アサヒグループHD SABMiller中東欧買収 取得対価899,077百万円のビール事業取り込みと、欧州の柱化
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2016年12月13日、アサヒはAB InBevとの間で、AB InBevが買収したSABMillerが保有していたチェコ・スロバキア・ポーランド・ハンガリー・ルーマニア5か国の事業と関連資産を取得する株式売買契約を締結した。取得予定金額は7,300百万ユーロで、翌2017年3月31日に取得を完了し、取得対価は899,077百万円となった。
- 背景
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国内ビール市場は人口減と酒離れで縮小が続き、スーパードライで築いた国内首位だけでは成長を描きにくくなっていた。前年10月には旧SABMillerのイタリア・オランダ・英国事業を取得しており、会社が挙げた理由は、本件が西欧事業との親和性が高く、欧州全体に強固な成長ネットワークを築けることであった。
- 内容
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買収の対象は5か国の事業会社の全株式と、Pilsner Urquell・Kozel・Tyskieを含む知的財産権であった。対象事業は、一人当たりビール消費量が世界で最も多いチェコをはじめ、ポーランド・ハンガリー・ルーマニアで首位である。取得金額の全額に対して融資予約契約を締結し、資金を手当てしたうえで契約に臨んだ。
- 含意
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取得で発生したのれんは427,995百万円、無形資産は484,665百万円で、うち商標権は35〜38年の定額法で償却される。2018年12月期に暫定的な会計処理が確定したが、金額の変動はなかった。一方、輸出を担う欧州(インターナショナル)事業では2021年12月期にのれん11,141百万円の減損を計上している。
いつ何が起きたか 5件
筆者の見解
成熟市場を買収するという逆張りの重さ
この判断の特徴は、伸びる市場ではなく、伸びきった市場をあえて選んだ点にある。新興国の数量成長に賭ける同業が多いなかで、アサヒは一人当たり消費量が頭打ちの先進国で、すでに定番となったブランドを丸ごと買った。対象事業は、チェコ・ポーランド・ハンガリー・ルーマニアで首位であり、強い事業基盤を背景に高い収益性を持つ事業群であった。国内でスーパードライがシェアを覆した経験が、固まった市場でこそポジションとプレミアム化で稼げるという確信を与えたと思われる。
もっとも、成熟市場を買う戦略は、数量が急には伸びない分、価格と効率で稼ぎ続ける実行力を前提とする。西欧と合わせて2年足らずで1兆2,000億円近くを投じた身のこなしは大胆だが、のれん427,995百万円と、35〜38年かけて償却する商標権を抱える判断でもあった。輸出を担う欧州(インターナショナル)事業では2021年12月期にのれん11,141百万円の減損が出ており、買った定番をどれだけ磨けるかという問いは、いまも開いたままである。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
買収の条件
買収の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 被取得企業 | Pivovary Topvar a.s. ほか15社 | Kompania Piwowarska、Ursus Breweries、Dreher Sörgyárak ほか |
| 対象 | 5か国の事業会社の全株式と関連資産 | Pilsner Urquell、Kozel、Tyskieを含む知的財産権も取得の対象となった |
| 株式売買契約の締結日 | 2016年12月13日 | 取得金額の全額に対して融資予約契約を締結したうえで契約に臨んだ |
| 契約時の取得予定金額 | 7,300百万ユーロ | |
| 取得日(企業結合日) | 2017年3月31日 | 契約から3か月半後。連結は4月からの9か月 |
| 企業結合の法的形式 | 現金を対価とした株式の取得 | |
| 取得した議決権比率 | 100.00% | Ursus Breweries SAは98.68%、Dreher Sörgyárak Zrt.は99.78% |
| 取得対価 | 899,077百万円 | 全額を現金で支払った |
| 取得関連費用 | 2,763百万円 | 販売費及び一般管理費で費用処理した |
| 受け入れた資産合計 | 672,685百万円 | 無形資産484,665百万円、有形固定資産125,376百万円を含む |
| 引き受けた負債合計 | 201,313百万円 | 非支配持分は300百万円 |
| のれん | 427,995百万円 | 2018年12月期に暫定的な会計処理が確定し、金額の変動はなかった |
| 商標権の償却 | 35〜38年の定額法 | チェコ・スロバキア分の帳簿価額は2018年12月期末で280,407百万円 |
| 取得日以降の売上収益 | 237,427百万円 | 営業利益は36,034百万円。連結は4月からの9か月にあたる |
| 期首結合と仮定した売上収益 | 2,134,546百万円 | 営業利益193,935百万円。この概算は監査証明を受けていない |
| のれんの減損 | 11,141百万円 | 2021年12月期。輸出を担う欧州(インターナショナル)事業に計上した |
出所:アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第93期(2016年12月期)【追加情報】、第94期(2017年12月期)・第95期(2018年12月期)【企業結合】
のれんと無形資産の推移
アサヒグループHD:のれんと無形資産の推移
| (百万円) | のれん | のれん及び無形資産 | 総資産 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2015年12月期 | 125,008 | 223,485 | 1,804,673 | IFRSへ組み替えた比較年度。移行日ののれんは133,705百万円 |
| 2016年12月期 | 247,322 | 499,489 | 2,094,332 | 契約を締結した期。のれんの増加は10月に連結した西欧事業による |
| 2017年12月期 | 737,947 | 1,538,679 | 3,346,822 | 中東欧5か国を4月から連結し、のれんが427,995百万円増えた |
| 2018年12月期 | 705,087 | 1,428,543 | 3,079,315 | 暫定的な会計処理が確定した期。のれんの減少は為替換算による |
| 2019年12月期 | 702,930 | 1,398,422 | 3,140,788 | |
| 2020年12月期 | 1,723,943 | 2,701,985 | 4,439,378 | 豪州のCUB事業を6月に連結し、のれんが933,142百万円増えた |
| 2021年12月期 | 1,816,862 | 2,819,634 | 4,547,748 | 欧州(インターナショナル)事業でのれん11,141百万円の減損を計上 |
| 2022年12月期 | 1,966,971 | 3,027,929 | 4,830,344 | チェコ及びスロバキア事業に配分されたのれんは331,872百万円 |
出所:アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第93〜99期(連結財政状態計算書、のれん及び無形資産)
国際セグメントの推移
アサヒグループHD:国際セグメントの推移
| (百万円) | 国際セグメントの対外部売上収益 | 国際セグメント利益 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2016年12月期 | 247,760 | △8 | 契約を締結した期。中東欧の寄与は翌期から始まる |
| 2017年12月期 | 618,526 | 34,837 | 中東欧5か国の寄与は4月からの237,427百万円 |
| 2018年12月期 | 710,227 | 77,365 | 中東欧が通年で寄与した最初の期 |
| 2019年12月期 | 698,274 | 75,923 | |
| 2020年12月期 | 792,865 | 52,089 | CUB事業が6月から加わる一方、新型コロナで業務用が減少した |
| 2021年12月期 | 1,017,447 | 111,076 | 2022年12月期から日本・欧州・オセアニア・東南アジアへ区分が変わる |
出所:アサヒグループホールディングス 有価証券報告書 第93〜99期(事業セグメント)
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参考文献
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第93期(2016年12月期)【追加情報】」
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第94期(2017年12月期)【企業結合】【のれん及び無形資産】」
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第95期(2018年12月期)【企業結合】【のれん及び無形資産】」
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第99期(2022年12月期)【のれん及び無形資産】」
- アサヒグループホールディングス 有価証券報告書「第93〜99期(連結財政状態計算書、のれん及び無形資産、事業セグメント)」