日本ハムの直近の業績・経営課題と展望

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日本ハムの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高13,706億円YoY+5.1%
2025/3売上総利益2,204億円YoY+8.2%
2025/3販売費及び一般管理費1,844億円YoY+7.2%
2025/3営業利益372億円YoY▲8.4%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益266億円YoY▲5.3%
2025/3自己資本比率53.9%YoY+0.1pt
2025/3有利子負債合計2,239億円前年比+9,050億円
2025/3現金同等物期末残高716億円YoY+9.3%
経営トップ井川伸久代表取締役社長
2025/3従業員数15,732前年比+303人
2025/3平均給与861万円前年比+38万円
歴史的背景1942年に創業者の大社義規氏が徳島で7人の食肉加工場を起こし、1963年の鳥清ハム合併で業界首位に立った。1973年の球団買収で全国営業網とブランドを結びつけ、1977年Day-Lee Foods買収から豪州垂直統合まで進めて世界3位級へ拡大したが、2002年に子会社・日本フードの食肉偽装事件で創業者一族が退任した。
経営課題FY2025/3実績は売上高13,706億円・事業利益425億円と期初計画から55億円下振れた。海外事業本部はFY16〜FY18に△13・△47・△38億円の赤字を続け、FY16連結営業利益538億円のうち食肉事業本部が439億円を稼ぐ単一エンジン構造を覆い隠した。食肉事業に収益が集中する構造が露呈した。
経営方針2022年6月に就任した井川伸久社長は「もっと変わらなあかん!!」を掲げ、2027年3月期事業利益610億円・ROE7〜8%・ROIC5-6%、中計2029で790億円以上・ROE9%・ROIC7%を据えた。食肉本部役員6名のうち4名を新任とする世代交代を断行した。
主な投資2025年1月の北米3社(LJD Holdings含む)取得で加工品事業の生産基盤を拡張、JA全農との共創(2024年7月)・CPF社包括的業務提携(2024年12月)も動かした。500億円の成長投資枠は本社主導運用へ切替、自己株式取得枠2025年度300億円・DOEを2.3%から3.0%に引上げた。

食肉一本足からの複線化と資本配分判断軸の組み替え

1942年に創業者の大社義規氏が徳島で7人の食肉加工場を起こして以来、規模拡大策が一貫して採られた。1963年の鳥清ハム合併で業界首位、1973年の球団買収で全国営業網とブランドを結合し、1977年Day-Lee Foods取得から1987〜90年の豪州1,000億円垂直統合まで進めて世界3位級まで広げた。だが2002年の子会社・日本フードの食肉偽装で創業者一族が退任した後、海外事業本部はFY16△13億円・FY17△47億円・FY18△38億円の赤字を続け、FY16連結営業利益538億円も食肉本部439億円が単独で支える構造になった。2002年以降の歴代社長は規模拡大の路線を続け、利益率改善への本格着手は中計2026まで持ち越された。

2022年6月、井川伸久氏が第8代社長に就任し、各事業本部の危機感欠如を自己批判して「もっと変わらなあかん!!」を掲げた。2024年5月発表の中計2026では2027年3月期事業利益610億円・ROE7〜8%・ROIC5-6%を据え、構造改革で100億円・成長戦略で60億円のギャップ埋めを示した。初年度FY2025/3は売上高1兆3,706億円(前期比+5.1%)・事業利益425億円と期初計画から55億円下振れ、加工ライン20%削減やシャウエッセン900億円目標、ボールパーク事業の伸長は見えたものの、井川社長は610億円到達のため主要施策とKPIを再設定した。

井川社長の打ち手は北米と国内共創への配分に偏る。2025年1月にLJD Holdings含む北米3社を取得して加工品の生産基盤を拡張、2024年7月のJA全農との共創、2024年12月のCPF社包括的業務提携でタイ原材料調達と販売チャネル相互活用を始動した。500億円の成長投資枠は事業本部裁量から本社主導へ切り替え、2025年7月には金融機関保有株9.5百万株(発行済9.6%)を海外機関投資家へ売出した。自己株式取得枠2025年度300億円、DOEを2.3%から3.0%へ引き上げ、2025年6月策定のR&D戦略Proteinnovationでは医療・化粧品を新規領域として明示した。

