IHIの直近の業績・経営課題と展望

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IHIの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高16,268億円YoY+23%
2025/3売上総利益3,745億円YoY+158.5%
2025/3販売費及び一般管理費2,236億円YoY+5.1%
2025/3営業利益1,435億円YoY+304.6%
2016/3経常利益97億円YoY▲82.8%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益1,127億円YoY+265.3%
2025/3自己資本比率20.3%YoY+3.6pt
2025/3有利子負債合計3,894億円前年比▲59,757億円
2025/3現金同等物期末残高1,368億円YoY▲1.4%
経営トップ井手博代表取締役社長
2025/3従業員数27,990前年比▲247人
2025/3平均給与813万円前年比▲23万円
歴史的背景1853年のペリー来航で江戸幕府が石川島に設けた洋式造船所が源流で、1889年に渋沢栄一氏の経営参画で法人化した。1929年に航空機・自動車部門を分離、1960年の播磨造船所合併で石川島播磨重工業へ、2002年の造船分社化と2007年「IHI」改称で航空エンジン中心の事業構造へ収斂した。
経営課題2021年6月発覚の航空エンジン検査問題でFY23は営業赤字▲701億円・最終赤字▲682億円となった。合併・分社化・改称はいずれも需要急減や統合破談など外部要因が起点で主力が動いてきた経緯にあり、航空エンジン集中も検査問題後の赤字で集中の偏りが露呈した。
経営方針井手博社長体制は2026年5月に新中期経営計画を策定する予定で、航空エンジンに加え原子力・アンモニアの2領域を成長軸に据える。エネルギーセグメントは海外事業の構造改革で止血を完了し、3〜5年以内の営業利益率10%超達成を目標に置いた。FY25フリーキャッシュフロー見通しは約1,000億円。
主な投資2026年初頭に住友重機械工業からパーキング事業を取得し、地下式駐車場のシェアと自社のタワー型・多段式トップシェアを組み合わせ、ライフサイクルビジネス収益(LCB)の拡大を狙う。原発部品の戦略的設備投資も本格化し、米国データセンター需要と国内原発再稼働を引きに据える。

井手社長体制下での原子力・アンモニア追加と航空エンジン集中の見直し

1929年の航空機・立川飛行機分離と自動車・いすゞ自動車前身分離は戦時統制下の事業切り出しで、1957年の田無工場ジェットエンジン製造開始時点でも売上の約8割は陸上部門だった。1960年12月の業界3位・播磨造船所との合併は、石川島側東京工場の建造能力2万2,000GT級を相生のドックで4万GT級へ広げる設備交換と、播磨側の造船比率9割の脆弱性を石川島の陸上部門で支える事業ポートフォリオ交換が同時に組まれた。1970年代のオイルショックでタンカー需要が減退し、1979年・1987年の二度の人員削減を経て、2001年の川崎重工との船舶海洋事業統合計画は5カ月で白紙撤回となり、2002年に住友重機械との統合で造船を分社化、2007年7月にIHIへ商号変更した。航空エンジンは合併と分社化を経た残余として主力に残り、2021年6月発覚の航空エンジン検査問題でFY23は営業赤字▲701億円・最終赤字▲682億円となり、集中の偏りが赤字で露呈した。

井手博社長体制は2026年5月に新中期経営計画の方向性を示す予定で、2007年のIHI改称以降に積み上がった航空エンジン中心の事業構造へ、原子力とアンモニアの2領域を加えて経営資源を配分し直す。FY25通期のフリーキャッシュフロー見通しは約1,000億円。エネルギーセグメントは海外事業の構造改革で止血を完了し、原動機・原子力・カーボンソリューションの国内事業を中心に3〜5年以内の営業利益率10%超達成を中期目標に置いた。

2026年初頭、IHIは住友重機械工業からのパーキング事業取得を発表した。IHIは機械式駐車場のタワー型・二段多段式でトップシェア、住友重機械は地下式で高シェアを保有しており、IHIは異なるカテゴリのトップ同士を組み合わせてライフサイクルビジネス収益(LCB)の中長期拡大を狙う。ライトアセット型でキャッシュが稼げる領域への成長投資を継続し、原子力事業では原発部品の戦略的設備投資を本格化、米国データセンター向けの電力需要急増と国内原発再稼働の流れを取り込む。航空・宇宙・防衛セグメントのスペアパーツ売上はCAGR20%の見通しを据え置き、防衛分野の売上増と民間エンジンMROの積み増しが第4四半期以降の利益回復を牽引する設計とした。

