日本製鋼所の直近の動向と展望

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日本製鋼所の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

素形材事業が産業機械を上回った逆転劇

2021年6月に松尾敏夫が社長に就任した。2022年3月期のセグメント別で素形材・エンジニアリング事業はまだ8億円の営業赤字だったが、松尾体制下の2024年3月期、同事業は売上高419億円・営業利益32億円で黒字転換し、2025年3月期には売上高471億円・営業利益86億円で営業利益率18.5%に達し、産業機械事業の営業利益率8.8%を上回る水準にまで引き上がった。30年にわたり赤字源だった事業が、組織を切り出したわずか4年後に、本体の産業機械事業を収益率で追い越した格好である。電力・原子力製品では高効率火力向けGTCCロータや原子力二次系ロータの取り換え需要、欧州の小型モジュール炉(SMR)向けの需要も堅調に推移し、従来の発電需要に加えてエネルギー転換の新需要も取り込み始めている。

鋳鍛鋼素材という祖業の技術蓄積が、カーボンニュートラル時代の発電機器需要と結びついたかたちである。2025年5月には、切り出していた日本製鋼所M&E株式会社を吸収合併する方針を決議した。高収益化した素形材事業を本体に取り込み、組織の一体運営へと回帰する判断であり、2020年の分社からわずか5年での再統合となる。2024年4月に公表した中期経営計画JGP2028は、この高収益体質を前提に設計されている。連結営業利益は2025年3月期に228億円と過去最高を更新し、2022年3月期の132億円からわずか2年で約1.7倍に跳ね上がり、1980年代から続いてきた長年の構造赤字体質と慢性的な室蘭問題をついに完全な形で脱した歴史的な瞬間となり、日本製鋼所の事業構造を一新する節目の期となったのである。

参考文献
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY25

防衛関連機器の急増と樹脂機械の踊り場

もう一つの成長ドライバーが防衛関連機器である。2024年3月期の防衛関連機器受注は705億円、2025年3月期は1,158億円で、わずか2年間で3倍近くにまで増えた。室蘭(素材・火砲)、広島(最終組立・装輪装甲車AMV)、横浜(ミサイル発射筒)、名機(増産対応)の4拠点で相互補完する適地生産体制を構築中で、日本政府の防衛費増額方針を需要面でそのまま取り込む形となっている。戦前からの国産兵器メーカーとしての設備と技術蓄積が、再軍備の政策転換を受けて新たな成長源として再評価された形であり、戦後長らく縮小均衡を続けてきた防衛事業が、2020年代に入って本格的な事業拡大局面に入ったことを示しており、鋳鍛鋼素材と最終組立を自社完結できる体制が競争上の強みとなっている。

一方、樹脂製造・加工機械は踊り場を迎えた。2025年3月期の受注は514億円で前期比507億円減となり、EV市場の減速と米国の関税政策による設備投資手控えが直接的に響いた。それでも広島製作所では2024年12月に第10組立工場が稼働を開始し、第3機械工場(2026年3月期末竣工予定)と第4機械工場(2028年3月期上期竣工予定)の建設を同時並行で進めており、中長期の生産能力拡大投資は手を緩めていない。インドのハリヤナ州では現地法人を増員し、2024年12月にはパートナー企業UTT社と共同で樹脂機械アフターサービス工場を設置した。Make in India政策下で拡大するポリオレフィン・高機能樹脂需要の取り込みが、次の成長のテーマとして設定されており、長期視点での拠点整備を着々と進めている局面にある。

参考文献
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY25

参考文献・出所

有価証券報告書
決算説明会 FY25
会社銀行八十年史 1955
日本製鋼所社史資料 下巻 1968
日本製鋼所技報 2020/11
決算説明会 FY24