野村ホールディングスの直近の動向と展望
野村ホールディングスの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
ウェルス・マネジメントへの主軸戻しと「アドバイザリー」への転換
奥田体制は構造改革委員会の主導のもと、ホールセール部門500億円・ウェルス・マネジメント部門200億円のコスト削減を並行して進めた。2024年4月に営業部門を「ウェルス・マネジメント部門」に改称し、マーチャント・バンキング部門を新設、さらにアセット・マネジメント部門と統合してインベストメント・マネジメント部門を設立する組織再編を実施した。連結子会社1,537社、持分法適用14社の大所帯を抱えた上で、営業現場ではパートナー一人当たりの担当顧客数を絞り込み、富裕層へのアドバイザリー深化に転じる方針へ切り替えた。奥田は「社会課題の解決を通じた持続的成長の実現」(現代ビジネス 2022/4)を経営の北極星として掲げ、リテール戦略を量から質へ振り替える転機とした。
新体制の下、ウェルス・マネジメント部門のストック資産月末平均は2024年3月期第1四半期の19.5兆円から第2四半期の20.3兆円へ伸び、2025年3月期のストック資産純増は約1兆4,000億円と、KPI目標の8,000億円を超過した。LINE証券事業承継に伴う口座引き継ぎもリテール基盤の拡大に寄与し、2025年3月期の連結収益合計は1兆8,925億円、純利益3,407億円と過去最高水準に達している。1925年の創業以来、業界最大手であり続けた野村が、リテール基盤を再評価して収益の柱を組み替えつつある姿を、この一連の数字が示す。長年の海外志向から、いったん国内の強みを磨き直す段階に入った野村にとって、量から質へのリテール戦略転換が次の業界首位の根拠となるかが、当面の試金石である。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY23
- 決算説明会 FY23-2Q
- 決算説明会 FY24-2Q
- 決算説明会 FY24
- 現代ビジネス 2022/4
「金利のある世界」── マッコーリー買収とバンキング部門新設
2025年4月、野村はマッコーリー・グループのアセットマネジメント事業の買収を正式発表し、CET1比率1.5%弱の低下を許容してパブリック運用のフランチャイズ獲得に踏み切った。同時にバンキング部門を新設し、日銀の政策金利引き上げを受けた「金利のある世界」の到来を見据えた業態拡張である。北村巧CFOは「ホールセール部門の業績が上がっており、短期的にホールセール部門に資本配分することも考えています」(決算説明会 FY24-2Q)と語り、買収・自社株取得・部門資本配分のバランスを取りつつ、総還元性向50%以上方針の下で600億円規模の自己株式取得を決定した。資本政策の柔軟性を優先する姿勢で、株主還元と買収投資を両立する局面に入った。
海外発のリスクイベントも、なお続く。2024年2月には英国子会社で現地ブローカーの決済不履行による貸倒引当約140億円を計上し、2021年3月期のアルケゴス事案に続いて海外信用リスクが再び顕在化した。北村CFOは「業者によるフェイルが清算によって解消されるべき事態になることは、かなりレアケース」(決算説明会 FY23)と事案の異常性を強調したが、海外ホールセールがリスクの源泉となりやすい構造そのものは、リーマン承継以来変わっていない。奥田は「世界にフランチャイズを有するグローバル企業」(現代ビジネス 2022/4)を到達点に据えるが、グローバル投資銀行への積年の野心と国内リテール基盤との折り合いは、創業から100年を経てなお未解決の命題として残る。
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