したがって、IHIは1929年の航空機・自動車部門分離、1960年の播磨合併、2002年の造船分社化、2007年のIHI改称といずれも外部要因が起点で主力を入れ替えてきた。1853年のペリー来航で幕府が設けた洋式造船所からの始まり自体、幕府の海防強化策が起点である。2021年の航空エンジン検査問題と682億円赤字は、合併と分社化を経て残った単一事業集中の偏りを決算で露呈させた。井手社長体制が2026年5月に示す新中計で、航空エンジン・原子力・アンモニアの3軸配分と住友重機械パーキング事業の取り込みが進むことになり、過去の主力交代がいずれも外部要因起点だったのに対し、社内主導で配分を選択した最初の事例となる。

IHIの業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / JGAAPFY162017/3連結 / IFRSFY172018/3連結 / IFRSFY182019/3連結 / IFRSFY192020/3連結 / IFRSFY202021/3連結 / IFRSFY212022/3連結 / IFRSFY222023/3連結 / IFRSFY232024/3連結 / IFRSFY242025/3連結 / IFRS
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円15,394+5.7%14,863−3.4%15,903+7.0%14,834−6.7%13,865−6.5%11,151−19.6%11,729+5.2%13,529+15.3%13,226−2.2%16,268+23.0%
資源・エネルギー・環境億円4,4334,1784,8773,7483,2103,1573,4243,6974,0254,083
社会基盤億円1,6621,6541,559
産業システム・汎用機械億円3,9334,0114,4844,3143,9203,6333,6984,2824,5714,756
航空・宇宙・防衛億円4,9724,6954,6144,9023,6772,4872,6233,6032,6695,527
売上原価億円13,20412,44013,16912,05710,3069,3299,63510,70911,77712,523
売上総利益億円2,1902,4232,7342,7772,3261,8002,0942,8201,4493,745
販管費億円1,9701,9492,0121,9521,8811,6421,7662,0122,1282,236
営業利益YoY億円220−65.1%474+114.9%723+52.5%825+14.1%479−42.0%280−41.6%815+191.5%820+0.6%-701−185.5%1,435+304.6%
資源・エネルギー・環境億円-23-107-1483340192230263177161
社会基盤億円17115194
産業システム・汎用機械億円127175189231130114129180128108
航空・宇宙・防衛億円584530601464208-402-94362-1,0291,228
経常利益YoY億円97−82.8%
当期純利益YoY億円15−83.2%52+243.2%83+58.0%399+381.1%128−67.9%29−77.2%661+2,161%445−32.6%-682−253.1%1,127+265.3%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%18.618.819.921.018.821.219.020.916.720.3
有利子負債比率%16.416.915.617.326.627.219.820.321.417.4
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円9536549904641452281,1425416211,776
投資CF億円-355-290-480-793-759-372279-523-517-588
財務CF億円-475-219-5731651,153-137-1,215-240-26-1,162
従業員
連結従業員数29,49429,65929,70629,28628,96429,14928,80128,48628,23727,990
単体従業員数8,5718,6308,2568,0117,7417,7967,7797,7687,8407,911
平均年収(単体)万円749718743763799766736793836813

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY25「グループ経営方針2023」最終年度。低収益事業の構造改革を加速、コンクリート建材事業譲渡関連や車両過給機事業譲渡など事業再編費用を計上。関税影響▲200億円も織込み営業利益は前年度並みを確保。年間配当は120円→140円へ20円増配を予定。2025年度組織再編で都市開発を「社会基盤」から「その他」へ付替え。

決算説明会

https://www.ihi.co.jp/ir/library/statements/_cms_conf01/__icsFiles/afieldfile/2025/05/08/202503-ks_7.pdf
FY24「グループ経営方針2023」(FY23〜FY25)2年目。車両過給機事業で固定資産減損を含む構造改革費用を計上、持続的高成長事業体への変革に向けた構造改革を継続。航空エンジン分野(PW1100G-JM)の量産が本格化、エンジン需給変化で増産フェーズへ移行。

