トクヤマの直近の動向と展望
トクヤマの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
半導体先端品への集中 ── 台湾FTACとベトナム新工場
再建後の電子先端材料セグメントは、汎用品ではなく先端半導体向けに用途を絞り直す戦略を取っている。2020年10月、台湾に電子工業用高純度IPAの製造販売会社・台塑德山精密化學股份有限公司(FTAC)を設立し、2022年8月には韓国にもSTAC Co., Ltd.を設立した。「6nm以下の先端品に向けて大手デバイスメーカーで採用が進んでいる」(決算説明会 FY23)という認識のもと、地産地消の供給体制を主要顧客の隣で組む構成である。マレーシア撤退後の海外拠点は、用途と顧客を絞り込んだ隣接供給型へ舵を切っている。汎用太陽電池グレードで大型装置を海外に据える2009年型の発想から、特定顧客の工場に隣接して供給する2020年型の発想へ、同じ「海外展開」でも構造がまったく異なる。
多結晶シリコンも、レガシー向けではなく先端ウエハー向けに集中する。「2024年度の販売数量は対2023年度比で20%強の増量を見込んでいる。大手ウエハーメーカーの在庫調整はレガシー向けが中心となっており、当社の多結晶シリコンの多くは先端部分に使用されているため、在庫調整がある中でも引き続き消費される」(決算説明会 FY25-3Q)。2024年8月にはベトナムに半導体用多結晶シリコンの製造販売子会社TOKUYAMA VIETNAM CO., LTD.を設立し、マレーシアで一度否定した海外大型生産を、用途と顧客を絞った形で取りに行っている。先端半導体の需要は、生成AIとデータセンター投資を背景に数量・単価の両面で堅調に推移しており、同社の多結晶シリコンは用途特化の付加価値型として数量増と利益率の改善が同時に進んでいる。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY23
- 決算説明会 FY23-2Q
- 決算説明会 FY24
- 決算説明会 FY25-2Q
- 決算説明会 FY25-3Q
- 日本経済新聞 2021/12/20
- 化学工業日報 2021/3/30
歯科器材オムニクロマと鹿島工場MD-8棟
ライフサイエンス事業の成長を引っ張っているのは歯科器材オムニクロマである。米国のシェアは2Q決算時点で1%から6%へ拡大し、欧州・南米・中東・アジアへも拡販が進む(決算説明会 FY23-2Q)。「歯科材料は2024年度下期以降伸びていく前提で考えているが、現時点でフル販売であり、需要に追い付いていない。2024年度上期は売るものがない状況」(決算説明会 FY24)と需給逼迫を社長自身が認める状況が続いた。化学メーカーの事業説明会で供給制約が主題になる場面は珍しく、装置投資で解決する論点と、市場の広げ方の論点が同時に俎上に載る。歯科器材は少量高付加価値の典型で、装置産業としての巨大装置ビジネスの対極にある事業である。
供給制約を解くのが鹿島工場のMD-8棟で、当初2024年10月の本格稼働を目指していたが、機器搬入遅延で2025年2月に後ろ倒しされた(決算説明会 FY25-2Q)。1978年にトーワ技研として設立した歯科器材子会社が、約半世紀を経てトクヤマ全体の再建ストーリーの一翼を担う構図である。創業期の副生石灰がセメントを呼んだ構図と対照的に、ここでは小さく種を蒔いた子会社が親会社を支える。稼働時期の後ろ倒しは供給制約の解消を遅らせる要因だが、同時に歯科材料の需要が工事スケジュールを上回る速度で伸びている証拠でもある。装置の遅延と市場の拡大が同時に進む状況は、再建期の同社にとって贅沢な悩みでもあった。
- 有価証券報告書
- 決算説明会 FY23
- 決算説明会 FY23-2Q
- 決算説明会 FY24
- 決算説明会 FY25-2Q
- 決算説明会 FY25-3Q
- 日本経済新聞 2021/12/20
- 化学工業日報 2021/3/30
中計2025とポートフォリオ転換の到達点
中期経営計画2025は売上高4000億円・営業利益450億円を最終年度(2025年度)の目標に置く。「基本的には達成できるという手ごたえがある。特に化成品、セメント、ライフサイエンスは計画どおりに進捗する見込み。あとは電子先端材料がどこまで仕上がるかがポイント」(決算説明会 FY25-2Q)と社長は述べた。実績では、2025年3月期売上高3430億円・営業利益299億円・純利益233億円まで戻し、マレーシア損失計上前の収益水準を回復している。売上規模はピーク時には届かないものの、事業構成は大きく入れ替わり、かつてのコモディティ中心のポートフォリオとはまったく違う利益の出方に変わった。電子先端材料とライフサイエンスが収益の中心にせり上がり、装置産業の看板は裏方へ回っている。
横田浩は再建期のトップとして「自社技術にこだわるあまりアライアンスへの積極性が不足していた。オープンイノベーション&アライアンスをキーワードに変革する」(日本経済新聞 2021/12/20)と語った。同時期には「電子・健康・環境の3分野を成長ドライバーに、ポートフォリオの転換を図る」(化学工業日報 2021/03/30)とも述べ、成長事業の連結売上高比率を2026年3月期に50%超へ引き上げる目標を掲げている。2025年4月の決算説明会では経営企画ラインが杉村英男専務から井上智弘常務へ交代し、米国関税の間接影響など新たな外部リスクを警戒する運営に入っている。1918年にアルカリ国産化のため生まれた会社は、半導体先端品と歯科先端材料を主軸とする化学メーカーへ組み替わっている。徳山の1工場集中から分散型の隣接供給へと、装置のあり方も組み替わっている。
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- 決算説明会 FY25-3Q
- 日本経済新聞 2021/12/20
- 化学工業日報 2021/3/30