コナミグループ 開発本部制への移行とモバイル重視 看板クリエイターの離脱と、モバイル収益重視への経営資源の再配分
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2015年3月4日、コナミは開発本部体制への機構改革を発表し、新しい役員体制から小島秀夫氏の名前が消えた。小島プロダクションは組織として解体され、同年12月15日付で小島秀夫氏は契約期間満了により退社し、コジマプロダクションを設立して独立した。
この経緯について、会社の公表資料に記載はない。同じ時期に公表資料の上で進んだのは、上場市場の整理、持株会社への商号変更、そしてセグメント区分の組み替えである。
- 背景
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2010年に配信を始めたソーシャルゲーム「ドラゴンコレクション」のヒット以降、モバイル向けの運用型タイトルが収益源に育った。2014年3月期には、モバイルゲームのような代替プラットフォームの人気によって家庭用ゲームの需要が侵食されうるという項目が、事業のリスクに加わっている。
同じ期、グループ全体の開発・制作費は382億47百万円と過去最大に積み上がり、うち329億93百万円をデジタルエンタテインメント事業が占めた。開発・制作スタッフは2,370名で、総従業員のおよそ43%にあたる。
- 内容
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機構改革と同じ年、事業の輪郭も組み替えられた。2015年4月24日にニューヨーク証券取引所の上場を廃止し、10月1日付でコナミホールディングス株式会社へ商号を変更、同日スポーツ事業の健康商品部門を新設分割している。
2017年3月期の第2四半期にはアーケードゲーム部門をデジタルエンタテインメント事業から外し、遊技機と一体化してアミューズメント事業とした。残ったデジタルエンタテインメント事業の区分説明は、モバイル・カード・家庭用の順に並び替えられている。
- 含意
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組み替えは開発投入の縮小をともなった。グループ全体の開発・制作費は2015年3月期の364億29百万円から2016年3月期の257億9百万円へ29.4%減り、開発・制作スタッフも2,222名から1,959名へ減った。
一方でデジタルエンタテインメント事業のセグメント利益は2015年3月期の169億83百万円から2019年3月期の438億33百万円へ2.6倍に伸びた。少ない開発費でより高い利益率を得る構造への転換は、数字の上では成った。ただし看板クリエイターの離反というブランド面の代償をともなっている。
いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
収益効率と、クリエイターというブランド資産
この決断の核心は、財務の危機対応ではなく、収益効率という物差しで開発体制そのものを組み替えた点にある。グループ全体の開発・制作費は2016年3月期に257億9百万円と前期から29.4%落ち、同じ期にデジタルエンタテインメント事業の利益率は17.6%から26.9%へ跳ねた。開発費と開発期間のかさむ大作コンソール開発は、たとえ批評的な評価が高くとも、収益効率の物差しの上では後退を迫られたのだろう。看板クリエイターとその制作組織を体制の外へ置くという選択は、創業家出身の上月拓也社長のもとで進んだモバイルシフトの、もっとも目に見える形での帰結であった。
もっとも、この判断がもたらしたものは財務指標だけでは測れない。小島秀夫氏の退社は海外メディアでも広く報道の対象となり、ゲーム業界で"クリエイターを軽んじる会社"というコナミのイメージを長く形づくった。デジタルエンタテインメント事業の利益成長という数字の上では成功した組み替えが、ブランドという別の資産にどれほどの代償を強いたのか——収益効率を徹底したコナミの経営スタイルを評価するとき、この問いは今日もなお付きまとっているといえる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
事業構成の組み替え
事業構成の組み替え
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 開発体制の再編 | 会社の公表資料に記載がない | 小島秀夫氏の退社と小島プロダクションの解散は、有価証券報告書のどの章にも出てこない |
| ニューヨーク証券取引所の上場廃止 | 2015年4月24日 | 4月13日に申請。東京証券取引所とロンドン証券取引所の上場は維持した |
| 商号変更 | コナミホールディングス株式会社へ | 2015年6月26日の第43回定時株主総会で決議し、10月1日付で効力が発生した |
| スポーツ事業の新設分割 | コナミスポーツライフを設立 | 2015年10月1日付。健康商品の開発・製造・販売を分割し、同日コナミスポーツクラブへ商号変更 |
| セグメント区分の変更 | アーケードゲームをアミューズメント事業へ | 2017年3月期の第2四半期から。遊技機事業と一体化しBtoBとして集約し直した |
| 事業区分の記載順 | モバイル→カード→家庭用 | 2015年3月期はモバイル→家庭用→カードの順。家庭用ゲームが末尾へ下がった |
出所:コナミ/コナミホールディングス 有価証券報告書 第43〜45期(沿革・事業の内容・株式の状況・セグメント情報)
開発・制作費の推移
コナミグループ:開発・制作費の推移
| (百万円) | デジタルエンタテインメント事業 | グループ全体 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2010年3月期 | 29,224 | 31,998 | 開発・制作スタッフはグループ全体で2,440名 |
| 2011年3月期 | 28,977 | 31,620 | |
| 2012年3月期 | 29,613 | 33,243 | |
| 2013年3月期 | 31,180 | 35,555 | |
| 2014年3月期 | 32,993 | 38,247 | 開発・制作費は過去最大。スタッフは2,370名で総従業員のおよそ43% |
| 2015年3月期 | 31,034 | 36,429 | 機構改革を発表した期。開発・制作スタッフは2,222名 |
| 2016年3月期 | 21,589 | 25,709 | 全体で前期比29.4%減。開発・制作スタッフは1,959名まで減った |
| 2017年3月期 | 16,399 | 23,945 | アーケードゲーム分6,368はアミューズメント事業へ移った |
| 2018年3月期 | 19,694 | 27,180 | |
| 2019年3月期 | 22,608 | 30,193 | |
| 2020年3月期 | 24,040 | 31,429 |
出所:コナミ/コナミホールディングス 有価証券報告書 第38〜48期【研究開発活動】。2017年3月期から名称が「開発・制作費」から「研究開発費」に変わった
デジタルエンタテインメント事業の売上高と利益
コナミグループ:デジタルエンタテインメント事業の売上高と利益
| (百万円) | セグメント売上高 | セグメント利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2014年3月期 | 103,733 | 13,954 | IFRSの適用開始に伴う組替値。米国会計基準では利益11,738 |
| 2015年3月期 | 96,673 | 16,983 | |
| 2016年3月期 | 132,578 | 35,669 | 翌期の区分変更に伴う組替後は売上114,970・利益29,843 |
| 2017年3月期 | 105,151 | 33,759 | アーケードゲームがアミューズメント事業へ移った後の区分 |
| 2018年3月期 | 119,548 | 37,405 | |
| 2019年3月期 | 140,955 | 43,833 | |
| 2020年3月期 | 152,725 | 43,198 |
出所:コナミ/コナミホールディングス 有価証券報告書 第43〜48期(セグメント情報。外部顧客に対する売上高)
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- コナミグループ 有価証券報告書【沿革】
- コナミ 有価証券報告書(2015年3月期・第43期)
- コナミホールディングス 有価証券報告書(2016年3月期・第44期)
- コナミホールディングス 有価証券報告書(2017年3月期・第45期)
- DAMONGE(2015年12月20日)
- Game*Spark(2015年12月30日)
- ねとらぼ(2015年12月16日)