この決断の核心は、縮んでいく百貨店本業を抱えた会社が、性格の異なる成長事業をあえて資本ごと買い切った点にある。すでに64.98%を握り、連結の数字には取り込めていた相手に、なお590億円の現金を投じて100%にする——買うのは事業ではなく、少数株主が持っていた発言権そのものであった。会計上も企業結合ではなく資本取引として扱われ、のれんは1円も立っていない。対価65,494百万円と帳簿価額42,465百万円の差額23,028百万円は、資産ではなく親会社の持分の減少として処理されている。買収の成否がのれんの減損として表に出ない以上、この判断は事業の数字そのもので測るほかない。
統合報告書2020が制約として挙げたのは、パルコが上場会社として運営に一定の独立性を有することであった。その制約を外した直後にコロナ禍が全店を襲い、2021年2月期のパルコ事業は69億円のセグメント損失を計上する。もっとも、完全子会社となったことで大丸松坂屋百貨店の不動産事業をパルコへ移し、区分をSC事業へ改める再編は一息に進んだ。事業会社単独では担えない規模の投資に踏み込める体制が整い、2025年2月期のSC事業のセグメント利益は12,850百万円と、買い切る前の水準を超えた。のれんという形では資産に残らなかった590億円の値打ちは、この数字の側にしか現れない。