1997年5月に槙野光昭氏は、パソコンの価格比較サイト「パソコン価格情報サービス(価格.com)」の運営を開始。ホームページ制作ソフト「FrontPage」で作成し、パソコンの価格比較を紹介するサイトとして運営した。
当時はインターネットの黎明期であり、類似サイトが少ないことから、パソコン価格の比較サイトとして集客に軌道に乗せた。主な流入経路はYahoo! JAPANのカテゴリーリンク(ディレクトリ型検索)であり、パソコンカテゴリーを介してアクセス数を確保した。
当初は価格の比較サイトとして運営し、約10店舗のみを掲載したが、サイトへの掲載について小売店から連絡を受けるようになったという。
そこで、小売店から広告費を徴収するビジネスを開始。バナー広告を「5万円/月」で掲載することで収益を確保した。この過程で、パソコン比較サイトに掲載するサイトからは、平等に全てのショップから広告費を徴収するモデルに転換した。
カカクコムの創業者である槙野光昭氏は会社売却を決断。そもそも槙野氏は起業の理由が稼ぐことと考え、5億円を稼げたら十分と判断してカカクコムの売却に踏み切った。2001年の時点で槙野氏は経営に疲弊していたこともあり、株式上場前に売却を決定した。売却時点で槙野氏は28歳であった。
正式な売却価格は非開示だが、創業者だである槙野氏によれば25億円前後で売却したという。ただし、カカクコムの時価総額はその後も高騰し、5000億円前後となったことから、のちの槙野光昭氏は株式売却について後悔の念を述べている。
槙野光昭氏はカカクコムの売却後は、資産を確保して、しばらくの間は仕事をせずに資産運用で生活を送った。その後、起業への意欲が高まったため、2014年に美容室「ALBUM」を設立。再び起業家としてのキャリアを歩んでいるという。
カカクコムの株式を取得したのは、カカクコムの出資者であったICP(ベンチャーキャピタル)であった。このため、ICPの経営トップであった穐田誉輝氏(あきた・よしてる)は、自らカカクコムの社長に就任した。
ICPが株式取得を決定した理由は、価格コムを取り巻く市場の大きさ(価格を比較するマーケット)を有望と判断したためであった。ネットバブルの崩壊によって株式市況が低迷したこともあり、他に良い条件の買い手候補に巡り会えず、最終的にICPが株式取得を決定した。
穐田誉輝氏はカカクコムの株式上場を目標に、ハンズオン形式で経営に従事。2003年にカカクコムは株式上場を果たし、2006年に穐田誉輝氏は社長を退任した。
経営者になりたいというより、束縛されない自由な時間が手に入ったら、働きたくないと思ってたんですよ。僕、就職活動をしてるときから「5億円手に入ったらすぐに仕事を辞める」と宣言してましたから。(略)
当時かなり疲れてたんで、早く辞めたかったんですよ。それにさっき言ったように、もともと5億円稼ぐことが起業理由だったんで、それが見えた段階で穐田さんにバトンタッチしました(略)
ちょっともったいなかったですね。今タイムマシンがあったら、間違いなくそのときに戻ります(笑)。
2004年にカカクコムでは新規事業の展開を決定した。同時期にアクセンチュア出身の村上氏(現カカクコム・社長)が入社し、自身が食事が好きだったこともあり、グルメの口コミサイトの新設を立案。約半年の準備期間を経て、2005年3月に「食べログ」のサービス提供を開始した。
当時はすでにグルメサイトは存在していたが、食べログでは「Googleからの検索流入(SEO)」や「ブロガーによる紹介」によって流入数を確保。この結果、食べログは開設当初から閲覧数およびレビュー数を確保した。
食べることが好きだったからです。そして、すでにあったグルメサイトの情報に不満を持っていました。実際にアンケートを取ってみると、8割の人がお店選びに失敗したと答えていました。どうしても、本音の情報を提供するグルメサイトをつくりたかったのです。私が一番、それに興味を持っていました
11月19日にフォートラベルという会社の買収を発表しましたが、ここの代表の津田全泰氏がカカクコムの槙野氏とよく似ているんです。
1つ目は、事業の到達点がはっきりしていることですね。カカクコムならば価格あるものすべてを比較していくんだというもの、フォートラベルは全ての旅行者のためのサイトを作っていくんだという気持ちがある。すごくシンプルで、目的が明快です。2つ目は第三者の協力を得るのがとてもうまい。ついお手伝いしたくなる愛すべきキャラクターだということ。3つ目はきちんとしたビジネスセンスがあって、資本効率を考えた上できちんと黒字を出していく。こういった点が似ています。
旅行事業を強化するため、タイムデザインを買収。取得原価は1.8億円
株式会社日経デジタルコンテンツから、自動車専門サイト「webCG」の事業を買収。取得原価は2.3億円
高速バス比較サイト「夜行バス比較なび」の運営会社である株式会社LCCを買収。同社の株式100%を取得して、完全子会社化した。買収価格(取得による支出)は44億円であり、カカクコムは「のれん」として33億円を計上した。
コロナ禍による飲食店の需要低下により、食べログの収益が悪化。2021年3月期にカカクコムは減収減益に至った。
実店舗情報サイト「Pathee.com」を運営する株式会社Patheeを買収。取得原価は5.2億円であった。
ところが買収後は、計画比較で業績が低迷。2024年11月にカカクコムはPatheeに関して5.8億円の減損計上を決定した。
カカクコムの大株主であるデジタルガレージは、カカクコムの株式を一部売却。デジタルガレージは、大株主である投資ファンドから資本効率の改善と、会社分割を提案されており、上場子会社であるカカクコムの株式保有が問題視されていた。
ただし、デジタルガレージによるカカクコムの株式売却は限定的であり、2024年3月末時点でデジタルガレージはカカクコムの株式を20.71%保有している。
2024年に村上敦浩氏がカカクコムの代表取締役社長に就任。村上氏は2005年にサービスを開始した「食べログ」の事業成長に貢献した人物であり、カカクコムの社長に抜擢された。
村上社長は主力3事業である「価格.com」「食べログ」「求人ボックス」について、事業成長が低迷している点を問題視。カカクコムの企業成長のため、新事業の展開を宣言した。
価格.com、食べログ、求人ボックスという大きな収益基盤を築き、会社として成熟期に入ってきている。再成長させるために新しい事業の創出に注力したい