パソナグループ オアシスの経営改善要求 経営改善の要求への応答——上場子会社を持ち続けての南部体制の維持

更新:

時期 2017年11月
当時の社長 南部靖之
論点 上場子会社の価値と資本政策、創業家支配
何をなぜ決めたか
背景

矢継ぎ早の買収で連結売上は伸びたが、主力の人材派遣(エキスパートサービス)のセグメント利益率は2016年5月期に0.9%まで下がった。2017年5月期は親会社株主に帰属する当期純損失129百万円で、自己資本利益率は△0.7%、年間配当12円の配当性向は109.6%に達した。ベネフィット・ワンなど複数の上場子会社は抱えたままだった。

内容

2018年5月末、OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD.は1,251,000株・3.16%を持つ大株主第4位にあった。パソナは上場子会社を持ち続け、第11期の対処すべき課題に事業効率の推進と収益力強化を掲げ、連結配当性向の目処を25%から30%へ引き上げた。2018年8月の定時株主総会は取締役5名選任の1議案のみで、原案どおり可決された。

含意

上場子会社をどう扱うかという論点は残った。2023〜2024年にパソナはベネフィット・ワンを第一生命へ売却して上場子会社を手放し、2024年7月にはオアシスが再びパソナ株の5.02%を取得した。

いつ何が起きたか 5件
筆者の見解
筆者の見解

守り抜いた経営と、残された宿題

この一件の核心は、財務の危機でも不祥事でもなく、低収益と上場子会社の保有を突かれた創業経営が、外部の要求にどこまで応じるかという選択にあった。主力の人材派遣の利益率は1%前後に沈み、2017年5月期は最終赤字で配当性向が100%を超えていた。規模の拡大を優先してきた南部式経営の弱点は、有価証券報告書の数字にすでに表れていた。それでもパソナは上場子会社を抱えたままの体制を守り抜いた。創業者の求心力で会社をまとめてきた企業にとって、外部の株主の論理を容れることは、経営の主導権を手放すことと地続きに見えたのだろう。翌年の株主総会に株主提案は出ず、会社提案の取締役5名が原案どおり選ばれたことは、その防衛が短期的には成功したことを示している。

もっとも、突きつけられた宿題そのものが消えたわけではない。上場子会社の価値をどう株主へ解き放つかという問いは、数年後にベネフィット・ワンの第一生命への売却という形で、パソナ自身の手で答えられることになる。物言う株主の要求を退けた経営が、時間を置いて要求の一部を自ら実行したこの経緯は、アクティビズムが即座の勝敗では測れないことを物語る。親子上場の含み価値と創業家支配をどう両立させるか——2017年にオアシスが投げた問いは、その後のパソナの資本政策を長く規定していくことになった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
株主の保有と会社の応答

株主の保有と会社の応答

科目 概要 備考
オアシス側の保有 OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD. 2018年5月31日現在の大株主第4位で、1,251,000株・3.16%
対象の株主総会 第11期定時株主総会(2018年8月17日) 付議は会社提案の取締役5名選任1議案のみで、株主提案の議案はない
事業への応答 事業効率の推進と収益力強化 第11期の対処すべき課題。IT基盤の共通化とBPOの管理プラットフォーム構築
株主還元への応答 連結配当性向30%を目処 第10期の目標25%から引き上げた。第11期の年間配当は1株13円
自己株式の処分 2,300,000株を処分 第11期に公募および第三者割当で処分した。処分価額の総額は3,781百万円
議決の結果 取締役5名選任を原案どおり可決 南部靖之・竹中平蔵・深澤旬子・山本絹子・若本博隆が就任した
可決の要件 出席した株主の議決権の過半数 議決権行使結果の開示はなく、この総会の賛成率は遡れない

出所:パソナグループ 有価証券報告書 第10期・第11期【大株主の状況】【対処すべき課題】【配当政策】【株主資本等変動計算書関係】/第11期定時株主総会 招集ご通知・決議ご通知

エキスパートサービス(人材派遣)の売上高とセグメント利益

パソナグループ:エキスパートサービス(人材派遣)の売上高とセグメント利益

(百万円) 売上高セグメント利益 備考
2013年5月期 176,1842,661
2014年5月期 174,8162,872
2015年5月期 186,0802,485
2016年5月期 217,0571,959 利益率0.9%。
2017年5月期 230,8732,297
2018年5月期 256,8285,075 第12期の区分変更後の組替値は売上259,560・利益5,135
2019年5月期 270,2407,353 報告セグメントを「エキスパートサービス、BPOサービス他」に変更
2020年5月期 266,3539,543
2021年5月期 274,95717,543
2022年5月期 304,06418,793
2023年5月期 303,16415,132
エキスパートサービスの売上高と利益率
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:パソナグループ 有価証券報告書 第6〜16期【セグメント情報等】

自己資本利益率と自己資本比率

パソナグループ:自己資本利益率と自己資本比率

(%) 自己資本利益率自己資本比率 備考
2013年5月期 2.929.3
2014年5月期 2.527.9
2015年5月期 124.1
2016年5月期 1.222.2
2017年5月期 △0.720.1 親会社株主に帰属する当期純損失129百万円。キャンペーンの直前の期
2018年5月期 620.9 当期純利益1,288百万円。経常利益は6,631百万円で前期の1.5倍
2019年5月期 7.623.7
2020年5月期 222.7
2021年5月期 19.425.2
2022年5月期 19.624.5
2023年5月期 11.719.6
キャンペーンの半年後・2018年5月期末の大株主
  • 南部靖之 37%
  • 南部エンタープライズ 9%
  • BNYM NON-TREATY DTT 5%
  • OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND 3%
  • JP MORGAN CHASE BANK 380621 2%
  • その他 43%

出所:パソナグループ 有価証券報告書 第10期・第11期・第16期【主要な経営指標等の推移】

1株当たり年間配当額の推移

パソナグループ:1株当たり年間配当額の推移

(円) 1株当たり配当額 備考
2014年5月期 10
2015年5月期 12
2016年5月期 12
2017年5月期 12 配当性向109.6%。連結配当性向の目標は25%としていた
2018年5月期 13 配当の総額は514百万円。連結配当性向の目処を30%へ引き上げた
2019年5月期 18
2020年5月期 19
2021年5月期 30
2022年5月期 35
2023年5月期 35
1株当たり年間配当額
1株当たり配当額(円)

出所:パソナグループ 有価証券報告書 第10期・第11期・第16期【主要な経営指標等の推移】(提出会社)

定時株主総会の議案別賛成率

パソナグループ:定時株主総会の議案別賛成率

(%) 代表取締役の選任株主提案 備考
2024年8月総会(第17期) 88.2− 南部靖之。ほかの取締役4名はいずれも92.6%
2025年8月総会(第18期) 92.5− 若本博隆。中尾慎太郎99.5%、南部真希也94.1%
2026年8月総会(第19期) 90.421 若本博隆。株主提案は創業家株主からの自己株式取得で否決

出所:パソナグループ 臨時報告書(第17期・第18期・第19期定時株主総会における議決権行使結果)

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参考文献
出典・参考

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