王子ホールディングスの直近の業績・経営課題と展望

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王子ホールディングスの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高18,493億円YoY+9%
2025/3売上総利益3,494億円YoY+7.8%
2025/3販売費及び一般管理費2,817億円YoY+12%
2025/3営業利益677億円YoY▲6.8%
2025/3経常利益686億円YoY▲20.3%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益462億円YoY▲9.1%
2025/3自己資本比率41.8%YoY▲1.9pt
2025/3有利子負債合計6,814億円前年比+129,672億円
2025/3現金同等物期末残高655億円YoY+4.9%
経営トップ磯野裕之代表取締役社長執行役員
2025/3従業員数39,136前年比+814人
2025/3平均給与845万円前年比+5万円
歴史的背景1873年に渋沢栄一氏が興した抄紙会社は、1949年の過度経済力集中排除法で苫小牧1工場・資本金4億円へ縮小された。北日本製紙以下4社を順に吸収した47年の段階合併で規模を取り戻し、2024年4月のWalkiグループ買収で森林資源由来素材の多国籍メーカーへ事業構成を広げ始めた
経営課題FY24は売上高1兆8,493億円・営業利益677億円・純利益462億円・ROE4.3%。前中計(2022〜2024年度)の営業利益1,500億円目標に対し800億円以上未達となり、海外パルプ市況下落で海外事業会社の営業利益が▲582億円振れたことが国内値上げ分を相殺した
経営方針2021年6月就任の磯野裕之社長は2025年5月、長期ビジョン2035と中期経営計画2027を発表した。KPIから売上高と海外売上比率を外し、ROEとネットD/Eに切り替えた。FY27目標はROE8.0%・営業利益1,200億円・純利益800億円
主な投資中期経営計画2027の3カ年で成長投資2,700億円・維持更新2,200億円・研究開発500億円を計画し、配当性向は2025年度から50%へ引き上げ、自己株式取得1,200億円を予定する。2025年9月にはオーストリアAustroCel社の全株式取得契約を締結した

紙集中の参入障壁から森林資源由来素材への事業拡張

1949年の過度経済力集中排除法で苫小牧1工場・資本金4億円へ縮小された王子は、1996年の本州製紙合併までの47年で戦後分割を事実上巻き戻し、新聞用紙を苫小牧の世界一抄紙機で寡占的に供給する形で参入障壁を築いた。一方で国内紙需要は1997年から逓減した。FY24の連結売上は1兆8,493億円と過去最高水準だが、ROEは4.3%、営業利益は677億円、純利益は462億円にとどまり、前中計(2022〜2024年度)の営業利益1,500億円目標に対し800億円以上の未達となった。海外パルプ市況下落で海外事業会社の営業利益が▲582億円振れ、国内の値上げ分を相殺した。

2021年6月就任の磯野裕之社長は2025年5月、長期ビジョン2035と中期経営計画2027(中計2027)を発表した。KPIから売上高と海外売上比率を外し、ROEとネットD/Eに切り替えた。FY27目標はROE 8.0%・連結営業利益1,200億円・親会社株主に帰属する当期純利益800億円で、2035年にはROE 10%を狙う。ネットD/Eレシオは前中計の0.7倍維持から1.0倍以内へ拡大して借入を活用する。基本方針は資本効率向上・ポートフォリオ転換・サステナビリティ促進の3本柱である。

中計2027の3カ年では成長投資2,700億円・維持更新2,200億円・研究開発500億円を計画し、ポートフォリオ転換の資金はサステナブルパッケージと木質バイオマスに割り振った。前者は2022年Adampakグループ、2024年4月Walkiグループの取得で欧州PPWR規制に対応する事業基盤を取得した。後者は米子工場で2024年12月に糖液(年3,000t)、2025年3月にエタノール(年1,000kL)のパイロットを稼働させ、王子は2030年代にこの事業で300億円以上の売上を狙う。配当性向は2025年度から50%へ引き上げ、自己株式取得1,200億円も予定する。2025年9月にはオーストリアAustroCel社の全株式取得契約を締結した。

王子の戦後76年は、新聞用紙と苫小牧の集中構造を、段階合併と海外資源垂直統合で多品種・多地域へ広げる経路だった。FY23に海外事業会社の営業利益が78億円へ▲582億円落ち、国内648億円との損益が逆転したことで、その経路は海外市況下落に耐えない弱さを露呈した。中計2027の成否は、装置産業の参入障壁を欧州の脱プラ包装と南半球のパルプで再現できるかどうかにかかる。1873年に創業者の渋沢栄一氏が始めた洋紙国産化の事業は、戦後分割の巻き戻しで規模を取り戻した段階を終え、森林資源由来素材の多国籍メーカーとして利益率を再構築する段階へ移る。磯野体制の中計2027は、この移行の最初の3年にあたる。