すなわち日本ハムは1942年以来「規模で稼ぐ食肉一本足」の収益構造から、加工・海外・エンタメ・新規の複線化へ資本配分を切り替えている。FY16最高益が海外赤字を覆い隠した経験を経て、井川体制は拡大重視の投資判断を、事業ごとの資本コスト比較と500億円成長投資枠の本社運用に置き換えた。海外子会社を独立した収益柱へ育て、畜産副産物を医療・化粧品へ転用するという事業定義の書き換えが、中計2029の事業利益790億円以上・ROE9%・ROIC7%を据えた次フェーズの主題である。

日本ハムの業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / IFRSFY162017/4連結 / USGAAPFY172018/3連結 / IFRSFY182019/3連結 / IFRSFY192020/3連結 / IFRSFY202021/3連結 / IFRSFY212022/3連結 / IFRSFY222023/3連結 / IFRSFY232024/3連結 / IFRSFY242025/3連結 / IFRS
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円12,293+2.4%12,023−2.2%12,692+5.6%12,342−2.8%12,298−0.4%11,064−10.0%11,519+4.1%12,598+9.4%13,034+3.5%13,706+5.1%
加工事業本部億円3,2843,3423,5553,5315,3234,8944,9674,1774,3124,218
食肉事業本部億円7,7606,4217,7847,5707,5556,5676,8337,5017,8068,193
海外事業本部億円9162,5422,5522,5502,2362,6763,2142,9003,176
ボールパーク事業億円238270
売上原価億円10,1959,69010,47510,33610,2439,0799,53010,82810,99811,502
売上総利益億円2,2122,3332,2172,0062,0551,9851,9891,7702,0362,204
販管費億円1,7491,7951,6521,6831,6601,4981,5661,6611,7211,844
営業利益YoY億円353−19.4%538+52.4%505−6.2%303−40.0%270−10.7%476+76.1%518+8.7%222−57.2%406+83.2%372−8.4%
加工事業本部億円417959781331801475097107
食肉事業本部億円397439472357319412356291340289
海外事業本部億円-13-47-3818-124-502545
ボールパーク事業億円2433
当期純利益YoY億円218−29.9%350+60.7%376+7.3%196−47.9%192−1.8%326+69.8%480+47.3%166−65.4%281+68.8%266−5.3%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%52.257.656.253.551.051.251.551.553.853.9
有利子負債比率%22.619.715.219.823.023.523.325.822.423.6
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円525653533308655825334113866774
投資CF億円-491-383-482-451-367-578-228-637-392-427
財務CF億円82-114-27129-31-149-122284-532-299
従業員
連結従業員数16,48816,38317,35917,44417,33917,16816,19216,06415,42915,732
単体従業員数1,3961,4161,4271,4311,2841,3141,3261,3001,2561,233
平均年収(単体)万円859766871857842840848847822861

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY25中期経営計画2026の中盤総括。北米3社買収に伴う海外加工事業の売上拡大、豪州牛肉事業の生産数量・販売価格上昇による収益伸長を発信。加工事業の継続的な構造改革進展で過去最高540億円の事業利益見通しを提示、北海道ボールパークF村の来場者数増加効果が継続。

2025年3月期 通期決算説明会資料

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/briefing-session/pdf/20250509_1.pdf
FY24中期経営計画2026初年度の進捗。海外事業の販売環境好転により全セグメント増益、豪州牛肉事業・北米加工品の伸長と食肉事業の高付加価値化で事業利益が改善。北海道ボールパークF村の本格稼働とサプライチェーンの最適生産体制構築を継続。

2024年3月期 通期決算説明会資料

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/briefing-session/pdf/20240510_01.pdf
FY23国内・海外での食肉相場高騰により9.4%増収。海外事業本部の牛肉事業で生体価格・生産コスト高騰の影響を受け減益。中期経営計画2023の最終年度総括と次期中計2026策定方針を発信、加工事業と食肉事業の一体運営による全社視点経営への移行を準備。

