日本マクドナルド 東名阪184店の価格改定 立地に応じて値段を変える形への改定と、長く続いた全国一律価格の放棄

更新:

時期 2023年6月
当時の社長 日色保
論点 価格戦略の転換
何をなぜ決めたか
概要

2023年7月19日、日本マクドナルドは都心部に立地する184店舗の適用価格を見直した。空港や駅、遊園地、サービスエリアといった特殊な立地と都心部の一部を合わせた計約40店舗に限られていた別価格を、賃料や人件費の負担が特に大きい東名阪エリアの店へ広げたもので、対象は全国約3,000店舗の約6%にあたる。価格が異なる店は準都心店121店、都心店94店、特殊立地店13店の計228店となった。

背景

第52期の直営売上原価率は、急激な為替変動と原材料価格の高騰で原材料費が4.2ポイント増え、3.3ポイント上昇して91.6%に達した。2023年1月16日には全体の約8割の品目で店頭価格を改定したが、値上げ幅は約40店舗の例外を除いて全国の店へ等しくかかっていた。

内容

適用開始は2023年7月19日で、同日に宅配サービスのマックデリバリーの価格も改めた。価格帯ごとの店舗名と都道府県名は一覧で公表され、準都心店と都心店の215店は東京都140店、大阪府30店、神奈川県12店、京都府11店と、東名阪の中心部に集まる。

含意

第53期の既存店売上高は7.0%増え、2015年第4四半期から33四半期連続でプラスとなった。システムワイドセールスは7,777億52百万円、営業利益は408億77百万円で、中期経営計画の財務目標は2年目で達成された。直営売上高に対する材料費の比率は39.6%から38.1%、37.0%へ下がり、第55期のシステムワイドセールスは8,886億49百万円となった。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

「価格破壊」から30年、価格哲学の反転

この判断の核心は、日本マクドナルドが自ら築いた価格の原則を、30年をへて反対向きに引き直した点にある。1994年、藤田田社長は"価格破壊"を掲げてハンバーガーを段階的に値下げし、全国どこでも同じ安さで買えることをブランドの土台に据えた。デフレの進む外食で、一律の低価格は集客の中核となり、平日半額のような施策とともに客数を積み上げた。全国一律・低価格という思想は、そのころに固まった。都心型価格の全面導入は、その思想を裏返す。安さと一律をやめ、立地に応じて値段を上げていく方向へ、価格の設計を組み替えた。

値下げで客数を稼いだ時代と、値上げで客単価を稼ぐ現在とを分けるのは、外食を取り巻く物価の流れである。円安と人件費高のもとでは、安さを競うだけでは店が立ちゆかない。全国一律という分かりやすさを捨て、立地ごとにコストを価格へ映すやり方は、デフレを前提にした外食からの離脱を映している。もっとも、立地で値段が変わる仕組みは、同じ商品が店によって違う値段だという分かりにくさも生む。値上げに客がついてくるうちは成り立つこの均衡を、物価や競争が変わったときにも保てるかどうかは、これからに委ねられている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
都心型価格の適用条件

都心型価格の適用条件

科目 概要 備考
発表日 2023年6月19日
適用開始日 2023年7月19日 同日に宅配サービス「マックデリバリー」の価格も改定した
新たに適用する店舗数 184店舗 全国約3,000店舗の約6%にあたる
対象エリア 東名阪エリアの一部 賃料、人件費等の負担が特に大きい店舗を選んだ
適用の理由 店舗運営コストの上昇 賃料、人件費等の負担が特に大きい店舗において都心型価格を適用する
従来の別価格店舗 計約40店舗 空港・駅・遊園地・サービスエリアといった特殊な立地及び都心部の一部
再編後の価格帯 準都心店・都心店・特殊立地店 準都心店121店、都心店94店、特殊立地店13店の計228店
価格帯の公表 店名と都道府県名の一覧 2023年6月19日時点で価格が異なる店舗を店名まで公開した

