ノジマ アイ・ティー・エックス買収 携帯電話販売代理店の取り込みによる第二の収益源づくり

更新:

時期 2014年11月
当時の社長 野島廣司
論点 事業構造の転換と多角化
何をなぜ決めたか
概要

2015年3月2日、家電量販のノジマが携帯電話販売代理店大手のアイ・ティー・エックス(ITX)の議決権99.0%を取得原価507億1百万円で取得して連結子会社とし、家電の単線経営にキャリアショップ運営という第二の柱を据えた買収。

背景

ITXはテレコム事業を中心とした情報通信サービス事業を全国規模で展開し、携帯電話販売代理店業界でトップクラスの収益力を持っていた。ノジマにない法人顧客基盤も抱えており、両者の強みを相互に活用して代理店業界でのシェアを高める狙いがあった。

内容

2014年12月に設けた子会社ITNを受け皿とし、ノジマ180億円・ITN650億円のシンジケートローンで資金を手当てした。取得したITXはキャリアショップを直営257店・FC228店で運営しており、ノジマ自身の家電販売店126店を大きく上回る規模だった。

含意

取得原価507億円に対してのれん195億98百万円と契約関連無形資産656億円を認識し、16年にわたる償却負担を抱える構えとなった。翌期には連結売上が2,441億円から4,548億円へ伸び、主力がデジタル家電からキャリアショップへ入れ替わった。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

規模を追うためでなく、強みを展開するために買収する

この買収の核心は、規模の拡大そのものよりも、自社の強みをどの市場で活かすかという判断にある。有報が挙げる理由は、ITXの高い収益力・広範な店舗網・法人顧客基盤を取り入れ、両者の強みを相互活用することであった。ノジマは価格で競う家電量販の消耗戦から距離を取り、正社員が接客するという自らの型を、専門性が要る携帯販売の現場へ持ち込んだ。家電販売店126店に対してITXのキャリアショップは直営257店・FC228店にのぼり、その規模の差は型を移し替える効き幅の広さでもあった。

もっとも、自社を上回る相手を借入で抱えた買収には、統合の負担という危うさも伴う。払った507億円のうち受け入れた純資産を超える部分は、のれん196億円と契約関連無形資産656億円として資産に立ち、16年にわたって償却され続ける。連結売上は翌期に4,548億円へ伸びたが、キャリアショップ運営事業のセグメント利益は2017年3月期に50億円へ減少し、規模がそのまま利益に変わるわけではないことも見えた。規模を追うためでなく、強みを移し替えるために買う——この一手が、家電量販の一本足から多角化事業会社へと会社の姿を変えるノジマの型を決めた。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 ITX㈱ テレコム事業を中心とした情報通信サービス業
企業結合を行った主な理由 高い収益力・広範な店舗網・法人顧客基盤 強みを相互活用し、携帯販売代理店業界でのノジマグループのシェアを高める
企業結合日 2015年3月2日 連結損益に含めたのは2015年3月の1か月分
企業結合の法的形式 株式取得 結合後企業の名称はITX㈱のまま
取得した議決権比率 99.0% 現金を対価とする株式取得による。2015年5月に1.0%を追加取得して全株式
取得の対価 現金50,398百万円 対価は全額現金
取得に直接要した費用 303百万円 アドバイザリー費用等。取得原価に含めている
取得原価 50,701百万円 対価50,398百万円と直接費用303百万円の合計
のれん 19,598百万円 今後の事業展開により期待される将来の超過収益力から発生。16年間の均等償却
のれん以外の無形固定資産 66,060百万円 契約関連65,600百万円(16年)と商号460百万円(5年)。加重平均15.8年
受け入れた資産合計 119,376百万円 流動資産47,082百万円、固定資産72,293百万円
引き受けた負債合計 87,947百万円 流動負債32,638百万円、固定負債55,308百万円
取得のための支出 43,444百万円 取得価額50,701百万円から受け入れた現金及び現金同等物7,257百万円を控除
通期換算した売上高の増加 217,288百万円 期首に結合したと仮定した概算額。営業利益は4,217百万円。監査証明はない
取得資金の調達 ノジマ180億円・ITN㈱650億円の借入 いずれも2014年12月24日締結のシンジケートローン。ITN分は210億円と440億円

出所:ノジマ 有価証券報告書 第53期(2015年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】・第54期【連結キャッシュ・フロー計算書関係】

のれんと無形固定資産の推移

ノジマ:のれんと無形固定資産の推移

(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2010年3月期 9643759,836
2011年3月期 6415964,054
2012年3月期 3172165,688
2013年3月期 1092670,631
2014年3月期 2,7163,50694,650 ジオビットモバイルの取得で計上した暫定額。翌期の確定で766百万円へ減った
2015年3月期 20,35689,588236,104 ITXののれん19,598百万円と無形資産66,060百万円を認識し、総資産は2.5倍に
2016年3月期 21,29385,807233,434
2017年3月期 19,87079,898245,467
2018年3月期 30,25592,412259,756 ニフティの取得で13,090百万円ののれんが加わった
2019年3月期 27,54684,140307,735
2020年3月期 24,75875,836286,247
のれんと無形固定資産
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:ノジマ 有価証券報告書 第48期〜第58期(連結貸借対照表)

キャリアショップ運営事業の推移

ノジマ:キャリアショップ運営事業の推移

(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2015年3月期 67,5671,976 ITXの業績は2015年3月の1か月分。売上高は前年同期比257.6%
2016年3月期 270,5456,555 ITXが通年で寄与した最初の期。デジタル家電の1,836億円を上回った
2017年3月期 245,8005,043 携帯販売台数の減少に販売管理費の抑制が追いつかず減収減益
2018年3月期 245,2466,169
2019年3月期 237,8336,542
2020年3月期 207,3226,773

出所:ノジマ 有価証券報告書 第53期〜第58期(セグメント情報。売上高は外部顧客への売上高)

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • ノジマ 有価証券報告書「第53期(2015年3月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】」
  • ノジマ 有価証券報告書「第54期(2016年3月期)【沿革】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】」
  • ノジマ 有価証券報告書「第48期〜第58期(連結貸借対照表、セグメント情報)」
  • ノジマ 有価証券報告書「第56期(2018年3月期)【企業結合等関係】」

免責事項およびポリシー