パソナグループ オアシスの経営改善要求 経営改善の要求への応答——上場子会社を持ち続けての南部体制の維持
更新:
何をなぜ決めたか
- 背景
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矢継ぎ早の買収で連結売上は伸びたが、主力の人材派遣(エキスパートサービス)のセグメント利益率は2016年5月期に0.9%まで下がった。2017年5月期は親会社株主に帰属する当期純損失129百万円で、自己資本利益率は△0.7%、年間配当12円の配当性向は109.6%に達した。ベネフィット・ワンなど複数の上場子会社は抱えたままだった。
- 内容
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2018年5月末、OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD.は1,251,000株・3.16%を持つ大株主第4位にあった。パソナは上場子会社を持ち続け、第11期の対処すべき課題に事業効率の推進と収益力強化を掲げ、連結配当性向の目処を25%から30%へ引き上げた。2018年8月の定時株主総会は取締役5名選任の1議案のみで、原案どおり可決された。
- 含意
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上場子会社をどう扱うかという論点は残った。2023〜2024年にパソナはベネフィット・ワンを第一生命へ売却して上場子会社を手放し、2024年7月にはオアシスが再びパソナ株の5.02%を取得した。
いつ何が起きたか 5件
筆者の見解
守り抜いた経営と、残された宿題
この一件の核心は、財務の危機でも不祥事でもなく、低収益と上場子会社の保有を突かれた創業経営が、外部の要求にどこまで応じるかという選択にあった。主力の人材派遣の利益率は1%前後に沈み、2017年5月期は最終赤字で配当性向が100%を超えていた。規模の拡大を優先してきた南部式経営の弱点は、有価証券報告書の数字にすでに表れていた。それでもパソナは上場子会社を抱えたままの体制を守り抜いた。創業者の求心力で会社をまとめてきた企業にとって、外部の株主の論理を容れることは、経営の主導権を手放すことと地続きに見えたのだろう。翌年の株主総会に株主提案は出ず、会社提案の取締役5名が原案どおり選ばれたことは、その防衛が短期的には成功したことを示している。
もっとも、突きつけられた宿題そのものが消えたわけではない。上場子会社の価値をどう株主へ解き放つかという問いは、数年後にベネフィット・ワンの第一生命への売却という形で、パソナ自身の手で答えられることになる。物言う株主の要求を退けた経営が、時間を置いて要求の一部を自ら実行したこの経緯は、アクティビズムが即座の勝敗では測れないことを物語る。親子上場の含み価値と創業家支配をどう両立させるか——2017年にオアシスが投げた問いは、その後のパソナの資本政策を長く規定していくことになった。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
株主の保有と会社の応答
株主の保有と会社の応答
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| オアシス側の保有 | OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD. | 2018年5月31日現在の大株主第4位で、1,251,000株・3.16% |
| 対象の株主総会 | 第11期定時株主総会(2018年8月17日) | 付議は会社提案の取締役5名選任1議案のみで、株主提案の議案はない |
| 事業への応答 | 事業効率の推進と収益力強化 | 第11期の対処すべき課題。IT基盤の共通化とBPOの管理プラットフォーム構築 |
| 株主還元への応答 | 連結配当性向30%を目処 | 第10期の目標25%から引き上げた。第11期の年間配当は1株13円 |
| 自己株式の処分 | 2,300,000株を処分 | 第11期に公募および第三者割当で処分した。処分価額の総額は3,781百万円 |
| 議決の結果 | 取締役5名選任を原案どおり可決 | 南部靖之・竹中平蔵・深澤旬子・山本絹子・若本博隆が就任した |
| 可決の要件 | 出席した株主の議決権の過半数 | 議決権行使結果の開示はなく、この総会の賛成率は遡れない |
出所:パソナグループ 有価証券報告書 第10期・第11期【大株主の状況】【対処すべき課題】【配当政策】【株主資本等変動計算書関係】/第11期定時株主総会 招集ご通知・決議ご通知
エキスパートサービス(人材派遣)の売上高とセグメント利益
パソナグループ:エキスパートサービス(人材派遣)の売上高とセグメント利益
| (百万円) | 売上高 | セグメント利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2013年5月期 | 176,184 | 2,661 | |
| 2014年5月期 | 174,816 | 2,872 | |
