IHI IHI原動機の燃費データ改ざん 「技術を欺いた」不正の露見
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何をなぜ決めたか
- 背景
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燃料消費率は顧客との契約仕様であると同時に、窒素酸化物の排出規制への適合を支える数値でもある。IHI原動機は2003年2月に新潟鐵工所から承継した原動機事業を源流とし、2023年4月には大型エンジン及びその付随製品等に関する事業を三井E&Sへ譲渡していた。縮小が進むその現場で、船舶用エンジン及び陸上用エンジンの試運転記録に不適切な修正が加えられていた。
- 内容
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2024年4月24日、子会社のIHI原動機が製造する船舶用エンジン及び陸上用エンジンの試運転記録に不適切な修正が行なわれていたことを公表した。
5月1日に弁護士をはじめとする外部有識者を中心とする特別調査委員会を発足させ、関係者へのヒアリングを進めた。8月21日には事実関係の確認を終え、NOx放出量の確認結果への対応方針を策定したうえで、調査報告書を国土交通省へ提出した。
- 対応
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10月30日、特別調査委員会の調査結果及び提言を踏まえ、IHIとIHI原動機がそれぞれ再発防止策を策定・公表した。11月6日には経営責任を明確にするため、経営陣の報酬返上を決めている。
2025年2月7日からは対象の顧客へ燃費補償実施の案内を始めた。検査プロセスの自動化導入や、全事業を対象とした品質検査業務プロセス監査も展開している。
- 含意
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2019年に瑞穂工場の民間航空機エンジン整備事業で発生した不適切な検査事案を受け、グループをあげて再発防止に取り組んできた矢先の再発であり、これまでの取組みは不十分だった。その後も2024年7月に新潟トランシスの除雪車の除雪性能、2025年3月にIHI運搬機械の独占禁止法違反の認定、2026年3月期にはIHIエアロスペースがJAXAから5か月間の競争参加資格停止処分と、子会社の不適切事案は途切れていない。
いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
数字を扱う会社の、数字への信頼
この不正の重さは、金額の大小ではなく、それが起きた時機にあるのだろう。2019年に瑞穂工場の民間航空機エンジン整備事業で不適切な検査が発覚し、グループをあげて再発防止に取り組んでいる最中の再発だった。燃料消費率は顧客との契約仕様であると同時に、窒素酸化物の排出規制への適合を支える数値でもある。その数値に手を入れるという選択が、是正の只中でなお現場に残っていたことは、個人の逸脱というより、数値を良く見せることを許してきた組織の空気の問題を示している。
もっとも、発覚後の運びは速かった。公表から1週間で特別調査委員会を立ち上げ、4か月で国土交通省への報告、半年で再発防止策と経営陣の報酬返上まで進めている。だが原動機を含む資源・エネルギー・環境のセグメント利益は2023年3月期の262億円から2026年3月期には59億円まで落ち、その後も新潟トランシス、IHI運搬機械、IHIエアロスペースと子会社の不適切事案は途切れていない。事業の縮小と信頼の毀損が同じ方向に進むなかで、改善はなお道半ばにあるだろう。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
発覚と対応の経緯
発覚と対応の経緯
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 公表 | 2024年4月24日 | 子会社IHI原動機が製造する船舶用・陸上用エンジンの試運転記録に不適切な修正が判明 |
| 不正の内容 | 試運転記録の不適切な修正 | 対象は船舶用エンジン及び陸上用エンジンの燃料消費率に関する記録 |
| 特別調査委員会 | 2024年5月1日発足 | 弁護士をはじめとする外部有識者を中心に構成。関係者へのヒアリング等を実施した |
| 国土交通省への報告 | 2024年8月21日 | 事実関係の確認を終え、NOx放出量の確認結果への対応方針を策定して調査報告書を提出 |
| 再発防止策 | 2024年10月30日に策定・公表 | 特別調査委員会の調査結果及び提言を踏まえ、IHIとIHI原動機がそれぞれ策定した |
| 経営陣の処分 | 報酬返上 | 2024年11月6日、経営責任を明確にするため経営陣の報酬返上を決めた |
| 顧客への対応 | 2025年2月7日から燃費補償 | 対象の顧客へ燃費補償実施の案内を開始した |
| 業績への影響額 | 金額の開示なし | 第208期の営業利益に不適切行為に関連した費用の計上の影響があったとの記載にとどまる |
出所:株式会社IHI 有価証券報告書 第207期(2024年3月期)・第208期(2025年3月期)【会社の対処すべき課題】【事業等のリスク】/2024年度第2四半期決算説明会 主な質疑応答
原動機を含む資源・エネルギー・環境セグメントの推移
IHI:原動機を含む資源・エネルギー・環境セグメントの推移
| (百万円) | 資源・エネルギー・環境 売上収益 | 資源・エネルギー・環境 セグメント利益 | 資源・エネルギー・環境 減損損失 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2019年3月期 | 374,780 | 3,337 | − | |
| 2020年3月期 | 320,979 | 3,976 | 693 | |
| 2021年3月期 | 315,722 | 19,181 | 605 | |
| 2022年3月期 | 342,430 | 22,992 | 193 | |
| 2023年3月期 | 369,721 | 26,264 | 421 | |
| 2024年3月期 | 402,503 | 17,715 | 850 | 2024年4月24日に試運転記録の不適切な修正を公表した期 |
| 2025年3月期 | 408,301 | 16,136 | 282 | 再発防止策の策定・公表と経営陣の報酬返上を決めた期 |
| 2026年3月期 | 373,475 | 5,959 | 2,970 |
出所:株式会社IHI 有価証券報告書 第203〜209期(連結・IFRS・セグメント情報)
従業員数の推移
IHI:従業員数の推移
| (人) | 連結従業員数 | 資源・エネルギー・環境 部門従業員数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2019年3月期 | 29,286 | 6,467 | |
| 2020年3月期 | 28,964 | 6,812 | |
| 2021年3月期 | 29,149 | 6,595 | |
| 2022年3月期 | 28,801 | 6,514 | |
| 2023年3月期 | 28,486 | 6,626 | |
| 2024年3月期 | 28,237 | 6,434 | |
| 2025年3月期 | 27,990 | 5,973 | |
| 2026年3月期 | 26,224 | 5,733 | 運搬機械事業とコンクリート建材事業の譲渡が連結従業員数の減少に効いている |
出所:株式会社IHI 有価証券報告書 第203〜209期(従業員の状況・セグメント情報)
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- 国土交通省「株式会社IHI原動機による舶用エンジン等の燃料消費率に関するデータ改ざん事案について」(2024年4月24日) https://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji07_hh_000318.html
- IHI 適時開示「株式会社IHI原動機の船舶用及び陸上用エンジンの試運転記録における不適切行為について」
- IHI 決算説明会 質疑応答「2023年度決算説明会 主な質疑応答」
- IHI 決算説明会 質疑応答「2024年度第2四半期決算説明会 主な質疑応答」
- IHI 有価証券報告書「第207期(2024年3月期)【会社の対処すべき課題】【事業等のリスク】」
- IHI 有価証券報告書「第208期(2025年3月期)【会社の対処すべき課題】【事業等のリスク】」
- IHI 有価証券報告書「第209期(2026年3月期)【事業等のリスク】」
- IHI 統合報告書「IHI統合報告書2025「組織風土の改革に向けて」」