野村総合研究所の直近の動向と展望

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野村総合研究所の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

柳澤体制の発足と高採算化

2024年6月、此本臣吾から柳澤花芽へ社長が交代した。中計2025の途中での交代で、戦略の連続性は保たれている。FY24本決算の代表者表記が「代表取締役会長兼社長 此本臣吾」から「代表取締役 此本臣吾」に変わり、役職名から「会長兼社長」が外れた段階で、体制移行が市場に予告されていた(決算説明会 FY24)。経営トップの交代を中計期の途中で行いつつも、中計の枠組みそのものは引き継ぐ形をとったことで、戦略転換というより担当者交代に近い位置づけで移行が進んだ。柳澤は金融ソリューション部門で長年キャリアを積んだ社内出身の社長で、金融IT運用を収益の柱とするNRIの現行構造を熟知した立場にあった。

新体制下のFY25-1Q(2024年4〜6月)は売上収益1,881億円(前年同期比+6.5%)、営業利益326億円(同+20.8%)、営業利益率17.4%と発進した。前年同期の15.3%から2.1ポイント改善している。会社側は「国内事業の案件活況と運用サービス増加により収益性が向上した」(決算説明会 FY25-1Q)と説明する。FY25-2Qも営業利益率17.4%を維持し、上限300億円の新たな自己株式取得枠の8割を上期で使い切るなど、株主還元も継続している。売上の伸びは1桁前半にとどめつつ営業利益を2桁で伸ばし、余剰資金を自社株買いに回すやり方は、此本期の後半から柳澤期の初動まで連続的に踏襲されている。新体制下の初動は、規模追求よりも採算改善に軸足を置いた数字となった。

参考文献
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY24-1Q
  • 決算説明会 FY25-1Q
  • 決算説明会 FY25-2Q

国内偏重の深まりと、3極体制の遅れ

直近の業績を支えているのは国内のDX投資である。半面、海外売上比率はFY24-1Q時点で16.6%、FY25-1Qで16.0%と低下傾向にあり、中計が掲げた日豪に北米を加える3極体制の実装は遅れている。豪州買収子会社では条件付対価の公正価値変動費用が四半期利益を圧迫した期もあった(決算説明会 FY24-1Q)。北米展開も具体的なM&A案件として目に見える形には至っていない。国内金融機関のDX案件が好調なうちは、海外拠点の立ち上げが遅れても連結全体の数字は悪化しにくく、裏を返せば国内の追い風が海外投資の時間的な猶予を作り出してしまっている面もある。国内で伸びる追い風と、海外で踏み込みきれない停滞が同時進行する構図が続いている。

国内DX需要の活況がいつまで続くか、その間に海外の成長エンジンを再起動できるか、そして金融ITに偏った収益構造をどこまで非金融・グローバルに広げられるかが、柳澤体制の主要論点となっている。資本効率と高採算は維持される一方、成長の地理的ポートフォリオの広がりは依然として積み残しの論点に位置している。1988年の合併以来、NRIの強さは「リサーチ+IT」を国内金融という濃い顧客基盤に深く差し込むことで生まれてきた経緯があり、その同じ構造が海外展開の遅さとしても作用している。柳澤体制ではこの構造を壊すのか磨き続けるのかという選択が問われている。

参考文献
  • 決算説明会 FY24
  • 決算説明会 FY24-1Q
  • 決算説明会 FY25-1Q
  • 決算説明会 FY25-2Q

参考文献・出所

有価証券報告書
決算説明会 FY24
決算説明会 FY25-1Q
ダイヤモンド・オンライン 2021/7/22
日経ESG 2023/6/13
決算説明会 FY24-1Q
決算説明会 FY25-2Q