フジを連結子会社化(2021年・イオンの決断)

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論点 中四国最大手をどう取り込むか
イオン:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
中四国最大手との共同持株会社の設立による地域スーパーの再編

何をなぜ決めたか:中四国最大手との共同持株会社の設立による地域スーパーの再編

概要

2021年9月1日、イオンは中四国最大手の流通企業フジ、および傘下のマックスバリュ西日本との経営統合の基本合意書を締結した。フジが会社分割で共同持株会社となり、株式交換でマックスバリュ西日本を完全子会社とする枠組みで、イオンはフジの議決権51.56%を取得して連結子会社とした。企業結合日は2022年3月1日。この日はイオンの第98期の期首にあたり、フジ他14社が連結の範囲に加わって初年度から通期が連結されている。

背景

フジは愛媛県松山市に本店を置く資本金22,000百万円のチェーンストア業で、イオンは2018年10月公表の資本業務提携を契機に持分法適用関連会社としていた。企業結合直前の議決権比率は15.07%。同じ2018年10月にはスーパーマーケット改革を掲げ、国内各地でドミナント出店と収益力の強化を進めていた。中四国にはイオン傘下のマックスバリュ西日本も並存し、地域環境の変化と競争の激化への対応が課題となっていた。

内容

フジは持株会社化に必要な機能を除くすべての事業を吸収分割でフジ・リテイリングへ承継し、同日の株式交換でマックスバリュ西日本を完全子会社とした。株式交換比率は1対1、交付株式数は48,533,756株で、比率の算定はフジが野村證券、マックスバリュ西日本が大和証券に依頼している。

取得原価52,496百万円は既保有分の企業結合日時価15,341百万円と追加取得分37,154百万円の合計で、段階取得に係る差益3,290百万円が生じた。受け入れた資産は155,554百万円、引き受けた負債は80,468百万円。のれん13,575百万円は20年の均等償却とし、第1四半期の暫定的な会計処理は変動なく確定した。

含意

株式交換により議決権の過半を取得したため、会計上は連結子会社であったマックスバリュ西日本を取得企業、フジを被取得企業とする逆取得となった。3社が掲げたのは"中国・四国No.1のスーパーリージョナルリテイラー"で、2024年3月1日にはフジがフジ・リテイリングとマックスバリュ西日本を吸収合併し、新生フジが発足した。吉田昭夫社長は 『北海道、東北、フジ(中四国)、九州といった地域での統合は既に効果を生んでいます』 と、地域単位で統合する再編が既に成果を上げているとみている。

いつ何が起きたか 8件
当時の取締役 7名

当時の取締役(2021年5月株主総会決議)

考察:持株会社を挟んで過半を確保するという再編の型
考察

考察:持株会社を挟んで過半を確保するという再編の型

この統合は、買い手が地元最大手を飲み込んだ取引ではなかっただろう。会計上は、株式交換前からイオンの連結子会社であったマックスバリュ西日本が取得企業とされ、フジが被取得企業となる逆取得にあたる。フジという会社をそのまま残し、そこへ自社の地域会社を差し入れることで、イオンは議決権51.56%を得た。対価は株式で、取得原価52,496百万円に現金の支出は伴わず、連結開始時の現金及び現金同等物12,022百万円がむしろ手元に加わっている。地元最大手の名前と本店を動かさずに過半を握る段取りが、この判断の骨格だったといえる。

もっとも、その体制は長くは保たれなかった。共同持株会社の発足から2年後、フジは事業を承継させたフジ・リテイリングとマックスバリュ西日本を吸収合併し、事業会社を一本化している。20年で均等償却するのれん13,575百万円は、統合の効果が長期にわたって回収されるという見立ての表れであり、その回収は合併後の事業運営に委ねられた。緩やかな持株会社から入って合併で締めるこの順序は、地域再編を急がずに進めるための時間の買い方だったのかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る 3表

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図と表

イオン:SM事業セグメントの推移

外部顧客への営業収益(百万円)セグメント利益率(%)
イオン:SM事業セグメントの推移
(百万円) 外部顧客への営業収益セグメント利益セグメント資産 備考
2017年2月期 3,195,30833,6881,148,888 当期の報告セグメントはSM・DS事業。値は翌期有報の組替後
2018年2月期 3,225,22930,7221,151,421
2019年2月期 3,221,96425,1951,149,345
2020年2月期 3,212,84221,5071,189,877
2021年2月期 3,248,83050,6871,212,252 DS事業を分離する前の区分。ディスカウントストア事業を含む
2022年2月期 2,506,21730,5391,022,797 9月に基本合意、12月に契約締結。この期にSM事業からDS事業を分離した
2023年2月期 2,627,57722,8441,140,007 3月1日からフジ他14社を通期で連結し、増収。セグメント利益は減った
2024年2月期 2,768,29141,9111,248,871 1月にフジが2030年度の営業収益1兆円を掲げる3か年中期経営計画を発表した
2025年2月期 3,045,75732,9591,244,965 期首の3月1日にフジがフジ・リテイリングとマックスバリュ西日本を吸収合併
出所:イオン 有価証券報告書 第92期〜第100期【セグメント情報等】
出所:イオン 有価証券報告書 第92期〜第100期【セグメント情報等】

