経営危機・再建
2012 年5月

コンプガチャの自主廃止と課金上限の導入

歴史的意義
規制に先んじた自主廃止でリスクを抑えた危機対応

コンプガチャ問題は、DeNAの主要な収益源であった射幸性の高い課金手法が、青少年保護と景品表示法の観点から社会的な批判を受けた出来事であった。DeNAは消費者庁の見解公表に先んじて自主廃止を表明し、業界6社の連絡協議会でガイドラインを策定して規律づけを主導した。2013年3月期第1四半期が増収増益であったとおり、業績への打撃は限定的で、課金モデルの成熟に伴う社会的責任へ、規制に先行して対応した危機管理の例となった。

背景

射幸性の高い課金手法への社会的批判

2012年当時、ソーシャルゲームの主要な収益源の一つが「コンプガチャ(コンプリートガチャ)」であった。ランダムに得られる特定のアイテムをすべて揃えると希少アイテムが手に入る仕組みで、揃うまで課金を重ねやすく、射幸性の高さと青少年の高額課金が社会的な批判を集めた。DeNAはこれに先立ち、2012年4月に「Mobage」で18歳未満の青少年を対象に月額課金の上限を設ける方針を発表していた。

決断

消費者庁の見解に先行した自主廃止

2012年5月7日、大型連休明けの株式市場でソーシャルゲーム関連株が急落し、DeNA株は前営業日比500円安の1,990円、グリー株も500円安の1,651円のストップ安となった。DeNAは5月9日の2012年3月期決算発表会で、守安功社長が自社の運営するソーシャルゲームからコンプガチャに相当するものを順次廃止する方針を表明し、自社タイトルでは5月31日までに終了すると発表した。消費者庁が5月18日にコンプガチャを景品表示法の「カード合わせ」に当たり得るとの見解を公表するより前の判断であった。

さらにDeNAは、グリー、サイバーエージェント、ドワンゴ、NHN Japan、ミクシィとともにソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会を組み、5月25日にコンプガチャに関するガイドラインを策定して、プラットフォーム上の全てのゲームで6月末までに廃止することを取り決めた。青少年向けの課金上限は、18歳未満を月1万円、15歳以下を月5,000円までとした。

守安功 DeNA 代表取締役社長
2012年ごろの当事者の証言
利用者に安心して使ってもらうために廃止した。業績に大きな影響は出ていない
消費者庁 景品表示法の見解
2012年ごろの当事者の証言
「コンプガチャ」は、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法に該当し、懸賞景品制限告示第5項で禁止される景品類の提供行為に当たる場合があります。
結果

業績への影響は限定的、自主規制の制度化

コンプガチャの廃止による業績への打撃は限定的であった。2013年3月期第1四半期(2012年4〜6月)の売上高は前年同期比37.4%増の475億円、営業利益は同22.4%増の183億円で、増収増益を保った。廃止の影響を、協業タイトルや他の課金手法で吸収した形であった。

その後、業界は自主規制を制度化した。2012年8月には日本オンラインゲーム協会がアイテムの提供割合(確率)表示などを求めるガイドラインを定め、同年11月には6社を中心に一般社団法人ソーシャルゲーム協会が発足した。射幸性の高い課金手法に対する規律づけが、業界共通の枠組みとして整えられた。

経営統合に関連する時系列
  1. Mobageで青少年の月額課金上限を発表
  2. コンプガチャの自主廃止を表明(株価はストップ安)
  3. 消費者庁がコンプガチャの景表法見解を公表
  4. 6社の連絡協議会がガイドライン策定
  5. ソーシャルゲーム協会(JASGA)が発足