小島秀夫氏の退社とコジマプロダクション解散 ── モバイル収益重視への経営資源再配分
看板クリエイターを手放してでも、コナミはなぜモバイルの継続収益を選んだか
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- 概要
- 2015年3月、コナミが開発本部体制への機構改革を発表して小島秀夫監督を新体制の役員名簿から外し、同年12月15日付で小島氏が契約期間満了によりコナミを退社してコジマプロダクションを設立した経営判断。モバイル・ソーシャルゲームの収益比重が高まるなかでの開発体制の組み替えであった。
- 背景
- 2012年6月に上月拓也氏が社長に就任してモバイルシフトを主導する一方、2010年に配信を始めたソーシャルゲーム「ドラゴンコレクション」等が月次数十億円規模の収益を生み、社内の優先順位はコストと時間のかかる大作コンソール開発から運用型のモバイル事業へ傾いていった。
- 内容
- 2015年3月4日発表の機構改革で開発本部体制へ移行し、小島秀夫氏の名前は新役員体制から消えた。小島プロダクションは組織として解体され、同年12月15日付で小島氏はコナミを退社、新スタジオ「コジマプロダクション」を設立して独立した。
- 含意
- コナミは「メタルギアソリッドV」を最後に大型自社AAA開発を縮小し、「遊戯王」「実況パワフルプロ野球」といった運用型IPとモバイルへ経営資源を集中した。デジタルエンタテインメント事業の利益はFY14の169億円からFY18に438億円へ伸びた一方、看板クリエイターの離反というブランド面の代償を伴った。
収益効率と、クリエイターというブランド資産
この決断の核心は、財務の危機対応ではなく、収益効率という物差しで開発体制そのものを組み替えた点にある。月次数十億円を稼ぐ運用型のモバイル事業に対して、開発費と開発期間のかさむ大作コンソール開発は、たとえ批評的な評価が高くとも、経営の優先順位では後退を迫られた。看板クリエイターとその制作組織を体制の外へ置くという選択は、創業家出身の上月拓也社長のもとで進んだモバイルシフトの、もっとも目に見える形での帰結であったとみることができる。
もっとも、この判断がもたらしたものは財務指標だけでは測れない。小島秀夫氏の退社は海外メディアでも広く報道の対象となり、ゲーム業界で「クリエイターを軽んじる会社」というコナミのイメージを長く形づくった。デジタルエンタテインメント事業の利益成長という数字の上では成功した組み替えが、ブランドという別の資産にどれほどの代償を強いたのか——収益効率を徹底したコナミの経営スタイルを評価するとき、この問いは今日もなお付きまとっているといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
月次数十億円のソーシャルゲームと、開発費のかさむ大作コンソール
2012年6月、創業者の子息である上月拓也氏が代表取締役社長に就任し、モバイル・ソーシャルゲームへ経営資源をシフトする陣頭指揮を執った。折しも2010年に配信を始めたソーシャルゲーム「ドラゴンコレクション」が月次数十億円規模の売上を生む収益源に育っており、コストと時間のかかるコンシューマー(家庭用)ゲーム開発の優先順位は社内で相対的に下がりつつあった[1]。
一方、小島秀夫監督が率いる小島プロダクションは、開発費・開発期間ともに大きい大作コンソールタイトル「メタルギアソリッドV」の開発を続けていた。運用型のモバイル事業が高い利益率で成長するなか、開発コストの重い大作コンソール開発は収益効率の面で経営陣との緊張を強めていった[2]。
決断
機構改革で外れた小島秀夫氏
2015年3月4日、コナミは開発本部体制への移行と役員人事を発表した。2014年7月に導入していたコンテンツオフィサー制度は見直され、それまでエグゼクティブコンテンツオフィサーの肩書きを持っていた小島秀夫氏の名前は、新しい役員体制の発表に記されていなかった[3]。
3月16日付で新体制へ正式に移行すると、小島プロダクションの看板やロゴは公式サイトから外され、コナミの広報担当者は制作本部体制への移行に伴って「小島プロダクションは組織としてなくなった」ことを認めた。4月には共同開発中だったホラーゲーム「P.T.」(サイレントヒルズの体験版)がPlayStation Storeでの配信を終え、看板クリエイターとその開発体制を実質的に解体する一連の措置が進んだ[4]。
結果
退社、独立、そして運用型IPへの資源集中
小島秀夫氏は「メタルギアソリッドV: ザ・ファントム・ペイン」を2015年9月に発売した後、同年12月15日付で契約期間満了によりコナミを退社した。同日、新川洋司氏や今泉健一郎氏ら旧小島プロダクションのメンバーとともに新会社「コジマプロダクション」を設立し、独立を発表した[5]。
コナミはMGSVを事実上最後の大型自社AAA開発として、以後は「遊戯王」「実況パワフルプロ野球」等の既存IPをモバイルで運用する事業モデルへ経営資源を集中させた。デジタルエンタテインメント事業のセグメント利益はFY14の169億円からFY18に438億円へと2.6倍に伸び、財務面ではモバイルシフトの効果が数字に表れた一方、看板クリエイターの離反はコナミの対外的なブランドイメージに長く影を落とした[6]。
- コナミグループ 有価証券報告書【沿革】
- コナミ 有価証券報告書(2015年3月期・連結)
- DAMONGE(2015年12月20日)「KONAMIの社風や経営陣との対立など、元KONAMI幹部が小島秀夫氏の退職騒動を語る」
- Game*Spark(2015年12月30日)「【特集】小島監督騒動を時系列で振り返る―コナミ退社、『P.T.』停止、コジプロ解散から独立まで」
- ねとらぼ(2015年12月16日)「小島秀夫監督がKONAMIを退職 契約期間満了につき」