ABCマート の歴史

更新: Author:

創業 1985年
創業者 三木正浩
創業地 東京都
創業
1985年6月、三木正浩氏が29歳で東京・早稲田に株式会社国際貿易商事を設立し、靴と衣料の輸入販売を始めた。翌1986年にはロンドンで流行していた革靴『ホーキンス』の国内独占販売権を現地で取得し、1987年には商号をインターナショナル・トレーディング・コーポレーションへ改め『コスビー』の商標使用権も加える。海外で売れていながら日本では無名なブランドを権利ごと押さえたため、競合は同じ商品を仕入れられなかった。ただし作る場所も原価も決めるのは相手側で、1990年3月期の経常利益は売上高34億円に対し1億円にとどまった。
決断
粗利の決まる場所を自社の側へ引き取る、という基準で判断を重ねてきた。1990年2月に韓国の工場へ生産を委託し、1991年にライセンス生産権、1995年に商標権そのものを取得して、借りたブランドを売る卸から、自分で作って自分で売る形へ組み替えた。流通の途中の取り分を取り込み、1993年にはホーキンスの店頭価格を3割下げながら利益率24%を保った。2002年には営業利益率25%の卸売から撤退して小売業エービーシー・マートへ一本化し、売り先に上限のある商売より、売場を増やせば伸びる商売を採った。輸入卸で覚えた発注と原価の技術は卸売から撤退した後も残り、現在は自社ブランドの企画と店頭の値付けに使われている。
現況
国内で組み上げた売場と品揃えの設計を、そのまま海外へ写して積み増す構造である。2026年2月期の連結売上高は3,786億円、営業利益633億円で、地域別では国内2,721億円、韓国648億円、その他海外417億円である。海外は売上の3割弱を占めながら、セグメント利益では1割強にとどまる。2002年に韓国を皮切りにアジアへ売場を広げて以来、店舗網は国内1,099店・海外400店(2025年2月末)へ広がった。2026年3月には19年ぶりの社長交代で服部喜一郎氏が就任し、韓国事業の収益拡大と、ベトナム・フィリピンで始めた東南アジアの出店を軸に据えている。
競合
同じ商品を他社が仕入れられない状態を作るのが、この会社の戦い方だ。1986年の独占販売権から1995年の商標権買収へ段を上がり、商標を取得したホーキンスと使用権を得たヴァンズを自社で企画し、海外大手ブランドと並べた。国内の靴専門店ではチヨダなどと競うが、1兆2,000億円の国内シューズ市場で2割を握る国内トップだと有価証券報告書に記す。米国では2012年に買収したラクロス・フットウェアのダナーが卸売で振るわずECへ寄り、台湾では値引きが続く。権利を握って自社の売場だけで売る形は、この二つではまだ回っていない。
ABCマート:長期業績の推移(売上高・利益率)売上高(億円純利益率(%)
1997年3月期2026年2月期

創業ストーリー 卸売業からSPAモデルへの事業基盤の確立 (1985年〜)

独占販売権を束ねる卸売業者という起点

1985年6月に三木正浩氏は29歳で株式会社国際貿易商事を設立し[1]、欧米カジュアルウェアの輸入販売を始めた[2]。翌年にはロンドンで流行していた革靴ブランド『ホーキンス』の国内独占販売権を取得した[3]。ロンドンでホーキンスを履く若者に着目した三木氏は、メーカーへ直接出向き、即断即決で交渉した。日本では無名だったブランドの販売権を、自分で現地まで足を運ぶ手法で押さえた点に、創業期の意思決定スタイルが現れている。現地で実物を確かめる姿勢は、商品選定の基本原則として組織に引き継がれた。アパレル業界全体が百貨店チャネル縮小とSPAモデル台頭の波に揺れる前夜の話で、靴という商材で同じ波を先取りする最初の打ち手だった。

  • 戦略経営者 2000年7月号
    • [1]1985年6月に株式会社国際貿易商事(ITC)が設立された
    • [2]創業者は三木正浩である
    • [3]1986年(設立翌年)に革靴ブランド「ホーキンス」の国内独占販売権を取得した

コスビーやバンズなど複数の欧米ブランドの独占販売権も蓄積[4]し、競合他社が同じ商品を扱えない排他的な地位を築いた。販売権を自社で握る卸売業者という立場が、小売業ABCマートを開始したときの商品力の基盤となった。単一ブランドへ依存せず複数のブランドを束ねる事業構造は、流行の変動に対しても一定の耐性を備え、早い段階で形作られた。後の急成長を支える前提となり、同業他社との差別化の源泉として長く働いた。ブランドの選別眼と交渉力がともに社内へ蓄積された時期に、業態転換を可能にする無形資産が積み上がった。複数ブランドを横並びで束ねる戦略は、特定ブランドの賞味期限が切れても他で補える柔軟性を組織にもたらした。後の小売業転換で商品調達の自由度を支える基盤にもなった。

  • 矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月
    • [4]コスビーやバンズなど複数の欧米ブランドの独占販売権を蓄積した
  • 戦略経営者 2000年7月号
    • [1]1985年6月に株式会社国際貿易商事(ITC)が設立された
    • [2]創業者は三木正浩である
    • [3]1986年(設立翌年)に革靴ブランド「ホーキンス」の国内独占販売権を取得した
  • 矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月
    • [4]コスビーやバンズなど複数の欧米ブランドの独占販売権を蓄積した