決算説明会

https://www.ihi.co.jp/ir/library/statements/_cms_conf01/__icsFiles/afieldfile/2024/05/08/ir240508_s0_1.pdf
FY23「プロジェクトChange」最終年度から「グループ経営方針2023」初年度への移行回。構造改革費用を積極的に織込みながらも営業利益確保。2023年4月にIHI原動機の舶用大型エンジン事業を三井E&SHDに譲渡、事業ポートフォリオの選択集中を継続。

決算説明会(訂正版)

https://www.ihi.co.jp/ir/library/statements/_cms_conf01/__icsFiles/afieldfile/2023/07/26/J-IR_materials.pdf
FY22「プロジェクトChange」(2020〜2022年度)2年目。SBU再編に合わせた組織変更、車両過給機・農機事業など複数事業で構造改革費用を計上。LCB(ライフサイクルビジネス)拡大とカーボンソリューション事業の創出を継続。

決算説明会

https://www.ihi.co.jp/ir/library/statements/_cms_conf01/__icsFiles/afieldfile/2022/05/10/2021FY-Financial_Results-IFRS_7.pdf
FY21「プロジェクトChange」(2020〜2022年度)始動。成長事業創出のためSBUを再編しカーボンソリューションSBUを新設。農機事業での構造改革費用、コスト構造改革・販管費削減・資産売却を一体で推進。

決算説明会

https://www.ihi.co.jp/ir/library/statements/_cms_conf01/__icsFiles/afieldfile/2021/05/13/2020-202103_Financial_results_for_FY2020_4Q_2.pdf

アニュアルレポート / 統合報告書

年度経営の振り返り報告資料
FY26「グループ経営方針2023」(FY23〜FY25)の進捗を整理。航空エンジンの燃費データ改ざん・除雪車性能試験における部品取換など連続した不正事案を踏まえ、不適切行為を起こさないコンプライアンスの徹底とグループガバナンス強化を最重要課題に位置付ける。キャッシュ・フロー改善と財務基盤強化を継続。

統合報告書2025

https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/IHI_Integrated_Report2025_all.pdf
FY25「グループ経営方針2023」(FY23〜FY25)2年目。2023年度のPW1100G-JMエンジン需給対応や、航空エンジン分野での過去の不適切検査事案、独禁法違反の嫌疑、燃費データ不正への対応を整理。2025年度経営目標は営業利益率7.5%・税引後ROIC 8%以上、CCC 100日以下を提示。

統合報告書2024

https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/IHI_Integrated_Report2024_open.pdf
FY24「プロジェクトChange」から「グループ経営方針2023」(FY23〜FY25)への移行回。航空エンジン・ロケット分野を成長事業、クリーンエネルギー(アンモニア等)を育成事業と位置付ける。2023年4月にIHI原動機の舶用大型エンジン事業を三井E&SHDへ譲渡。「IHIカーボンニュートラル2050」を長期目標として再提示。

統合報告書2023

https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/integrated2023_all.pdf
FY23「プロジェクトChange」(2020〜2022年度)最終年度。次期中期経営計画(2023〜2025年度)の策定議論を開示、2026年度〜のイノベーションを通じた持続的成長フェーズと「IHIカーボンニュートラル2050」の連続シナリオを提示。グループ経営方針2010〜2019・プロジェクトChangeの財務戦略推移を総括。

統合報告書2022

https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/integrated2022_all.pdf
FY22「プロジェクトChange」(2020〜2022年度)に基づくESG価値創造フェーズの進展。LCB(ライフサイクルビジネス)拡大、成長事業(航空エンジン・ロケット、カーボンソリューション)の重点投資、トランジションボンド発行による財務戦略を解説。

統合報告書2021

https://www.ihi.co.jp/ir/library/annual/pdf/integrated2021_all_print-20220120.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書 沿革
IHI社史
日本近代造船史
IHI 有報
日経ビジネス
有価証券報告書
決算説明資料
IHI プレスリリース
IR 決算説明QA FY25-3Q 2026/2
IHI プレスリリース 経営体制
プレスリリース パーキング事業買収
IR 決算説明QA FY25-3Q