第一生命ホールディングスの直近の動向と展望

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第一生命ホールディングスの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

海外アセットマネジメントへのマイノリティ出資連鎖

2025年6月の決算説明会で菊田CEOが掲げたのは、修正ROE目標を2026年度の10%から12%以上へ引き上げ、配当性向を45%(総還元性向50%は維持)とする資本政策の刷新である。菊田は「アセットマネジメント事業において、当社がマジョリティを取ってコントロールすることが適さないと判断される場合は、マイノリティ出資によってキャッシュ創出力や成長性という果実を得るという選択が望ましい」(決算説明会 FY24)と述べ、英M&G・豪Challenger・米Canyon Partners・米Capulaといったマイノリティ出資の連鎖を、海外戦略の新しい軸として対外発信した。マジョリティ買収でグループに取り込むだけが海外戦略の選択肢ではない、という姿勢の切り替えである。

M&Gについては年間約160億円の安定キャッシュフローを見込み、持分比率は現時点で15%程度とし、25%超で税務上の取り扱いが変わるため比率・会計処理を慎重に判断する方針である。英国BPA(Bulk Purchase Annuity=年金バイアウト)事業では、M&Gが再参入から約3年で英国市場シェア約3%を獲得しており、クローズドブックから生まれる安定キャッシュフローをアセットマネジメント事業に取り込む設計である。マジョリティ買収中心だった国内生保のM&A戦略から、質的に距離を置いた打ち手である。保険会社の買収で連結売上を拡大する経路と、他社への出資で安定キャッシュフローを取りに行く経路の2本立てを意識的に使い分ける形に、菊田体制の海外戦略の輪郭が表れている。

参考文献
  • 決算説明会 FY24
  • 有価証券報告書
  • 東洋経済オンライン 2024/11/14

自己株縮小・配当強化へ

2025年3月期の経常収益は9兆8,732億円、経常利益7,191億円、純利益4,296億円で、M&Aの利益貢献と金利上昇の寄与により増益となった。2025年3月末のESR(資本充足率)は210%と、ターゲットレンジ170〜200%の上限を超過した。菊田はROEが資本コストを上回る水準に到達したことを踏まえ配当還元強化へ方針を転じると説明し、自己株式取得を縮小する方向性を示した。他社の資本政策で見られるEPS成長率の2ポイントを自己株買いで押し上げるという考え方は現時点では持たない、とも明言した。資本余剰が積み上がると自己株取得に傾きがちな国内上場企業の一般形と比べると、配当性向の引き上げに軸を置く姿勢は、相互会社から株式会社へ転じた生保が契約者と株主の両方に配慮する形と読める。

時価総額6兆円という菊田CEO就任時からの目標については、利益水準の引き上げに加え、成長性が高く資本効率に優れた海外事業・アセットマネジメント事業・非保険サービスの比率を高めてPERを向上させる事業ポートフォリオ改革が必要と認識する。子会社第一生命保険でも隅野俊亮社長が「保障と運用を一体で提案できるコンサル部隊を2026年度末までに1700人体制へ拡充する」(東洋経済オンライン 2024/11/14)と表明し、HDのポートフォリオ改革と並行して国内対面チャネルの質的転換にも踏み込む構えを示した。国内生保の相互会社として出発した企業が、相互会社形態の放棄・持株会社化・非保険参入・マイノリティ出資連鎖という4段階の構造変化を経て、グループ収益の重心を海外と非保険側へ移す道筋に立つ。

参考文献
  • 決算説明会 FY24
  • 有価証券報告書
  • 東洋経済オンライン 2024/11/14

参考文献・出所

日本会社史総覧 1995/11/1
有価証券報告書
東洋経済オンライン 2021/05/11
決算説明会 FY23
決算説明会 FY24
東洋経済オンライン 2024/11/14
東洋経済オンライン