筆者の見解
名門の賭けが残したもの
この判断の核にあるのは、安定した2本柱に恵まれた名門が、その安定ゆえに縮こまることへの危機感であった。ただ、コンピューターという最も技術変化の激しい分野を選んだことで、その意志は最も手痛い授業料を払う結果にもなった。
もっとも、落下傘型を語る三野氏の言葉には、賭けと同時に手堅さへのこだわりが同居していた。投資を既存事業の収益の範囲にとどめ、遺産を食い潰さないという歯止めは、名門を守る側の論理でもある。コンピューターは畳まれ、環境や水の処理技術は残った——どの落下傘が地に足を着けるかは、飛び降りてみるまで分からない。多角化を続けなければ限界が来るという危機感と、体力の範囲でしか賭けないという抑制のあいだで、クボタの変身は揺れていたと思われる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月