大日本印刷の直近の業績・経営課題と展望

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大日本印刷の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高14,576億円YoY+2.3%
2025/3売上総利益3,383億円YoY+7.8%
2025/3販売費及び一般管理費2,447億円YoY+2.7%
2025/3営業利益936億円YoY+24.1%
2025/3経常利益1,159億円YoY+17.4%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益1,107億円YoY▲0.2%
2025/3自己資本比率59.2%YoY▲0.4pt
2025/3有利子負債合計562億円前年比▲55億円
2025/3現金同等物期末残高2,506億円YoY+6.8%
経営トップ北島義斉代表取締役社長
2025/3従業員数36,890前年比▲21人
2025/3平均給与830万円前年比+26万円

活版由来の転写技術は基材横断でどう束ね直されたか(筆者所感)

大日本印刷の150年を貫いたのは、印刷を「微細なパターンを正確に転写する技術」と読み替え、基材を変えて応用範囲を広げる経営である。1876年の秀英舎創業時から自前で活字書体「秀英体」を開発し、書体設計の主導権を持つ技術型企業として出発した。1894年の株式会社改組で明治商法に合わせた組織形態を整え、1923年関東大震災後の市谷本社移転以降、市谷を恒久拠点として150年機能させた。1935年2月の日清印刷合併で「大日本印刷」が誕生し、当時日本最大の印刷会社となった。書体という「ソフト」と工場群という「ハード」を同時に抱える体制が、戦後の出版需要拡大と高度成長期の研究開発投資を支える基盤となった。

紙以外の基材へ転写技術を持ち込む転換は、1966年7月の中央研究所完成と1975年7月の生産総合研究所設立で形をとった。フォトマスク・シャドウマスク・カラーフィルタなど半導体・ディスプレイ部材へ応用範囲が広がり、1983年久喜・1990年小野・1991年岡山・1994年大利根・1995年田辺と紙以外の生産拠点が積み上がった。2001年5月の「DNPグループ21世紀ビジョン」で4セグメント体制が固まり、2006年3月期は売上1兆5,075億円・営業利益1,206億円のピーク水準に達した。だが2008年の丸善・ジュンク堂取得で書店流通への垂直統合に踏み出した直後にリーマンが直撃し、2009年3月期は純損失209億円の初赤字に転落した。2012年3月期も液晶カラーフィルタ減損で純損失164億円、2019年3月期は特別損失1,000億円で純損失356億円の過去最大赤字となった。

長い調整局面を抜けたのは、2018年6月就任の北島義斉によるDX・SX軸の体質転換と、政策保有株売却を成長投資・株主還元に振り向ける資本政策が並行運転に入ってからである。2020年3月期は特別利益817億円で純利益694億円へ戻し、2021年3月に鶴瀬工場でEV用リチウムイオン電池パウチ量産を始めた。2023年2月の経営基本方針でROE10%目標と5年3,000億円の自己株式取得を明示し、印刷会社として前例のない株主還元規模となった。2024年5月に黒崎工場で有機ELメタルマスク量産、2025年1月にHKホールディング、2月にレゾナック・パッケージングを取得し、2025年3月期は売上構成比17%のエレクトロニクスが営業利益の約6割を担う構造に変わった。活版由来の転写技術を紙以外の基材へ束ね直し、印刷会社の名を残したまま資本効率を上げられるかが残された問いである。

大日本印刷の業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / JGAAPFY162017/3連結 / JGAAPFY172018/3連結 / JGAAPFY182019/3連結 / JGAAPFY192020/3連結 / JGAAPFY202021/3連結 / JGAAPFY212022/3連結 / JGAAPFY222023/3連結 / JGAAPFY232024/3連結 / JGAAPFY242025/3連結 / JGAAP
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円14,559−0.4%14,102−3.1%14,123+0.1%14,015−0.8%14,019+0.0%13,354−4.7%13,441+0.7%13,732+2.2%14,248+3.8%14,576+2.3%
スマートコミュニケーション億円7,1737,140
エレクトロニクス億円1,9931,6941,8871,9241,8661,9702,1112,0362,3532,478
ライフ&ヘルスケア億円4,7224,959
売上原価億円11,73211,43211,31711,19411,09110,58510,51210,81311,11111,193
売上総利益億円2,8272,6702,8062,8212,9282,7692,9292,9193,1373,383
販管費億円2,3722,3562,3422,3222,3662,2742,2612,3072,3822,447
営業利益YoY億円455−5.6%314−30.9%464+47.6%499+7.6%563+12.8%495−12.0%668+34.8%612−8.3%755+23.2%936+24.1%
スマートコミュニケーション億円262347
エレクトロニクス億円205165341369341367465469582574
ライフ&ヘルスケア億円133238
経常利益YoY億円527−2.1%367−30.2%510+38.7%583+14.3%638+9.5%599−6.1%812+35.6%837+3.0%987+18.0%1,159+17.4%
当期純利益YoY億円336+24.8%252−24.9%275+9.0%-357−229.7%695+294.8%251−63.9%972+287.4%857−11.8%1,109+29.5%1,107−0.2%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%59.259.458.756.153.257.258.259.459.659.2
有利子負債比率%4.33.03.13.02.62.72.62.43.22.9
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円7267194856909396178203807261,327
投資CF億円-609140231-1,4691,911-563-392-250184-367
財務CF億円-472-452-428-322-413-783-578-524-1,187-874
従業員
連結従業員数39,19838,80838,62738,05138,18137,06236,54236,24636,91136,890
単体従業員数10,67610,80010,77510,75710,49910,32810,08210,1079,5899,785
平均年収(単体)万円706707713726744766768797804830