2023年3月期 通期決算説明会資料

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/briefing-session/pdf/20230510_01.pdf
FY22中期経営計画2023の2年目進捗。エキス・一次加工品事業を加工事業本部へ統合(2021年3月期)以降の効果を反映。コスト吸収施策と海外事業本部の牛肉事業牽引で計画通りの着地、北米加工品の販売数量拡大で収益確保。長期ビジョン「Vision2030」の実現に向けた挑戦を継続。

2022年3月期 通期決算説明会資料

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/briefing-session/pdf/20220510_01.pdf
FY21

2021年3月期 通期決算説明会資料

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/briefing-session/pdf/20210510_01.pdf

ファクトシート

年度経営の振り返り報告資料
FY26

データブック 2026年3月期

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/data-book/pdf/2025/all.pdf
FY25FY25通期の業績報告(数値データブック)。特記すべき構造的トピックなし。

データブック 2025年3月期

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/data-book/pdf/2024/all.pdf
FY24FY24通期の業績報告(数値データブック)。特記すべき構造的トピックなし。

データブック 2024年3月期

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/data-book/pdf/2023/all.pdf
FY23FY23通期の業績報告(数値データブック)。特記すべき構造的トピックなし。

データブック 2023年3月期

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/data-book/pdf/2022/all.pdf
FY22FY22通期の業績報告(数値ファクトブック)。特記すべき構造的トピックなし。

ファクトブック2021

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/fact_book/pdf/2021/fact_book2021.pdf

アニュアルレポート / 統合報告書

年度経営の振り返り報告資料
FY26

統合報告書2025

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/annual/pdf/2025_annual/annual2025all_j.pdf
FY25統合報告書2024。井川伸久社長メッセージで「構造改革と成長戦略」を主軸に提示。中期経営計画2026の中盤総括として、構造改革で100億円・成長戦略で60億円の利益獲得数値を明示、加工事業の最適生産体制構築・事業横断強化・R&D強化・北海道ボールパーク事業の4つの柱を体系化。

統合報告書2024

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/annual/pdf/2024_annual/annual2024all_j.pdf
FY24統合報告書2023。2023年1月31日取締役会で最適な事業ポートフォリオ構築を決議。「中期経営計画2023・2026」のもと自前主義からの脱却を進め、2026年度事業利益700億円超を目標に、加工事業と食肉事業の一体運営、グラスフェッド・ビーフ等海外販路拡大を構造改革の中核に据える。

統合報告書2023

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/annual/pdf/2023_annual/annual2023all_j.pdf
FY23統合報告書2022。長期ビジョン「Vision2030」と中期経営計画2023・2026の進捗を体系化。海外でのプラントベースミート展開、食肉事業本部・海外事業本部の戦略を整理し、Road to 2030の道筋を提示。マテリアリティと統合した戦略開示の枠組みを刷新。

統合報告書2022

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/annual/pdf/2022_annual/annual2022all_j.pdf
FY22統合報告書2021。長期ビジョン「Vision2030 たんぱく質を、もっと自由に」を発表し、10年後・20年後の食の未来を切り拓く方向性を提示。中期経営計画2023の戦略全体像を整理、海外進出と食の領域拡大の歴史を振り返り、品質No.1経営の枠組みを構築。

統合報告書2021

https://www.nipponham.co.jp/corporate/ir/library/annual/pdf/2021_annual/annual2021all_j.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書
日経ビジネス 1989/4/10
決算説明会 FY25 3Q
日本会社史総覧 1995/11/1
日経新聞連載 私の履歴書・大社義規 1977/07
日経ビジネス 1987/6/15
読売新聞 1952/06/06
野田経済 1963/11
日経新聞 1976/08/01
日経新聞 1977/07/06
日経新聞 1977/12/02
日経産業新聞 1988/08/11
日経産業新聞 1991/04/04
日経産業新聞 1995/04/02
政財界 2004/6
日本食糧新聞 2008/5
決算説明会 FY22 3Q
決算説明会 FY23
日経ビジネスSpecial 2024/3
決算説明会 FY23(中計2026)
決算説明会 FY24
決算説明会 FY25
日経ビジネスSpecial