第一ライフグループ 第一生命HDへ改称 保険本業の事業子会社への移管と、持株会社によるグループの統括

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時期 2016年10月
当時の社長 渡邉光一郎
論点 統治構造とグループ経営
何をなぜ決めたか
概要

2016年10月1日、第一生命保険は商号を第一生命ホールディングスへ改め、持株会社となった。国内生命保険事業は吸収分割で子会社へ承継させ、事業目的をグループ会社の経営管理等に変えている。

移行を決めたのは2015年10月30日の取締役会で、吸収分割と定款変更は2016年6月24日の第6期定時株主総会で承認された。同じ総会で監査等委員会設置会社にも移っている。渡邉光一郎社長のもとで決めた統治構造の再編である。

背景

2010年の株式会社化・上場で得た資本を元手に、2015年の米プロテクティブ生命の買収など海外・周辺事業へ業容が広がった。グループ運営を強化する枠組みとしては2012年5月15日に既存の組織をもとにした「グループ経営本部」を置いていたが、保険本業の会社が海外子会社や運用会社まで同じ法人で抱える形は、事業ごとの責任と意思決定を分けにくい。掲げた狙いは、グループベースでの柔軟な経営資源配分、傘下会社での迅速な意思決定に資するガバナンス体制、グループ運営スタイルの抜本的変革の三つである。

内容

方式は吸収分割で、株式移転ではない。2016年4月1日に100%出資で設立した第一生命分割準備株式会社を承継会社とし、同社は分割期日に第一生命保険株式会社へ商号変更した。分割に際して承継会社は普通株式5,990株を発行し、その総数を割当交付している。

承継した国内生命保険事業の経常収益は2016年3月期で42,523億円、単体42,657億円の99.7%にあたる。分割した資産は350,390億円、負債は327,374億円だった。会計処理は共通支配下の取引である。

含意

移行に合わせて報告セグメントを国内生命保険事業・海外保険事業・その他事業の3区分に改め、単一セグメントだった開示が事業別に割れた。会社はこの移行を2010年の株式会社化・上場に続く「新創業第2ステージ」と位置づけている。事業ごとに責任を負う体制を制度化したことが、のちのアイペット損害保険やベネフィット・ワンなど非保険への拡張を支える土台となった。

いつ何が起きたか 8件
筆者の見解
筆者の見解

体制を先に構築するという順番

この判断の性格は、新しい事業を買うことそのものより、事業を統括する体制を先に整えた点にある。承継した国内生命保険事業は単体の経常収益の99.7%を占め、分割した資産は35兆円を超えた。ほぼ会社そのものを子会社へ移し、残った法人を経営管理だけを担う会社に変えたことになる。会計上は共通支配下の取引で、損益にも資産にも痕跡は残らない。持株会社化は華やかな買収の陰に隠れやすい地味な一手である。だが、後年の非保険への広がりは、この土台がなければグループの構造として説明しにくかっただろう。

もっとも、体制を作れば中身がおのずと育つとは限らない。移行の翌期から事業別の開示が始まり、海外保険事業の利益は2016年3月期の603億円から2022年3月期の943億円へ伸びたが、同じ期間に国内生命保険事業も3,667億円から4,939億円へ増えており、構成比は大きくは動いていない。相互会社として相互扶助から出発した会社が、株式会社化・持株会社化を経て、いま保険の外へ顧客接点を広げようとしている。会社の輪郭をどこまで広げるのか——2016年の組織の組み替えは、その問いの入り口に置かれた一手だった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
持株会社体制への移行の条件

持株会社体制への移行の条件

科目 概要 備考
移行の決定 2015年10月30日 取締役会で、2016年10月1日を効力発生日とする持株会社体制への移行を決定
承継会社の設立 2016年4月1日 100%出資の第一生命分割準備株式会社を設立。4月8日の取締役会で吸収分割契約を決議
株主総会の承認 2016年6月24日 第6期定時株主総会で吸収分割と定款変更(商号・事業目的の変更等)の議案を承認
会社分割の方法 吸収分割 当社を分割会社、100%子会社の第一生命分割準備株式会社を承継会社とする
効力発生日(分割期日) 2016年10月1日 同日に第一生命ホールディングス株式会社へ商号変更し、事業目的を経営管理等へ改めた
承継した事業 国内生命保険事業 承継会社は同じ日に第一生命保険株式会社へ商号変更した
割当交付した株式 普通株式5,990株 承継会社が発行し、その総数を当社へ交付。100%子会社のため両社の協議で決めた
分割対象事業の経常収益 42,523億円 2016年3月期。当社単体の経常収益42,657億円の99.7%にあたる
分割した資産 350,390億円 決議時は352,518億円の見込額。効力発生日に確定して2,128億円減った
分割した負債 327,374億円 決議時は327,625億円の見込額
会計処理 共通支配下の取引 企業会計基準第21号と適用指針第10号に基づく処理。のれんに関する記載はない
統治形態 監査等委員会設置会社 持株会社化と併せて移行し、コーポレートガバナンス基本方針を定めた
承継会社の規模 資本金600億円 2017年3月末で純資産24,816億円・総資産356,866億円。代表者は稲垣精二氏

