ダイキン 竹中直文氏が社長就任 前任の井上体制から離れる世代交代と、新たな経営体制への引き継ぎ

更新:

時期 2024年5月
当時の社長 十河政則
論点 経営体制の承継と求心力の引き継ぎ
何をなぜ決めたか
概要

創業100年を迎えた2024年、ダイキンが竹中直文氏を社長兼COOに昇格させ、十河政則氏が会長兼CEOへ、30年にわたり経営を率いた井上礼之氏が取締役・会長を退任して名誉会長に就任した経営体制の承継。5月10日の決算発表と同日に公表し、6月27日の第121期定時株主総会で発効した13年ぶりの社長交代であった。

背景

井上礼之氏は1994年の社長就任以来、社長・会長として30年にわたりダイキンの求心力であり続けた。十河政則氏の社長時代を含め業績は過去最高を更新し、2024年3月期の連結売上高は4兆円を超えたが、創業100年の節目を前に次の体制への移行が問われていた。

内容

経営陣幹部の選任は、社外取締役4名と社内取締役1名の計5名で構成し社外取締役を委員長とする人事諮問委員会の審議・検討を元に、取締役会が決めている。竹中直文氏は1986年の入社後、生産部門と国内空調の事業改革を率い、2020年からの4年間は人事を担当していた。十河政則氏が後任に推した理由は 『何より理念、当社の強みの一つである人を基軸におく経営、これを継承できる人物と考えたからです』 という点にある。

井上礼之氏は取締役・会長を退任して名誉会長に就任し、グループの求心力を高めるために設けた執行役員グローバルグループ代表として新体制を支える形をとった。

含意

成功した創業世代の長い影から、次の世代がどう独り立ちするかが問われる承継であった。過去最高業績のさなかに交代へ踏み切った点に、業績よりも100年目の節目と求心力の世代交代を優先した判断がうかがえる。

株主総会では竹中直文氏の選任に96.79%の賛成が集まった一方、退任する井上礼之氏へ43億円の特別功績金を贈る議案の賛成は68.52%にとどまり、取締役選任の94〜99%から大きく離れた。30年の功績をどう遇するかについては、株主の評価が割れた。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

長い影から、どう独り立ちするか

この承継の難しさは、業績にではなく、求心力の引き継ぎにある。井上礼之氏はダイキンを空調世界一へ導いた中興の存在であり、その成功体験そのものが、次の世代にとっては越えにくい影ともなりうる。過去最高業績のさなかに交代へ踏み切ったのは、数字が傾いてから動くのではなく、勢いのあるうちに世代を送り出そうとする判断であっただろう。日本電子が創業者の求心力をあえて手放そうとしたように、成功した経営者の後をどう継ぐかは、多くの会社に共通する重い問いである。

もっとも、名誉会長と会長兼CEOに前の世代が残る布陣は、独り立ちと後見のあいだで揺れる過渡的な形でもある。退任する井上礼之氏への43億円の特別功績金が68.52%の賛成にとどまり、取締役選任の94%台から明確に離れたことは、30年の功績を認めながらも、その処し方には距離を置く株主の目を映しているとみられる。竹中直文氏が受け継いだのは、過去最高の業績と、創業世代に代わる新たな統率のあり方をこれから示さなければならないという宿題の両方である。創業100年の交代は、その答えをこれから問われる段階にある。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
経緯と対応

経緯と対応

科目 概要 備考
新体制の公表 2024年5月10日 2024年3月期の決算発表と同日。売上高・営業利益とも過去最高を更新した期だった
新社長 竹中直文氏(代表取締役社長兼COO) 1986年入社。生産部門と国内空調の事業改革を率い、2021年6月から専務執行役員
前社長の異動 十河政則氏が代表取締役会長兼CEOへ 2011年6月の社長兼COO就任から13年。代表権とCEOは会長として引き続き持つ
会長の退任 井上礼之氏が取締役・会長を退任 1994年の社長就任から30年。名誉会長に就任した
発効の日 2024年6月27日 第121期定時株主総会の終結の時。井上礼之氏・田谷野憲氏・三中政次氏が退任した
新たに選任した取締役 竹中直文氏・髙橋孝一氏・森圭子氏 取締役10名選任の件として第121期定時株主総会で決議した
人事諮問委員会 社外取締役4名・社内取締役1名の計5名 委員長は社外取締役から選ぶ。取締役会はその審議・検討の結果を元に経営陣幹部を選任する
取締役選任議案の賛成率 竹中直文氏96.79%・十河政則氏94.24% 候補者10名のうち最も低いのが十河政則氏で、最も高いのは新居勇子氏の99.56%
退任取締役への特別功績金 43億円 井上礼之氏の功績と在任中の労に報いるため贈呈。時期と方法は取締役会に一任した
特別功績金議案の賛成率 68.52% 賛成1,715,430個に対し反対784,463個。他の議案の94〜99%から離れた
特別功績金の決定過程 全委員を社外取締役で構成する委員会 報酬諮問委員会とは別に設け、その審議・答申に基づき取締役会が審議し総会の承認を経た
退任後の役職 執行役員グローバルグループ代表 多国籍企業としてのガバナンスと組織マネジメント強化のため設けた役職

出所:ダイキン工業 有価証券報告書 第121期(2024年3月期)【役員の状況】・第122期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】、臨時報告書(2024年6月28日提出)

売上高と利益の推移

ダイキン:売上高と利益の推移

(百万円) 売上高経常利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2020年3月期 2,550,305269,025170,731
2021年3月期 2,493,386240,248156,249
2022年3月期 3,109,106327,496217,709
2023年3月期 3,981,578366,245257,754
2024年3月期 4,395,317354,492260,311 5月10日の決算発表と同日に新体制を公表。売上高は過去最高を更新した
2025年3月期 4,752,335366,446264,757 竹中直文氏が社長兼COOに就任した最初の期
2026年3月期 5,015,036408,171275,229
売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常利益率(%)

出所:ダイキン工業 有価証券報告書 第121〜123期【主要な経営指標等の推移】

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参考文献
出典・参考

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