王子ホールディングスの業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / JGAAPFY162017/3連結 / JGAAPFY172018/3連結 / JGAAPFY182019/3連結 / JGAAPFY192020/3連結 / JGAAPFY202021/3連結 / JGAAPFY212022/3連結 / JGAAPFY222023/3連結 / JGAAPFY232024/3連結 / JGAAPFY242025/3連結 / JGAAP
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円14,336+6.4%14,399+0.4%14,859+3.2%15,510+4.4%15,076−2.8%13,590−9.9%14,702+8.2%17,066+16.1%16,963−0.6%18,493+9.0%
生活産業資材億円5,6205,7726,0206,2786,3165,9566,4047,1537,3377,616
機能材億円1,9312,0062,0382,0922,0071,7001,7152,0572,1342,214
資源環境ビジネス億円2,2432,1962,4542,7072,3972,1502,8103,6853,1113,455
印刷情報メディア億円2,7982,6892,6382,5762,5182,1052,0012,1992,3512,289
売上原価億円11,01611,05411,44211,75111,43710,31611,26213,66613,72214,999
売上総利益億円3,3203,3453,4173,7593,6393,2743,4403,4003,2413,494
販管費億円2,5832,6422,7102,6572,5782,4262,2382,5522,5152,817
営業利益YoY億円737+57.8%702−4.7%708+0.8%1,102+55.7%1,061−3.7%848−20.1%1,201+41.7%848−29.4%726−14.4%677−6.8%
生活産業資材億円18818854224409381262-1221285
機能材億円1191751861841541151531559196
資源環境ビジネス億円315191390646288167552685196305
印刷情報メディア億円2355-12-48113112178-4816886
経常利益YoY億円605+22.6%529−12.5%660+24.6%1,184+79.5%1,013−14.4%831−18.0%1,351+62.7%950−29.7%860−9.5%686−20.3%
当期純利益YoY億円127−18.2%403+216.9%362−10.1%520+43.5%582+11.9%496−14.7%875+76.3%565−35.5%508−10.0%462−9.1%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%30.133.134.434.736.737.941.540.843.741.8
有利子負債比率%32.029.227.927.024.824.924.123.822.625.9
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円1,2811,5741,2321,4061,2451,2711,4361832,029944
投資CF億円-433-402-740-666-648-916-926-1,233-1,180-1,549
財務CF億円-898-1,145-418-455-581199-1,3601,018-849610
従業員
連結従業員数33,60535,39236,14436,30936,81036,03435,60837,84538,32239,136
単体従業員数375376356345369356354352381423
平均年収(単体)万円855880876838834841859827840845

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY252024年度決算と2025年度業績予想・配当予想を提示。前年度の構造改革(Walki社買収完了、おむつ事業撤退、政策保有株式縮減)の効果を期間損益として反映する展開期。

通期決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C3861/A2Jy/z3UX/qFkS.pdf
FY24Walki社(フィンランド)100%株式取得を2024年4月完了し、環境配慮型サステナブル包装をグローバル展開。国内子供用おむつ事業から撤退決定(9月出荷終了)。政策保有株式売却を加速し売却資金を株主還元・成長投資に充当。配当を16円→24円へ増配予定。GX推進機構へ参画。

通期決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C3861/PEbr/SmRj/cFgs.pdf
FY232030年長期ビジョン目標達成に向けたVCファンド出資(UMI3号、約束金額5億円)を決定し、スタートアップ企業連携による新規事業創出を狙う。中計での成長投資の枠組みを継続強化。

通期決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C3861/PEbr/SmRj/bKIp.pdf
FY22通期業績の概要報告とサステナブル商品展開の進捗。原料・商品規格からパッケージまでサステナブル化を訴求するもこの回は構造的トピックの記述は薄い業績報告中心。

通期決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C3861/PEbr/SmRj/WOau.pdf
FY21

通期決算説明会

https://pdf.irpocket.com/C3861/PEbr/SmRj/BoCL.pdf

アニュアルレポート / 統合報告書

年度経営の振り返り報告資料
FY26

統合報告書

https://www.ojiholdings.co.jp/uploads/ir/docs/OjiGroup_IntegratedReport_2025_jp_20251204.pdf
FY25中期経営計画の海外売上高比率40%目標達成見込みを提示。森林資源を核としたサステナブルビジネスを軸に、Walki社買収など海外展開強化と価値創造ストーリーを統合的に開示。創業150周年を経た次の150年を視野に入れた長期的方向性を示す。

統合報告書

https://www.ojiholdings.co.jp/uploads/ir/docs/Oji_Integrated_Report_2024_jp_20251001.pdf
FY24創立150周年を迎え、2030年度長期ビジョン下での価値創造を整理。長期ビジョン・中期経営計画と環境問題への取り組みを軸に、ステークホルダーとの対話強化を打ち出す。

統合報告書

https://www.ojiholdings.co.jp/uploads/ir/docs/2023_all_A3_ja.pdf
FY235月発表のパーパスおよび2030年に向けた長期ビジョンの下、2022-2024年度中期経営計画を軸に新しい価値創造ストーリーを提示。グリーンイノベーションによる新たな価値創造の方向性を強調。

統合報告書

https://www.ojiholdings.co.jp/uploads/ir/docs/2022_all_A3.pdf
FY22「環境行動目標2030」制定後の体系を整理。森林資源を核とするサステナブル・ビジネスモデルの確立と、長期ビジョン・中期経営計画の連動、新会社設立を含む事業構造の方向性を統合報告書として開示。

統合報告書

https://www.ojiholdings.co.jp/uploads/ir/docs/2021_all_jp.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書
日本会社史総覧 1995/11/1
決算説明会 FY24
決算説明会 FY23
経済界 2022/11
日本経済新聞 2024/7/8
日本経済新聞