ニトリ 島忠買収でホームセンター進出 同業ではない新業態の取り込みによる事業領域の広がり

更新:

時期 2020年11月
当時の社長 似鳥昭雄
論点 中核事業への集中か、異業態への拡大か
何をなぜ決めたか
概要

ニトリホールディングスは2020年11月16日から12月28日にかけて島忠の普通株式に公開買付けを実施し、2021年1月6日付で議決権の77.04%を取得して連結子会社とした。取得原価は165,054百万円で、対価はすべて現金及び預金である。2021年5月14日には株式併合で生じた1株未満の端数を49,174百万円で取得し、島忠を完全子会社とした。

背景

ニトリはかねてよりM&Aを通じたホームセンター業界への新規参入を検討していた。コロナ禍で住まいへの意識や生活スタイルが変化し、住まいの豊かさを求める需要が表れるなか、従来の家具・インテリア用品に加えてより幅広い商品を扱う相手として島忠を選んだ。島忠は家具・インテリア雑貨と、日用品・園芸・ペット・木材・金物などのホームセンター商品を扱う小売業である。

内容

2020年10月29日の取締役会で公開買付けを決議し、11月13日に島忠と経営統合契約を締結した。ニトリは統合推進体制を構築したうえで、商品の相互補完とプライベートブランド(PB)商品開発、物流機能の共同利用によるコスト削減、首都圏・都心部へのshop in shop型店舗の相互出店、共通ポイント導入による相互送客をシナジーとして掲げた。子会社化した2021年2月期は貸借対照表のみを連結したため、島忠事業の損益は含まれていない。

含意

のれんは取得時に31,665百万円を暫定計上し、翌期の確定で19,791百万円へ減った。島忠事業は2024年3月期に店舗の土地・建物等で9,419百万円の減損損失を計上し、IFRS移行日である2023年4月1日の減損テストでは、取得時に生じたのれん19,619百万円が全額減損された。2025年5月、似鳥昭雄会長が島忠の代表取締役会長に就任している。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
筆者の見解

参入は買えても、機能は移らなかった

この判断の核心は、かねて検討してきたホームセンター業界への参入を、自力の出店ではなく1,650億円の株式取得で一度に果たした点にある。ニトリが掲げたシナジーは、商品の相互補完とPB商品の開発、物流機能の共同利用、首都圏・都心部での相互出店と、いずれも製造物流IT小売業として自社が積み上げてきた機能を島忠へ移すことを前提にしていた。取得した議決権は77.04%にとどまらず、半年足らずで端数を買い取って100%まで進めており、統合の自由度を確保する意図がうかがえる。

もっとも、この参入で買えたのは店舗と客層までだったのだろう。取得時に暫定計上したのれんは翌期の確定で4割近く縮み、IFRSへ移る際の減損テストでは全額が消えている。買収の対価のうち将来の超過収益力として説明された部分が、会計の上では残らなかったことになる。創業者自身が島忠の会長に就任したのは、現場の作り替えが計画どおりに運ばなかったことの表れとみることもできる。企画から製造、物流、販売までを自社で握る仕組みは、同じ小売でも品揃えの考え方が違う相手にはそのまま移らない。ホームセンターという業態に入る切符は買えた。そこで優位に立つ道筋を描けるかどうかは、これから問われることになる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 株式会社島忠 家具・インテリア雑貨とホームセンター商品の小売業
取得の法的形式 現金を対価とする株式取得 公開買付け(TOB)による取得
公開買付期間 2020年11月16日〜2020年12月28日
企業結合日 2021年1月6日 株式取得日。みなし取得日は2020年11月30日
取得した議決権比率 77.04% 企業結合日直前に所有していた議決権比率は0.00%
取得原価 165,054百万円 対価は現金及び預金。2021年5月14日の追加取得49,174百万円と合わせて214,228百万円
取得関連費用 1,634百万円 アドバイザリー費用等
受け入れた資産・負債 資産合計224,077百万円、負債合計50,927百万円 資産は流動46,231・固定177,845、負債は流動35,630・固定15,297
のれん 19,791百万円 10年間の均等償却。取得時は暫定31,665百万円、第50期の確定で11,874百万円減
完全子会社化 2021年5月14日 株式併合で生じた1株未満の端数を取得。取得原価49,174百万円
通期換算した影響額 売上高152,998百万円、営業利益6,425百万円 企業結合が連結会計年度の開始の日に完了したと仮定した場合の概算額。監査証明を受けていない

出所:ニトリホールディングス 有価証券報告書 第49期(2021年2月期)・第50期(2022年2月期)【企業結合等関係】

のれんと無形固定資産の推移

ニトリ:のれんと無形固定資産の推移

(百万円) のれん無形固定資産合計総資産 備考
2016年2月期 011,209414,541
2017年2月期 013,732487,814
2018年2月期 013,887550,507
2019年2月期 018,857619,286
2020年2月期 024,599683,247 買収前の最終期
2021年2月期 19,79136,874930,884 島忠を子会社化。のれんは取得時に31,665を暫定計上し、翌期の確定で11,874減
2022年2月期 22,39138,116983,840 完全子会社化に伴う追加取得49,174の分を上乗せ
2023年3月期 19,61933,0051,133,771 決算期を2月20日から3月31日へ変更し、13か月11日の変則決算
2024年3月期 17,06031,1621,238,679 島忠事業の店舗土地・建物等で減損損失9,419。のれんは割引前将来CFが帳簿価額を上回り減損せず
2025年3月期 09,3241,350,631 IFRS。移行日2023年4月1日の減損テストでのれん19,619を全額減損
2026年3月期 09,9831,571,284 IFRS
のれんと無形固定資産
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:ニトリホールディングス 有価証券報告書 第45〜52期(連結貸借対照表) / ニトリホールディングス 有価証券報告書 第53期(2025年3月期)注記「のれん及び無形資産」「初度適用」

島忠事業の業績(報告セグメント)

ニトリ:島忠事業の業績(報告セグメント)

(百万円) 売上高セグメント利益減損損失 備考
2022年2月期 137,0523,032284 日本基準。連結初年度
2023年3月期 134,3604,11253 日本基準。13か月11日の変則決算
2024年3月期 118,9642,1089,419 日本基準
2024年3月期 118,964△4,37611,053 IFRS(第53期有報の比較情報)
2025年3月期 119,143△1,2888,571 IFRS
2026年3月期 108,6997,212175 IFRS
島忠事業の売上高と利益率
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:ニトリホールディングス 有価証券報告書 第50〜54期(セグメント情報)

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出典・参考

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