ問題は、DeNAがスピードと実験を優先するベンチャー的意思決定様式を、医療・健康情報という公共性の高い領域にそのまま適用した結果として顕在化した。第三者委員会は「永久ベンチャー」というスローガンが事業拡大の免罪符として機能していた点を指摘しており、成長フェーズの延長線上で社会的責任やリスク統制の設計が後追いになった構造的問題が露呈した。この対応は経営スタイルそのものの限界を示す転機となった。

背景

事業多角化とメディア運営の急拡大

2010年代半ば、DeNAはゲーム事業への依存を低減するため、ヘルスケアやメディア分野への多角化を進めていた。その一環として、医療・健康情報を扱うキュレーションメディア「WelQ」を立ち上げ、検索流入を軸に急速な規模拡大を図っていた。インターネット広告市場では、検索エンジン経由のトラフィックを獲得できるメディアが高い収益性を持つ構造が形成されており、量的拡大を優先するインセンティブが強く働いていた。 一方で、医療・健康情報は情報の正確性や信頼性が強く求められる分野であり、一般的なエンタメ系メディアとは異なる社会的責任を伴っていた。しかし、事業拡大のスピードを優先する中で、編集体制や監修プロセスの整備が十分に追いつかない状態が続いていた。

決断

サービス停止と第三者委員会の設置

2016年12月、WelQを巡る記事内容の信頼性や制作体制に対する批判が社会的に拡大し、DeNAは事態の重大性を受け止める形で、WelQを含む複数のキュレーションメディアの公開を停止した。同時に、社内調査にとどまらず、外部有識者による第三者委員会を設置し、問題の原因究明と再発防止策の検討を委ねる判断を下した。 この決断は、短期的な収益や事業継続よりも、社会的信頼の回復を優先する姿勢を明確にするものであった。自社の管理体制や意思決定プロセスに構造的な問題があった可能性を認め、外部の視点を取り入れて検証するという、当時のDeNAにとって重い選択であった。

結果

事業撤退と経営姿勢の再定義

第三者委員会の調査結果を踏まえ、DeNAはキュレーションメディア事業から事実上撤退し、WelQは再開されることなく終了した。これにより、同社はメディア事業を成長の柱とする戦略を見直し、事業ポートフォリオの再構築を迫られることになった。 一方で、この対応を通じて、DeNAは事業拡大と社会的責任のバランスを経営課題として再認識し、ガバナンスやリスク管理の強化に舵を切る契機を得た。WelQ問題は、短期的には企業価値を毀損する出来事であったが、結果として経営の前提条件を見直す転換点となった。

第三者委員会・調査報告書
2017年ごろの当事者の証言
経営会議や取締役会の資料では、iemoのプラットフォーム化やプロ責法について指摘されていたものの、プロ責法の適用の有無を意識した形で、iemoをメディアとして運営していくべきか、プラットフォームとして運営すべきかという点について、明確な結論が出た証跡は見受けられず、その点は曖昧なままになった可能性が高い。また、iemo社法務調査報告書では、記事テキストに関する著作権侵害のリスクは抽象的にしか指摘されていなかったこともあり、最も重要視されていたリスクは、あくまでも画像に関する著作権侵害のリスクであった。その結果、DeNAにおける議論は、画像の掲載方法を直リンク方式へと変更することに主要な重点が置かれるようになり、記事のテキストに関する著作権侵害のリスクや、それを踏まえたiemoプラットフォーム化に関する問題意識は、取締役の間で共有されなかった。
第三者委員会・調査報告書 社員の声
2017年ごろの当事者の証言
「DeNAの組織風土にも問題がある。売上高、利益を上げることが至上命題であり、このようなDeNAの思想が今回の問題の根っこにあると思う」「ロボットよりも人間が評価される組織に生まれ変わることを願っている」
第三者委員会・調査報告書
2017年ごろの当事者の証言
DeNAは、自らの成長により他の立派な企業から得られた評価と信頼に応えようと意識していた一方で、いつの間にか自らが欲することを行いやすくするための「免罪符」として「永久ベンチャー」というスローガンを都合よく唱えるようになってしまっていたのではないか。(略)当委員会は、複雑で不明確さが多いキュレーション事業を遂行していく過程で、DeNAが事業の拡大の喪に気を取られて、それに伴うリスクの拡大・拡散を適切に発見・把握し、かつ対応するための体制とプロセスの構築および運用を怠ったことが、本問題における大きな問題点の一つであったと考える。
経営統合に関連する時系列
  1. iemoを買収
  2. ペロリを買収
  3. キュレーションメディア事業を価値0円と認識