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY25中期経営計画(2023〜25)最終年度。営業利益目標850億円を1年前倒し達成、936億円を計上。3,000億円の自己株式取得計画を前倒し実行中、2025年度に500億円の追加実施。出版印刷部門で2025年4月に製販一体の新会社「DNP出版プロダクツ」を設立し構造改革を継続。

2025年3月期 決算説明会

https://www.dnp.co.jp/ir/library/presentation/pdf/dnp_24Q4pre.pdf
FY24中期経営計画(2023〜25)2年目。有機ELディスプレイのスマートフォン採用拡大とパネル大型化が寄与し営業利益が中期経営計画を上回る見込みに。「経営の基本方針」に基づきキャッシュアロケーションの着実な実行を継続。

2024年3月期 決算説明会

https://www.dnp.co.jp/ir/library/presentation/pdf/dnp_23Q4pre.pdf
FY23新中期経営計画「2023〜2025年度 中期経営計画」を策定。事業ポートフォリオ変革と注力事業(有機ELディスプレイ・リチウムイオン電池用バッテリーパウチ等)への集中投資、政策保有株式を純資産10%未満に縮減、5年間で過去最大3,000億円の自己株式取得を計画。

2023年3月期 決算説明会

https://www.dnp.co.jp/ir/library/presentation/pdf/dnp_22Q4pre.pdf
FY22中期経営計画進捗。注力事業の拡大と紙メディア製造拠点の縮小・低付加価値製品の見直しを推進、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクの堅調を継続。

2022年3月期 決算説明会

https://www.dnp.co.jp/ir/library/presentation/pdf/dnp_21Q4pre.pdf
FY21中期経営計画進捗。注力事業への投資と既存事業の構造改革を継続、有機ELディスプレイ需要増を取り込み。政策保有株式の縮減・自己株式取得・安定配当による株主還元を継続。

2021年3月期 決算説明会

https://www.dnp.co.jp/ir/library/presentation/pdf/dnp_20Q4pre.pdf

アニュアルレポート / 統合報告書

年度経営の振り返り報告資料
FY26中期経営計画(2023〜25)最終年度の総括。「PBRの向上」をロジックツリーで体系化し、ROE10%目標とPBR1.0倍超の早期実現を志向。総還元性向74.2%、3,000億円自己株式取得を前倒し実行、株主資本コストの低減と期待成長率向上を施策に紐付け。

統合報告書 2025

https://www.dnp.co.jp/ir/library/annual/pdf/DNP_integrated2025j.pdf
FY25中期経営計画(2023〜25)2年目。注力事業(有機ELディスプレイ・リチウムイオン電池用バッテリーパウチ等)の伸長、構造改革の進捗、株主還元と資本効率の取り組みを統合的に提示。

統合報告書 2024

https://www.dnp.co.jp/ir/library/annual/pdf/DNP_integrated2024j.pdf
FY24新中期経営計画(2023〜25)の発表年。「DNPグループの経営の基本方針」と中期経営計画における事業ポートフォリオ変革・注力事業への集中投資・3,000億円自己株式取得計画を一体提示。

統合報告書 2023

https://www.dnp.co.jp/ir/library/annual/pdf/DNP_integrated2023j.pdf
FY23既存中期経営計画進捗報告。注力事業の伸長と紙メディア製造拠点の縮小、低付加価値製品の見直しを軸に構造改革を継続、安定配当を維持。

統合報告書 2022

https://www.dnp.co.jp/ir/library/annual/pdf/DNP_integrated2022j.pdf
FY21中期経営計画進捗報告。「あらゆる構造改革による価値の拡大」を軸に、政策保有株式縮減・自己株式取得・安定配当の還元方針を継続。

統合報告書 2020

https://www.dnp.co.jp/ir/library/annual/pdf/DNP_integrated2020j.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書
決算説明会 FY23
日経ESG 2021/04/05
新中期経営計画骨子説明会 2026/3
日刊工業新聞 2025/1
決算説明会 FY25-2Q
新中期経営計画骨子説明会
日刊工業新聞