出所:第一生命ホールディングス 有価証券報告書 第114期(2016年3月期)・第115期(2017年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】【セグメント情報】

事業別のセグメント利益の推移

第一ライフグループ:事業別のセグメント利益の推移

(百万円) 国内生命保険事業利益海外保険事業利益その他事業利益 備考
2016年3月期 366,73660,3644,962 変更後の3区分で組み替えた前期の数値。開示はここから始まる
2017年3月期 339,80185,92620,733 2016年10月に持株会社へ移行し3区分を新設。調整額△21,141を引くと経常利益に合う
2018年3月期 411,59260,10448,272
2019年3月期 375,75852,770144,525 その他事業の利益は持株会社が子会社から受け取る配当金を含み、調整額で消える
2020年3月期 179,92782,222123,448 国内生命保険事業は円高と低金利で減益。海外保険事業が初めて利益を伸ばした期
2021年3月期 474,29673,005177,745
2022年3月期 493,93694,324197,539
国内生命保険事業と海外保険事業のセグメント利益
国内生命保険事業利益(百万円)海外保険事業利益(百万円)

出所:第一生命ホールディングス 有価証券報告書 第115〜120期(セグメント情報)

連結の経常利益・当期純利益・純資産額の推移

第一ライフグループ:連結の経常利益・当期純利益・純資産額の推移

(百万円) 経常利益親会社株主に帰属する当期純利益純資産額 備考
2012年3月期 225,92020,357991,745 2015年3月期以前は当期純利益として開示している
2013年3月期 157,29432,4271,649,020
2014年3月期 304,75077,9311,947,613
2015年3月期 406,842142,4763,589,927 米プロテクティブ生命の子会社化を含む期
2016年3月期 418,166178,5152,932,959
2017年3月期 425,320231,2863,137,266 持株会社へ移行した期。経常収益は半期が生命保険業、半期が持株会社業で連続しない
2018年3月期 471,994363,9283,749,271
2019年3月期 432,945225,0353,713,592
2020年3月期 218,38032,4333,776,918
2021年3月期 552,861363,7774,807,129
2022年3月期 590,897409,3534,408,507
経常利益と当期純利益
経常利益(百万円)親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)

出所:第一生命ホールディングス 有価証券報告書 第110〜120期(主要な経営指標等の推移・連結)

同じ問いに直面した会社

同じ問いに直面した会社

取締役会改革2023年メイテックグループホールディングスエンジニアリングソリューション事業の子会社への承継と、監査等委員会設置会社への移行グループ経営機能と事業執行の分離
2007年三和ホールディングス事業を子会社へ移管する会社分割と、純粋持株会社体制への移行グループ経営の意思決定と事業運営の分離
1992年セコム会長個人への経営依存を解くための、専任役員制の導入と権限の分散経営体制と新規事業の推進
2022年テクセンドフォトマスク無対価での事業承継と、投資ファンドによる49.9%取得事業の承継と資本構成
2004年ユニ・チャーム「脱・指示待ち」を掲げ、第2の創業と位置づけた組織改革経営体制と組織運営
持株会社化とグループ再編2016年フューチャー持株会社化と機能別グループ経営への転換経営体制とグループ多角化
2017年U-NEXT HOLDINGS両社の経営統合を機とした持株会社体制への移行とグループ再編店舗顧客網と定額制動画配信会員の併存
2015年不二製油純粋持株会社への移行と、事業会社との役割の区分グループ経営体制と海外事業の権限配分
2018年エクシオグループ現金を使わない3件の株式交換による同時完全子会社化と、負ののれん発生益183億円の計上全国施工網の完成と顧客ポートフォリオの多様化
2018年りそなホールディングス関西みらいフィナンシャルグループの創設と完全子会社化による関西リテール基盤の集約関西圏リテール基盤の集約と地銀再編の受け皿づくり、および親子上場の解消
参考文献
出典・参考
  • 第一生命保険 有価証券報告書「第114期(2016年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • 第一生命ホールディングス 有価証券報告書「第115期(2017年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • 第一生命ホールディングス 有価証券報告書「第115期(2017年3月期)【企業結合等関係】」
  • 第一生命ホールディングス 有価証券報告書「第115期(2017年3月期)【セグメント情報】」
  • 第一生命ホールディングス ニュースリリース「第一生命グループ新体制のスタートに関するお知らせ」

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