ホーキンス3割引きで利益率24%を維持した韓国SPA

1990年から三木氏は韓国での生産委託体制を築き[5]、カジュアルシューズのSPAを志向した。独占販売権に加えて生産ライセンスも取得し、ブランド力・生産力・価格競争力を自社で統合する体制を整えた。1993年にはホーキンスの販売価格を30%値下げしつつ利益率24%を維持し、低価格と高利益率を両方達成した。生産現場の品質管理と発注ロットの最適化を通じて、自前の生産ネットワークの強みが現れた。中間マージンを排除しつつブランド価値を維持するモデルは、当時の日本の靴業界では珍しい試みだった。後年のアパレル業界全体へのSPAモデル波及を先取りした例でもある。韓国生産は当時の日韓の工賃差と地理的近接性を活かす選択だった。欧米ブランドの本来の生産国を離れ、自社管理下のサプライチェーンへ組み替えた発想は、靴卸売業の常識からは外れていた。

  • 戦略経営者 2000年7月号
    • [5]1990年から三木は韓国での生産委託体制を築きSPAを志向した

1995年には年間利益37億円のもとで[6]、木村拓哉起用のTVCMへ40億円を投下した[7]。FY1996には売上高268億円に達[8]した。しかし大量露出はホーキンスの需要を短期で消化し尽くし、ブーム一巡後の売上低迷を招いた。単一ブランド依存の卸売モデルの限界が表に出て、小売業ABCマートへの業態転換を加速させた。40億円規模の広告投資は短期で売上を押し上げる反面、ブランドの消費サイクルも加速させた。広告費の投下と売上拡大を比例で捉えない姿勢が、後の出店戦略の堅実さにもつながった。ブランドの寿命を意識して投資の緩急を調整する感覚は、CM投下の教訓から培われた。1995年の利益37億円に対して40億円のCM投下は単年度黒字を上回る賭けで、卸売だけで稼ぐ構造の天井を可視化した。自社で売場を持って需要を平準化する小売業転換の必要性も同時に表面化した。

  • 戦略経営者 2000年7月号
    • [6]ホーキンスのTVCMへ40億円(広告宣伝費)を投下した
    • [7]1995年に木村拓哉を起用したホーキンスのTVCMを投下した
  • エービーシー・マート DATA BOOK 2001
    • [8]ITC単体売上はFY1996に268億円へ達した
  • 戦略経営者 2000年7月号
    • [5]1990年から三木は韓国での生産委託体制を築きSPAを志向した
    • [6]ホーキンスのTVCMへ40億円(広告宣伝費)を投下した
    • [7]1995年に木村拓哉を起用したホーキンスのTVCMを投下した
  • エービーシー・マート DATA BOOK 2001
    • [8]ITC単体売上はFY1996に268億円へ達した

API for AI Agents — 認証不要、URLをGETするだけで機械可読なJSONをトークン消費を抑えつつ取得できます。

ABCマートの沿革1985〜2025年における主な出来事を抜粋

時代年月社長・CEO出来事重要度
1985〜1995年卸売業からSPAモデルへの事業基盤の確立国際貿易商事を設立
ホーキンスの国内独占販売権を取得★★
インターナショナル・トレーディング・コーポレーションに商号変更
ABCマート1号店を開業・小売業に参入★★★
韓国での生産委託とライセンス取得によるカジュアルシューズのSPA化

1990年2月、欧米カジュアルブランドの輸入卸だったインターナショナル・トレーディング・コーポレーション(ITC)が、韓国での靴の生産委託を始めた。翌1991年6月には英G.T.HAWKINS LIMITED社からライセンス生産の権利を取得し、企画・生産・販売を自社で握る製造小売(SPA)の体制へ移した経営判断。

詳細を読む
★★★
「G.T.HAWKINS」の商標権を買収し自社ブランド化★★
ホーキンスのTVCMを放映・木村拓哉を起用
1996〜2007年SC積極出店と全国チェーン化モデルの確立期ABCマートの積極出店を開始・SCに照準★★
株式を店頭公開
ABCマート銀座店を開業(土地取得あり)
祖業の卸売を畳み、小売業エービーシー・マートへ一本化した業態転換

2002年3月、インターナショナル・トレーディング・コーポレーション(ITC)が連結子会社の株式会社エービーシー・マートを吸収合併し、同年8月に存続会社の商号を株式会社エービーシー・マートへ変更した。1985年以来の輸入卸から小売専業へ、事業と法人格の両方を移した経営判断。

詳細を読む
★★★
韓国を皮切りにSPA型小売モデルをアジアへ移した海外展開

2002年8月、エービーシー・マートは韓国での靴小売を目的にABC-MART KOREA,INC.を出資比率51.0%の合弁で設立した。2004年から本格的な出店を始め、韓国はのちに海外で最大の市場となる。台湾・米国・ベトナム・フィリピンへ広がる海外網の最初の一手にあたる。

詳細を読む
★★★
金城正宏野口実氏が代表取締役社長に就任
2008〜2022年1000店舗突破とアジア市場への本格展開野口実旗艦店業態「GRANDSTAGE」の出店開始
野口実台湾「JOINT POWER INTERNATIONAL」へ資本参加し子会社化
野口実LaCrosseをTOBにて買収★★
野口実国内初の自社靴製造工場「ABC SHOE FACTORY」を設立
野口実国内1000店舗体制へ
野口実「オッシュマンズ・ジャパン」を完全子会社化★★
野口実合弁会社「ABC-MART VIETNAM」を設立
野口実グループ出店で1,500店舗を達成
野口実GS旗艦店を銀座に新規出店(予定)
出典・参考
  • 戦略経営者 2000年7月号
  • 矢野経済研究所 ヤノ・ニュース 1993年9月
  • エービーシー・マート DATA BOOK 2001

免責事項およびポリシー