イオン:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
イオン:のれんと無形固定資産の推移
(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2017年2月期 161,694294,8378,750,856
2018年2月期 155,628295,1009,452,756
2019年2月期 147,727301,12310,049,680 総資産は各期の当期欄。翌期有報の前期欄は組替後の10,045,380
2020年2月期 133,989301,88811,062,685
2021年2月期 121,659304,76211,481,268
2022年2月期 130,152326,41511,633,083 フジの企業結合日は翌期首の3月1日で、のれんはまだ計上されていない
2023年2月期 145,160356,02612,341,523 フジ分13,575を計上。同じ期にコクミン・フレンチ分16,608も加わった
2024年2月期 139,788375,25112,940,869
2025年2月期 154,413416,14713,833,319
出所:イオン 有価証券報告書 第92期〜第100期(連結貸借対照表)
出所:イオン 有価証券報告書 第92期〜第100期(連結貸借対照表)

経営統合の条件

経営統合の条件
科目 概要 備考
被取得企業 ㈱フジ チェーンストア業(食料品、衣料品、日用雑貨品等の小売販売)。本店は愛媛県松山市、資本金22,000百万円
取得企業 マックスバリュ西日本㈱ 株式交換前からイオンの連結子会社。フジを被取得企業とする逆取得にあたる
基本合意書の締結 2021年9月1日 フジ・マックスバリュ西日本と、両社がイオンの連結子会社となる旨を合意
企業結合の法的形式 株式交換 フジを株式交換完全親会社、マックスバリュ西日本を完全子会社とする
同日に行った会社分割 全事業をフジ・リテイリングへ承継 持株会社化するために必要な機能を除くすべての事業を吸収分割で承継した
企業結合日 2022年3月1日 2021年12月6日に経営統合契約書・株式交換契約書・吸収分割契約書を締結
取得直前の議決権比率 15.07% 2018年10月公表の資本業務提携を契機とし、持分法適用関連会社としていた
追加取得した議決権比率 36.49% うち間接保有0.80%
取得後の議決権比率 51.56% うち間接保有0.80%。2023年2月期末以降の所有割合は51.49%(うち間接0.79%)
株式交換比率 フジ1株:マックスバリュ西日本1株 フジは野村證券、マックスバリュ西日本は大和証券を第三者算定機関とした
交付した株式数 48,533,756株
取得原価 52,496百万円 既保有分の企業結合日時価15,341百万円と追加取得分37,154百万円の合計
取得関連費用 243百万円 アドバイザリー費用等
段階取得に係る差益 3,290百万円 取得原価と、取得するに至った取引ごとの取得原価の合計額との差額
のれん 13,575百万円 20年間で均等償却。第1四半期の暫定的な会計処理は変動なく確定した
のれんの発生原因 期待される超過収益力 フジ及び同社連結子会社の今後の事業展開によって期待されるもの
受け入れた資産合計 155,554百万円 流動資産28,437百万円、固定資産127,116百万円
引き受けた負債合計 80,468百万円 流動負債39,913百万円、固定負債40,554百万円
株式交換に伴う現金の増加額 12,022百万円 連結開始時の現金及び現金同等物。対価は株式のため現金の支出はない
連結の範囲に加えた会社 ㈱フジ他14社 フジ・リテイリング、フジマート、フジデリカ・クオリティ等が同時に連結子会社となった
連結に含めた業績の期間 2022年3月1日から2023年2月28日まで 企業結合日が第98期の期首にあたり、初年度から通期を連結している
結合の理由 中国・四国エリアでNo.1の事業連合体 地域環境の変化や競争の激化に対応し、各社の関係を一層深化させるため
出所:イオン 有価証券報告書 第98期(2023年2月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】 / 第97期(2022年2月期)【重要な後発事象】
出所:イオン 有価証券報告書 第98期(2023年2月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】 / 第97期(2022年2月期)【重要な後発事象】
当時の取締役 7名

当時の取締役(2021年5月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • イオン 有価証券報告書「第97期(2022年2月期)【重要な後発事象】」
  • イオン 有価証券報告書「第98期(2023年2月期)【企業結合等関係】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • イオン 有価証券報告書「第98期(2023年2月期)【経営成績等の状況の概要】【セグメント情報等】」
  • イオン 有価証券報告書「第99期(2024年2月期)【沿革】【関係会社の状況】【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • イオン 有価証券報告書「第100期(2025年2月期)【経営成績等の状況の概要】【関係会社の状況】」
  • イオン 決算説明会 質疑応答「2024年2月期 決算説明会 質疑応答」
  • イオン 決算説明会 質疑応答「2025年2月期第2四半期(中間期) 決算説明会 質疑応答」

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