トクヤマの直近の業績・経営課題と展望

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トクヤマの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望

2025/3売上高3,431億円YoY+0.3%
2025/3売上総利益1,081億円YoY+8.7%
2025/3販売費及び一般管理費782億円YoY+5.8%
2025/3営業利益300億円YoY+16.9%
2025/3経常利益296億円YoY+12.5%
2025/3親会社株主に帰属する当期純利益234億円YoY+31.8%
2025/3自己資本比率54.9%YoY+0.4pt
2025/3有利子負債合計661億円前年比▲14億円
2025/3現金同等物期末残高749億円YoY+56.4%
経営トップ横田浩代表取締役社長執行役員
2025/3従業員数5,782前年比+48人
2025/3平均給与732万円前年比+49万円

なぜ看板を組み替える癖が太陽電池の賭けを止められなかったのか(筆者所感)

1918年2月、岩井勝次郎氏が輸入アルカリの国産化を旗印に、山口県徳山町で日本曹達工業を設立した。ソーダ灰は板ガラス・石鹸・紡織の土台で、その輸入依存は国家的弱点とされていた。しかし発足直後から海外勢のダンピングで業績不振が続き、1932年頃にソーダ灰から事実上撤退して苛性ソーダへ切り替えた。創業時の大義名分を10年あまりで取り下げ、同じ製塩設備を別製品に振り向けて延命した。装置を残して看板だけ組み替える型が、この時点で刻まれた。

こうして始まった組み替えの癖は、副生物連鎖という独特の多角化を生んだ。1938年に副生炭酸石灰の処分先として始めたセメントは、戦後の高度成長で1工場として国内有数の規模へ膨らんだ。1952年に電解法苛性ソーダで塩素併産体制を整え、1964年の徳山新南陽石油化学コンビナート発足で、塩素起点の塩化ビニールや1970年のポリプロピレンへ広げた。3本柱は徳山構内のパイプラインに沿って組み上がった。1973年と1979年の石油危機が「資源消費型からの脱却」を課題に立て、1982年プラスチックレンズ材料、1984年多結晶シリコンと高付加価値品を連打し、1988年からの5カ年計画で電子・歯科・医療の種を仕込んだ。

ところが、組み替えの癖は副生物連鎖の効かない場所で初めて裏目に出た。2009年設立のTokuyama Malaysia Sdn. Bhd.は、徳山で培った精製技術を太陽電池グレードの大量供給に振り向ける海外単独工場であった。建設遅延と試運転トラブルでフル稼働が遠のくあいだに中国勢の供給過剰で市況が急落し、2013年3月期の純損失379億円から3期連続の赤字、2016年3月期は純損失1006億円・特別損失1257億円に達した。2014年6月に幸後社長から横田社長へ交代し、2017年5月に韓国OCIへ全株式を譲渡してマレーシアの10年を清算した。構内で副産物を次の原料に流す連鎖の論理は、装置だけ海外に置いた汎用品では再現できなかった。

撤退後に主役へせり上がったのは、1988年計画で蒔かれて社内に温存されていた歯科のオムニクロマと、先端半導体向けに用途を絞った多結晶シリコンだった。2025年3月期の売上高は3430億円・営業利益299億円まで戻り、同じ組み替えの癖が今度は再建を支えた。2020年の台湾FTAC、2024年のベトナム新工場は、マレーシア型の海外集中生産を否定し、顧客の半導体・電子部品工場に隣接して供給する立地戦略である。装置と立地と市場の組み合わせをニッチ用途別に組み直す試行は、ソーダ灰を10年で取り下げた創業期から続く延長線上にある。

トクヤマの業績推移直近10ヵ年・有価証券報告書をもとに作成(XBRLよりデータ取得)