出所:日本マクドナルド ニュースリリース(2023年6月19日)「都心型価格の適用店舗再編のお知らせ」・「価格が異なる店舗一覧」(2023年6月19日時点)

全店売上高と連結業績の推移

日本マクドナルド:全店売上高と連結業績の推移

(百万円) 全店売上高連結売上高営業利益 備考
2018年12月期 524,203272,25725,045 既存店売上高は6.9%増。期末店舗数は2,899店
2019年12月期 549,059281,76328,018 既存店売上高は4.5%増。期末店舗数は2,910店
2020年12月期 589,228288,33231,290 既存店売上高は6.8%増。期末店舗数は2,924店
2021年12月期 652,047317,69534,518 既存店売上高は9.7%増。期末店舗数は2,942店
2022年12月期 717,589352,30033,807 既存店売上高は8.9%増。2023年1月16日に約8割の品目を価格改定
2023年12月期 777,752381,98940,877 7月19日に都心型価格を184店へ適用。既存店売上高は7.0%増
2024年12月期 829,140405,47748,021 既存店売上高は5.0%増。期末店舗数は2,988店
2025年12月期 888,649416,60253,257 2025年3月に価格改定。既存店売上高は41四半期連続増
全店売上高と営業利益率
全店売上高(百万円)営業利益率(%)

出所:日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第50期(2020年12月期)・第53期(2023年12月期)・第55期(2025年12月期)【主要な経営指標等の推移】 / 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第48〜55期【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

直営売上原価と材料費の推移

日本マクドナルド:直営売上原価と材料費の推移

(百万円) 材料費直営売上原価 備考
2018年12月期 68,583165,608 直営売上高に対する材料費の比率は35.8%
2019年12月期 69,649169,728 直営売上高に対する材料費の比率は35.3%
2020年12月期 67,562170,261 直営売上高に対する材料費の比率は35.0%
2021年12月期 75,797189,349 直営売上高に対する材料費の比率は35.4%
2022年12月期 94,130217,887 材料費の比率は39.6%へ4.2ポイント上昇。直営売上原価率は91.6%
2023年12月期 98,877234,367 材料費の比率は38.1%へ低下。直営売上原価率は90.2%
2024年12月期 101,134243,315 材料費の比率は37.0%へ低下。直営売上原価率は89.0%
2025年12月期 100,708239,355 材料費の比率は37.3%。直営売上原価率は88.6%
材料費と直営売上原価
材料費(百万円)材料費以外の直営売上原価(百万円)材料費率(%)

出所:日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第48〜55期【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(売上原価の内訳)

価格が異なる228店の価格帯別内訳

日本マクドナルド:価格が異なる228店の価格帯別内訳

(店) 店舗数 備考
準都心店 121 東京都・大阪府・神奈川県・京都府など東名阪の都市部に分布する
都心店 94 準都心店と合わせた215店のうち東京都が140店を占める
特殊立地店 13 空港・サービスエリア・遊園地など。従来から別価格を適用していた
2023年6月19日時点の価格帯別店舗数
  • 準都心店 53%
  • 都心店 41%
  • 特殊立地店 6%

出所:日本マクドナルド「価格が異なる店舗一覧」(2023年6月19日時点)

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第52期(2022年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 日本マクドナルド ニュースリリース(2023年1月6日)「価格改定のお知らせ」
  • 日本マクドナルド ニュースリリース(2023年6月19日)「都心型価格の適用店舗再編のお知らせ」
  • 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第53期(2023年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第54期(2024年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第55期(2025年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書 第55期(2025年12月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • 日本マクドナルド ニュースリリース「価格改定のお知らせ」
  • 日本マクドナルド ニュースリリース「都心型価格の適用店舗再編のお知らせ」
  • 日本マクドナルド 添付資料「価格が異なる店舗一覧(2023年6月19日時点)」
  • 日本マクドナルドホールディングス 決算説明会資料「2023年通期決算発表」
  • 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書「第53期(2023年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」
  • 日本マクドナルドホールディングス 有価証券報告書「第55期(2025年12月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」

免責事項およびポリシー