| 2015年5月期 | 186,080 | 2,485 | |
| 2016年5月期 | 217,057 | 1,959 | 利益率0.9%。 |
| 2017年5月期 | 230,873 | 2,297 | |
| 2018年5月期 | 256,828 | 5,075 | 第12期の区分変更後の組替値は売上259,560・利益5,135 |
| 2019年5月期 | 270,240 | 7,353 | 報告セグメントを「エキスパートサービス、BPOサービス他」に変更 |
| 2020年5月期 | 266,353 | 9,543 | |
| 2021年5月期 | 274,957 | 17,543 | |
| 2022年5月期 | 304,064 | 18,793 | |
| 2023年5月期 | 303,164 | 15,132 |
出所:パソナグループ 有価証券報告書 第6〜16期【セグメント情報等】
自己資本利益率と自己資本比率
パソナグループ:自己資本利益率と自己資本比率
| (%) | 自己資本利益率 | 自己資本比率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2013年5月期 | 2.9 | 29.3 | |
| 2014年5月期 | 2.5 | 27.9 | |
| 2015年5月期 | 1 | 24.1 | |
| 2016年5月期 | 1.2 | 22.2 | |
| 2017年5月期 | △0.7 | 20.1 | 親会社株主に帰属する当期純損失129百万円。キャンペーンの直前の期 |
| 2018年5月期 | 6 | 20.9 | 当期純利益1,288百万円。経常利益は6,631百万円で前期の1.5倍 |
| 2019年5月期 | 7.6 | 23.7 | |
| 2020年5月期 | 2 | 22.7 | |
| 2021年5月期 | 19.4 | 25.2 | |
| 2022年5月期 | 19.6 | 24.5 | |
| 2023年5月期 | 11.7 | 19.6 |
- 南部靖之 37%
- 南部エンタープライズ 9%
- BNYM NON-TREATY DTT 5%
- OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND 3%
- JP MORGAN CHASE BANK 380621 2%
- その他 43%
出所:パソナグループ 有価証券報告書 第10期・第11期・第16期【主要な経営指標等の推移】
1株当たり年間配当額の推移
パソナグループ:1株当たり年間配当額の推移
| (円) | 1株当たり配当額 | 備考 |
|---|---|---|
| 2014年5月期 | 10 | |
| 2015年5月期 | 12 | |
| 2016年5月期 | 12 | |
| 2017年5月期 | 12 | 配当性向109.6%。連結配当性向の目標は25%としていた |
| 2018年5月期 | 13 | 配当の総額は514百万円。連結配当性向の目処を30%へ引き上げた |
| 2019年5月期 | 18 | |
| 2020年5月期 | 19 | |
| 2021年5月期 | 30 | |
| 2022年5月期 | 35 | |
| 2023年5月期 | 35 |
出所:パソナグループ 有価証券報告書 第10期・第11期・第16期【主要な経営指標等の推移】(提出会社)
定時株主総会の議案別賛成率
パソナグループ:定時株主総会の議案別賛成率
| (%) | 代表取締役の選任 | 株主提案 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2024年8月総会(第17期) | 88.2 | − | 南部靖之。ほかの取締役4名はいずれも92.6% |
| 2025年8月総会(第18期) | 92.5 | − | 若本博隆。中尾慎太郎99.5%、南部真希也94.1% |
| 2026年8月総会(第19期) | 90.4 | 21 | 若本博隆。株主提案は創業家株主からの自己株式取得で否決 |
出所:パソナグループ 臨時報告書(第17期・第18期・第19期定時株主総会における議決権行使結果)
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- パソナグループ 有価証券報告書「第10期(2017年5月期)【主要な経営指標等の推移】【配当政策】」
- パソナグループ 招集通知「第11期定時株主総会 招集ご通知」
- パソナグループ 決議結果通知「第11期定時株主総会決議ご通知」
- パソナグループ 有価証券報告書「第11期(2018年5月期)【大株主の状況】【配当政策】【自己株式の取得等の状況】」
- パソナグループ 臨時報告書「第17期定時株主総会における議決権行使結果」
- パソナグループ 臨時報告書「第18期定時株主総会における議決権行使結果」
- パソナグループ 招集通知「第19期定時株主総会 招集ご通知」
- パソナグループ 臨時報告書「第19期定時株主総会における議決権行使結果」