項目単位FY152016/3連結 / JGAAPFY162017/3連結 / JGAAPFY172018/3連結 / JGAAPFY182019/3連結 / JGAAPFY192020/3連結 / JGAAPFY202021/3連結 / JGAAPFY212022/3連結 / JGAAPFY222023/3連結 / JGAAPFY232024/3連結 / JGAAPFY242025/3連結 / JGAAP
損益計算書 (PL)
売上高YoY億円3,071+1.7%2,991−2.6%3,081+3.0%3,247+5.4%3,161−2.6%3,024−4.3%2,938−2.8%3,518+19.7%3,420−2.8%3,431+0.3%
セメント億円853829871915866890497578663643
ライフサイエンス億円274334375413419
化成品億円8708249259759288061,0111,1591,1541,149
環境事業億円91991367049
電子先端材料億円909773862
売上原価億円2,2062,0252,0772,2672,1742,0731,9842,6102,4252,349
売上総利益億円8659661,0039809879529549089951,081
販管費億円634581591627644642709764739782
営業利益YoY億円231+18.1%385+67.0%413+7.1%353−14.6%343−2.8%309−9.8%245−20.6%143−41.6%256+78.8%300+16.9%
セメント億円587646323845-19-376775
ライフサイエンス億円3560748678
化成品億円8913016216915413614269115108
環境事業億円-4-50-11
電子先端材料億円703396
経常利益YoY億円177+37.2%340+91.8%362+6.5%334−7.7%328−1.7%308−6.2%259−16.0%148−42.8%263+77.9%296+12.5%
当期純利益YoY億円-1,006−53.9%522+151.9%197−62.2%343+74.0%199−41.8%245+23.1%280+14.1%94−66.6%178+89.6%234+31.8%
貸借対照表 (BS)
自己資本比率%12.829.934.740.244.051.351.848.054.554.9
有利子負債比率%45.438.333.730.025.421.915.825.314.813.9
キャッシュフロー (CF)
営業CF億円301200619385524433260-118558524
投資CF億円134-101-127-162-205-193-338-338-304-235
財務CF億円-377-119-1,012-211-183-22551302-465-11
従業員
連結従業員数5,7595,4064,8895,4715,6795,4765,6655,9095,7345,782
単体従業員数1,8881,8691,9201,9242,0632,2562,3152,4592,5202,593
平均年収(単体)万円603604652714724736722704683732

IR資料直近5ヵ年

決算説明会資料

年度経営の振り返り報告資料
FY25中計2025最終年度。サン・トックスの統合(交換益)と政策保有株式縮減による売却益を計上、上海徳山塑料の事業廃止・撤退を決定。2期連続20円増配(120円)でDOE3%目標を継続、医薬品材料事業の買収を検討中、次期中計を2026年2月発表予定

決算説明会

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/2025mar_setsumeikai.pdf
FY24中計2025の3年目進捗。期末配当を10円増配し45円に、年間配当も70円予想から80円に引き上げ。株主還元方針を改定しDOE3%目標と配当性向30%以上を導入、政策保有株式の縮減方針を継続

決算説明会

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/2024mar_setsumeikai.pdf
FY23中計2025の2年目進捗。エクセルシャノン株式をパナソニックHDへ譲渡し持分法適用関連会社化(出資比率51→34%)。中計期間累計営業利益目標を1,620→1,790億円に上方修正

決算説明会

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/2023mar_setsumeikai.pdf
FY22中計2025初年度の進捗報告。事業ポートフォリオ転換と構造改革を本格始動、3つの注力領域への経営資源集中を継続。特記すべき新規構造的トピックは限定的

決算説明会

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/2022mar_setsumeikai.pdf
FY21

決算説明会

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/2021mar_setsumeikai.pdf

アニュアルレポート / 統合報告書

年度経営の振り返り報告資料
FY26

トクヤマレポート(統合報告書)

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/AR2025.pdf
FY25中計2025の最終年に向けた進捗総括。電子・健康・環境の3成長領域へリソース集中、買収事業の早期業績寄与を目指す。FTAC(台湾合弁IPA)等の新工場が稼働、政策保有株式縮減・PBR意識した自己株式取得を継続、DOE3%・配当性向30%を維持

トクヤマレポート(統合報告書)

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/AR2024.pdf
FY24中計2025の3年目進捗。徳山化工(浙江)の100%子会社化や台湾FTAC合弁設立など電子工業用IPAのグローバル供給網を構築、トクヤママレーシア案件で減損処理。事業ポートフォリオ転換を財務面でも下支え

トクヤマレポート(統合報告書)

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/AR2023.pdf
FY23中計2025の2年目進捗。事業ポートフォリオ転換による構造改革を本格化、周南コンビナート脱炭素推進協議会を設立、ニュービジネスセンター新設で次世代エネルギー事業化を加速。エネルギー多消費型収益構造の抜本的見直しを表明

TOKUYAMA REPORT(統合報告書)

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/AR2022.pdf
FY22中計2025(2021〜2025年度)の発表年。新たな存在意義を策定、エネルギー多消費型事業からの構造転換を打ち出す。岩谷産業との合弁山口リキッドハイドロジェンや廃石膏ボード合弁などの事業基盤に加え、デンタル領域を含む価値創造型事業への多角化を推進

TOKUYAMA REPORT(統合報告書)

https://www.tokuyama.co.jp/ir/pdf/AR2021.pdf

参考文献・出所

有価証券報告書
日本会社史総覧 1995/11/1
決算説明会 FY23
決算説明会 FY23-2Q
決算説明会 FY24
決算説明会 FY25-2Q
決算説明会 FY25-3Q
日本経済新聞 2021/12/20
化学工業日報 2021/03/30
日本経済新聞
化学工業日報